akのもろもろの話

大人の漫画読み

初めましてのご挨拶にかえて 平野耕太「ドリフターズ」が面白いって話

はじめまして。

わたくしakと申します。

小さい時から漫画が好きで、いい大人になった今でも相変わらず漫画ばかり読んでおります。

そこで、ブログで漫画の感想を書く事にいたしました。

好きこそ物の上手なれ。

あたしの漫画愛は成就するかしら。

  

さて、最近第6巻が発売になった平野耕太の「ドリフターズ」が面白いです。


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 (平野耕太「ドリフターズ」➅巻)

まずはザックリあらすじから・・・ 

この物語は関ヶ原の戦いのクライマックスとも言うべき「島津の捨てがまり」から始まる。

この壮絶な撤退戦で殿を担った島津豊久は、なんでか死を目前にして異世界に飛ばされてしまうのである。

そこは、ドラゴンが飛んでたりエルフが住んでいるまさにファンタジー、中世ヨーロッパ的異世界であった。

もードラゴンとか魔法とかのファンタジー漫画は食傷気味、と思った人はまだ待って。

豊久はそこで、同じように飛ばされて来ていた織田信長や那須与一と出会う。

彼らは、この世界では「ドリフターズ(漂流者)」と呼ばれているのだ。

そうこの漫画は、歴史上の有名人がファンタジー世界に飛ばされて来て活躍する。

ありきたりっちゃ、ありきたりな、今さら感のあるお話ではある。

いやいや、そうじゃなくて。

これから面白くなる所だから。

さすがに歴史上に名を残した方々、強スペックである。

別の世界に来ても侍の本能は忘れてない。

意気投合した3人は、成り行きからエルフの村を助け解放する事に成功し、次は豊久を頭目にして国盗りを始めようとし出すのだ。

とんだ国盗り物語である。

でも、豊久・信長・与一の3人の連携がいい。

気があって楽しそうだ。

 

しかしながら、主人公が島津豊久っていうのはちょっとマイナーだろう。

この人は典型的な薩摩人として描かれている。 

要するに薩摩隼人として死ぬ事しか頭にない。

そのうえ首を取る事に執着しすぎて「デター妖怪首おいてけ!」などと妖怪変化のように揶揄されてしまうのだ。

そして信長は謀略家、与一は美少年である。

 

そもそも豊久たちが「漂流者(ドリフターズ)」として、この異世界に来たのはなぜか。

そこには謎の人物「紫」の明確な意思があって、「漂流者(ドリフターズ)」と同様に飛ばされてきた「廃棄物(エンズ)」と対戦するために召還されてきたのである。

ちなみに「廃棄物(エンズ)」の皆さんは、黒王(どう見てもイエスキリスト)を筆頭に、ジャンヌダルクや土方歳三や怪僧ラスプーチンや皇女アナスタシアや明智光秀などがいる。

彼らは「漂流者(ドリフターズ)」とは違い、超自然的能力を操り強力な怨念を持っている。

一方、「漂流者(ドリフターズ)」側は、カルタゴの英雄ハンニバルとかローマ帝国の名将軍スキピオ、果ては日本海軍のエースパイロット菅野直とか続々登場してくるのだ。

これだけ多数の歴史上の有名人を投入してきても、散漫にならないのが作者の腕の見せ所。

それぞれのキャラクターの、実際の歴史上の細かいエピソードが描かれて思わず笑ってしまうのである。

 

私は特に織田信長が好きだなぁ。

信さんは現実的で合理主義だから人は利益と恫喝で動かせると思ってたんだけど、豊久に会ってから人には心があるんだ、自分はそれがわかってなかったって気付くんだよね。

そしてその苛烈な所行で敵を作り謀反を起こされた過去を思い返して「自分はどうやら王の器ではないらしい。豊久こそ王の器だ。だが馬鹿なので補佐がいる。俺だ。」と参謀役を受け持っているのだ。

