akのもろもろの話

いつも漫画ばかり読んでた「漫画とかの覚え書帖」

私の少年 高野ひと深 せつなすぎて言葉にできない!

皆さま、ごきげんよう

高野ひと深の「私の少年」は現在「週間ヤングマガジン」で連載中です。

今回は「私の少年」がせつなすぎて泣けちゃう、という話。

 

私の少年・・・タイトルがいいよな。


f:id:akirainhope:20181225231257j:image

既刊5巻

 

あらすじ

多和田聡子は今年で30歳。

独身で一人暮らし、職業はスポーツメーカーの営業職だ。

聡子は仕事もできるし同僚からの信頼も厚いきちんとしてる女性だ。

ベタベタ甘えたり誰かに依存したりしない、いつも冷静でドライなんである。

物事や人に対してもあまり執着心を持たないから、言動も自然とサバサバしたものになってしまう。

 

聡子の上司の椎川は、何かにつけて冗談を言ったりからかったりして、聡子を困らせたり怒らせたりして楽しむ。

二人は大学時代つき合ってたんである。

別れを切り出したのは向こうからだが、聡子は離れる人を追うような事はしない。

もう未練などないと思ってるから、飲みに行こうなんて誘われてもさっさと帰宅してしまう。

人と飲みに行ったりするよりも帰り道缶ビールを買って、夜の公園で一人グイッと開けたりする方が性に合うのだった。

 

そんな夜に、聡子は公園で一人サッカーボールを蹴る早見真修と出会う。

真修は12歳だ。

大学時代はフットサルサークルに所属していた聡子は酔った勢いもあって、相手も子供だし、見てなこれはこうやるのてな感じでボールの蹴り方を実演して見せる。

「わ〜プロの人ですか〜」と素直に感心してるその子が、近くで見たらすごい美少女だったんで驚くと「オレ男です」と言うんで二度ビックリしてしまうのだ。

話してみるととてもいい子なんだけど、こんな子供が夜の公園で一人でサッカーしてるのも妙だ。

真修の事がなんだか気にかかる聡子は、成り行きもあってサッカーを教えてやる事にする。

 

 

どうやら真修には母親はいないらしく父親は仕事が多忙で不在がちなようだった。

弟の面倒を見ながらサッカークラブに通っていて、弟が塾に行っている時間に公園で練習をしてるのだと言う。

なにか訳ありげなんだが、聡子は余計な詮索はしない。

 

 

サッカーであれ野球であれ、こういうスポーツ少年チームには親のサポートが必要不可欠だ。

ところが遠征で送迎が必要でも父親には頼めない真修を、見るに見かねて聡子はレンタカーを借りて送迎してやったりする。

そこまで首を突っ込む必要があるのかと思いながらも、なんだかほっておけなかったのだ。

しかし聡子は、年下の子にレギュラーを取られベンチで試合にも出られない真修に、何て声をかけてやればいいのかわからなくなってしまう。

「試合に出られなくても応援を頑張ります」とけなげな事を言う真修に、気軽に頑張ってなんて言えないって思ったのだ。

遠くからそっと真修を探してみると、レギュラーになった年下の子を声を枯らして一生懸命に応援している姿が目に入る。

その子供らしい純粋さに何か感じる物があった聡子は、試合後「真修、応援よく頑張ったね」と素直に言ってやる事ができるのだ。真修の頭をわしゃわしゃ撫ぜながら。

 

 

行きの車内では聡子がかける曲を真修は知らなくて、なんだか噛み合わなかった二人。

だけど帰りに岡本真夜のtomorrowが流れると、助手席の真修が合唱大会で歌ったから知ってると言いだして歌い出すのだ。

聡子も嬉しそうに笑う。

それはなんだかとても幸せで清らかな光景なんである。

 


f:id:akirainhope:20181225231350j:image

【引用元「私の少年」】

 

 

 

小片奈緒ちゃんは真修と同じクラスの女子で、時々サッカークラブの手伝いをしている。

真修が一緒にいたお姉さんは誰なんだろうと気になってたから聞いてみる。女の子ってよく見てるのだ。

「お姉さんじゃないけど、やさしい人なんだ」と真修は答える。

奈緒ちゃんは一緒にやるはずの女子がサボって、真修が一人でうさぎ小屋当番をやってるのに気づいて手伝おうとする。

真修は全部のうさぎに名前をつけていて教えてくれる。

掃除を手伝いながら真修に「小片さんやさしいね」と言われ、「ええ?そんなの普通だよ」と軽く流してしまう。

 