頭脳明晰な信長なら参謀だって汚れ役だって難なくこなせるだろうけど、第六天魔王が陰に回って悪巧みしてる姿に思わず笑ってしまう。

映画「明日に向かって撃て!」で有名なワイルドバンチ強盗団のブッチとサンダンスが、去り際にくれたリボルバー銃とガトリング砲を見て、火縄銃しか知らない信長はこれは合戦そのものを一変させる物だとすぐに気付くのだ。

また美しい種族と言われるエルフたちをこき使って、黒色火薬の材料となる硝石を作ったりもする。

草土とウンコと兵隊の死体(首は埋葬して供養)を混ぜ硝石丘を作る他にも、戦術としてウンコを利用し、エルフの村の攻防では矢の先にウンコを塗って(エルフたちからはどんだけウンコが好きなんだよ~と嫌がられる。)破傷風を発症させたりするのだ。

この攻防戦や城攻めの面白さは秀逸である。

 

けど豊久は王の器なんてものは無自覚で、薩摩隼人としての信念しかない。

自分が死ぬ事には全く躊躇しない為、信長たちをハラハラさせる。

考え方も短絡的で教養もないので信長から「おまえは残念な子やな~」などと言われてしまう。

この薩摩人独特の死生感を持つ豊久の潔い生き方は、次第に周囲の者を魅了して行くのだ。

人間あまり考えない方がいいのかもしれないな。

 

そうして次々領土を広げる中、「漂流者(ドリフターズ)」を監視し集めようとする団体「十月機関」なんてものが登場し、その思惑が見え隠れしたりする。

だが一筋縄ではいかない彼らは言いなりになんかならないのだ。

まあ、おとなしく言うことを聞いてくれそうには見えないが・・・

 

人類を滅亡させようとする「廃棄物(エンズ)」との決戦を前にして、豊久は自分がこの世界に召還された理由を察する。

それは決戦場所の地形が関ヶ原にそっくりだと気付いて、運命がもう一度「捨てがまり」をやれと命じていると直感するのだ。

この薩摩人には敵味方問わず驚愕させられるのである。

 

「廃棄物(エンズ)」である土方歳三も、新撰組ゆえ当然薩摩嫌いである。

薩奸死すべし!

島津が憎い。

実際、幕軍にいた人たちは長州はまだ許せても薩摩だけはぜってー許せねーって思ってた。

だから西南戦争が起こった時九州まで意趣返しに行ったのだ。

ドリフターズで描かれている土方は、普段は無口だが豊久の前では薩摩憎しの感情が噴出してしまう。

でも土方って徹底的にやったお人ぞ。

幕府がなくなって新撰組が消滅したって、近藤先生が流山で処刑されたって、総司が病気で死んだってやった。

宇都宮、会津、最後は蝦夷まで転戦し徹底的にやったのだ。

北海道は寒いよ~。

歴史は新撰組を生んだけど、新撰組が歴史的に果たした役割はない、とか言う人がいる。

でも歴史にどんな寄与をしたかなんて問題じゃない。

歴史は人の生きざまと死にざまでできてるんだから、人の情熱とゆう物がすばらしいのだ。

そんな、思い切りよく爽快に生きたと思ってたのに、なんでか土方「廃棄物(エンズ)」!

ズタボロになった豊久を殺そうとした土方に「そいつを斬ったらもう本物の武士はいなくなって、戦う相手がいなくなるよ」という総司の声が聞こえてくる。

戦いたくてこんなとこまで流れて来たのにそれでいいのか?と。

 

その時、豊久を攻撃しようとした「廃棄物(エンズ)」軍を、手をだすんじゃねえ!とばかり滅する土方。

マジで?味方なのに~。

そっかー。

歳さんの未練は、人を憎んだり呪ったりじゃなく、もっと戦いたかったんだね。

オッケー。もう戦って、戦って、豊久と気が済むまで戦って、この悲しみの大地に燃えつきて欲しい。

あれ、そういう話?