普通って何だろう。

奈緒ちゃんは優しくてしっかり者で感受性が強い。

小6ともなればクラスには色々な子供がおる。

男子の目を気にしてお洒落をしてくるおマセな女子もおる。

ねぇねぇ聞いてよ〜、と真修が座っている席の机にランドセルを無造作に置いて話に夢中になる失礼な女子もいるのだ。

奈緒ちゃんは気づいて注意しようとするが上手くできない。

 

学校で友達とおしゃべりしたりふざけたり毎日繰り返される自分の普通。

そういう目に映る物だけが普通だって言うなら、目に映らない物には意味がないのだろうか。

ふと、真修が一人でうさぎ小屋を掃除しててうさぎに名前をつけていた事が頭をよぎる。

 

その日体調が良くなかった奈緒ちゃんは、給食の時間に食べた物を戻してしまうのだ。

うわ〜汚え〜とかクラスメートが遠巻きにして誰も寄って来ないのに、真修だけがやって来て奈緒ちゃんにハンカチを貸し、汚れた床を拭いてくれる。

それは真修にとっては普通の事なのだ。

 

真修は奈緒ちゃんから、助けてもらったお礼だと新しいハンカチをもらう。

 

 

 

そっかぁ、人はお礼というものをするんだな。

真修は聡子に「何か欲しい物ありますか?」と聞いてみる。

「いやー、小学生にお礼したいですって言われてもなー」と、聡子は困惑してしまう。

それで土曜日のお昼に二人で回転寿司に行くんである。

「一人じゃ入りずらいけど真修が一緒なら入れるから、それがお礼でいいよ」つって。

この回転寿司は、5皿で一回ガチャガチャチャレンジがあったり、注文した皿がシュゴーって流れて来てピって止まる子供が好きそうな店だ。

回転寿司に初めて来たという真修は、物珍しくてキョロキョロしちゃうし、お寿司をパクつく姿がとても可愛いんである。

マジ天使か〜?

二人は回転寿司を満喫するのだ。

 

帰り道、真修が聞くんである。

お姉さんも「普通だから」なのかって。

人に優しくするのは普通だから。

「だからサッカー教えてくれたり、車で送ってくれたり、お寿司食べていいよって言ってくれるんですか」って。

 

「えー?普通そんな事しないよ。真修にしかした事ないよ」

聡子は笑いながら答える。

 

すると真修は突然真剣な顔になって聡子の腕をつかみ、

「聡子さん!」(さっきまでお姉さんだったのに)

「これ、今日のお礼です!」と、回転寿司でゲットしたガチャガチャのカプセルを握らせると走り去ったんである。

 

 

 

 

聡子が、そのマグロの握りのストラップをスマホにつけてるのを見て、上司の椎川が話しかける。

「あれ、ストラップとかつけない派じゃなかったっけ?」

聡子はその言葉にちょっとムッとする。

昔椎川がくれた携帯のストラップを聡子はつけなかった。

「あれつけてないの?」と言われて、なんかそういうのつけると重いからとか答えてた。

聡子も若かったし、なんとなくつき合ってなんとなく別れてしまった。

今更軽いノリで昔の話を蒸し返してはからかってくる椎川の事が疎ましかったのだ。

それでいて、椎川が婚約した彼女を紹介してきた事に聡子はショックを受けていた。

もう恋愛感情はなくても、お互いわかりあえているかのような特別感を持っていたから。

感情をあまり表に出さないけど聡子は本当は傷ついていた。

自分だけが孤独のような気がして、聡子は泣いてしまう。

抱きついて慰めてくれたのは真修だった。

 

ある日、聡子の部屋に真修が来て、勉強を教えてやる。

真修が帰り一人になった部屋で、聡子は真修と過ごす時間が自分にとってかけがえのない物になっている事に気づく。

 

ところがその夜真修が再びやって来て狼狽した様子で、弟がまだ帰って来ないと助けを求められるのだ。

お父さんは仕事で帰ってこないかもしれないし、電話もしたけどつながらないと言う。

とりあえず家に戻ろうと聡子は真修の家へ初めて行くんだが、大人が留守の家に勝手に上がりこむのをためらってしまう。

そりゃあそうだよね。

これって不法侵入?とか思うけど、今そんな事言ってる場合じゃないからと入る事にする。

すると家の中はコンビニの弁当とかペットボトルとかのゴミや脱ぎ捨てた衣類が散乱してて、かなりの汚さで呆然としてしまうのだ。

真修の抱える家庭の問題の大きさに、他人である自分が親を差し置いてどこまで手を差し伸べていいものか、聡子はジレンマに陥ってしまうんである。

 

 

 

感想

 

私の少年」は30歳の女性聡子と12歳小学6年の少年真修との交流を描いた、繊細で美しい物語だ。

聡子と真修、それに付随する人のエピソードを細部に渡って丁寧に丁寧に描かれている。

 

これはいわゆるオネショタのカップリングなんだがとにかく真修きゅんがカワイイ!!

毛も生えてないし、短パンから膝小僧が出てるし、思春期前の中性的なショタっ子の魅力に心を鷲掴みされてしまう。

性格も素直で実に美しい心を持っている。

うれしいとパアッと花開くような豊かな表情を見せるのもいい。

聡子がこの笑顔の為なら何でもしてやりたいような気持ちになってしまうのも共感できる。

こんな子に慕われたらそりゃほっとけないよね。

 

 

この二人の関係って言葉ではうまく説明ができない。

 

最初は真修がかわいそうだから、聡子の中の母性みたいな物がそうさせてるのかなと思う。

椎川から「どうしておまえが他人の子供にそこまでする必要があるんだ」と言われたりもする。

確かに第三者から見たらへんに違いない。

まして真修の親だったら妙に思うのも当然だ。

いったいどういうつもりでうちの子供に近づくのか?

何の目的があるのか?

イタズラ目的か?

そこは30歳の男と12歳の少女に置き代えればわかりやすい。

聡子もそこはわかっているから、慎重になったり真修と距離を取ろうとしてみたりもする。

でも別にいかがわしい事をしてるわけじゃないし、二人はただ一緒にいたいだけなのにどうしていられないんだろう。

二人の気持ちが伝わってくるから、読んでてほんとにもどかしいんである。

 

 

 

だがしかし、自分だけが一方的に真修に与えているように見えて、実は自分こそ真修からたくさんの物を貰っていたのだ。

手を差し伸べてくれていたのは真修だったのだ、と聡子が気づく所でこの関係は終わりを告げてしまう。

 

二人の関係が真修の父親の怒りを買って、会社での立場が危うくなった聡子は仙台へ異動する事になってしまうのだ。

 

「私の方があの子から貰いすぎてしまったから全部なくなってしまったのだ」と聡子はつぶやく。せつないのぉ〜

 

 

聡子の心をしめる真修の面影と「もう聡子さんから何も貰わないからいなくならないで」という真修のメッセージを聞きながら涙涙の聡子に、貰い泣きしながら読んでると

これが恋でなくてなんだー!!!

と思ってしまう。

 

 

 

作中に垣間見るそれぞれの孤独の影。

聡子と真修がひかれあったのは二人が孤独だったからだ。

でも二人とも自分の事を深く語ったりはしない。

黙って察して心で繋がっているのだ。

 

それは、お互いの人間性を認め合う美しい関係だ。

 

だが決定的に違うのは聡子は大人で真修は子供だと言う事だ。

 

やっぱりどんなに好きでも大人が子供に手を出すのはならぬ。

じゃあ成人するまで待てばよいのか?

うーん、でもそんな事してたら女はどんどん年取ってしまうし・・・

 

年の差カップルと言えば、最近ではやっぱフランスのマクロン大統領39歳と64歳の妻だよね。これには驚いた。

もっとも、とてもお綺麗な64歳ではあるが。

二人のなれ染めは彼女が高校教師をしていた40歳の時で、その時彼女にはもちろん夫も子供もいた。

自分の担当するクラスに15歳のマクロン君がいて、驚く事に自分の実の娘も同じクラスだったという。

もっと驚いたのは、フランスではこの二人の関係が純愛だと喝采を浴びていた事だ。

さすがアムールの国だ。日本人の自分にはちょっと理解できない。

それは純愛ではなく不倫だし、影で泣いてる人がいるのだ。

やはりフリーダムに恋愛を謳歌しすぎて、日本人の心情とは合わないような気がする。

 

その点「私の少年」はいい。

耐え忍ぶ感じがいい。

なんと言っても聡子の造形がいいのだ。

聡子は真修を、二人の関係を守りたいと思う。

その為にはどうすればよいか。

自分の価値観でしか物事を計れない人も多い中、聡子は感情に左右されず冷静な判断が出来る。

決して真修の父親がネグレストだとか非難するような事も言わない。

ただ一緒にいたいだけなのに、二人の関係は「大人が子供をかどわかしている」ようにしか見えない。

何も悪い事などしてないのに、世間からはそんな風にしか見えないんである。

それは間違ってる、と読んでる自分は思う。

聡子も腹が立つだろう。

でも腹が立っても、理性で感情をコントロールできるのだ。

そして自分の行動に責任を持って、言い訳がましい事も言わない潔さも持っている。

感情を抑制する理知的な聡子の存在が、この物語を気高くそしてもどかしくせつなくさせているんである。