遅ればせながら「亜人」の14巻を読みました。
まだ佐藤さんと戦ってたんだね・・・
2017年の佐藤健くん主演の実写映画はまったく原作と違う作りだったけど、アレはアレで面白かったと思います。
佐藤さん役が綾野剛くんだったので「若っ!」とビックリしたけど、話し方が佐藤さんだったんでウケたわ。
映画はだいぶ端折ってあっていきなり亜人の人体実験から始まっちゃったけど、これは原作でもそうだけど一番恐ろしい場面なんですよね。
亜人は政府の元で保護されているとか一般人が信じてた事はでたらめで、捕まると研究と称して非人道的な虐待や拷問をされてたのよ。
いや、亜人は人間ではないという認識だから人道とか関係ないのよ、やってる人は。
人間は死んだら終わりだけど、亜人は死んでも生き返るからどんな凄惨な仕打ちだってできる。
ここから悪い厚生労働大臣と製薬会社が癒着して、亜人を使っての新薬の研究開発をやり始め製薬会社が大儲けした事でウチでも使いたいという企業や組織が出て来て闇の亜人ビジネスが生まれたんですわ。
おそろしいのう。
ここで怖いのは、亜人は死なないとはいえ痛みは同じように感じるって事なんです。
死ぬ、生き返る、死ぬ、生き返る・・・無限ループのように繰り返す痛みの連続。
人はどうしてこんなに残酷な事を平然とやってしまうのだろう。
私はビビりです故、痛めつけられる漫画は怖くてやなんです。
それなのになぜにこんなに面白く読ませるのか。「亜人」よ。
まずは特筆すべきは佐藤さんの造形であろう
綾野剛くんとは似ても似つかぬ飄々としたオジサンに装った外見と、戦う事を楽しむ為に戦う内面。
亜人の権利をテロリズムによって獲得しようとするパフォーマンス。
けれどその精神は、重度の麻薬中毒者やギャンブル狂と何ら変わらずスリルと興奮を求めて強烈に戦いに惹きつけられているだけなのです。
その超絶な戦闘スキルは亜人の特性を活かし、旗色が悪くなると躊躇なく自分の腕をぶった切り、自分自身を撃ち殺す。
その戦い振りには誰もが驚かされたよね。
佐藤さんの場合はきっとアドレナリンが出まくって痛みなど感じてないんだろうね。
しかしながら佐藤さんと比較すると幾分地味目に見えてしまう主人公も忘れてはなりませぬ
永井圭くんは見た目こそ平凡ですが頭脳明晰で研ぎ澄まされた、でも心をどこかに置き忘れたような人間味のない少年です(褒めてるの)
この子の凄みはどんな状況でも合理的に判断しているとこなのよ。
合理的と一口に言ってもこれは結構難しいよ。
合理的とは理性的な事でもある。
理性は感情の逆だから理性的とは感情に流されない事だ。
でも感情こそが人の魅力だから、感情に流されない圭くんは「冷たい」とか「クズ」とか言われてしまうのだ。
この漫画の対立構造は「亜人VS人間」じゃなくて「亜人VS亜人」
圭くんは少年漫画のヒーローみたいに正義の為に戦ったり熱く夢を語ったりはしない。
佐藤さんの凶行に亜人の立場が悪くなり自分の身も危うくなったからしょーがなしに戦う羽目になるという、半分はイヤイヤだったのだ。
ちなみにその時の佐藤さんの凶行とは、ビルに飛行機で突っ込むテロ行為の後、SAT50人を全滅させるという無双っ振り(圭くんはかりんとうを食いながらテレビで見ていた)
そんな圭くんの言動や考える作戦を、佐藤さんはとても気に入っていてゲーム感覚で楽しんでいるのです。
佐藤さん怖い。
普通誰も死なないと緊張感が無くなるものだけどこの作品は違うんだよね。
亜人は「死なない」という事を除けば普通の人間と何も変わらず、自分が亜人なのかは一度死んでみないとわからないのだ。
何という設定!
この設定の面白さは誰も見てない所で一人死んで生き帰ると「ただ意識を失ってただけ」だと自分自身も気付かない場合もあるのです(笑)
死なないという事がこんなにも物語に幅や深みを与えるものか。
一方「IBM」は亜人が操る事が出来る人型の物質で普通の人間には見えないのですが、亜人には全身が包帯で巻かれた黒い幽霊のような姿に見えます。
高い戦闘力を持ちますが不安定でしばらくすると消えてしまう。
「IBM」の個性はその亜人の性質に影響されるので、当初人間嫌いの圭くんの「IBM」は思春期の少年みたいに反抗的で、言う事を聞かず勝手に暴走して圭くんを恐れさせていました。
下村泉ちゃんは、劣悪な家庭環境で育ち母親の同棲相手の男から強姦されそうになった際、抵抗して頭を打ち死亡したのですが生き返り亜人である事がわかります。
この男がカネ目当てで 泉ちゃんを政府に売ろうとした為、家を出て逃亡しなければなりませんでした。
点々と居場所を変え、身体を売ってわずかな金を稼ぎながら生きる日々。
生活に疲れ、絶望感がまだ若い泉ちゃんを苛みます。
泉ちゃんの孤独な心に寄り添うように現れる優しい「IBM」
じーん・・・
そしてこの作品は佐藤さんと圭くんを中心とした激しい攻防が面白いだけじゃなく、人の心の移ろいとか心理描写が話が進むほどに上手くなっていくんですよ。
圭くんが仲間に引き入れようと目をつけた戸崎さんは、政府の亜人管理委員会の担当職員で亜人にとっては敵です。
このインテリメガネが、実は上からは叩かれ後輩からは自分の座を狙われ針のムシロみたいな職場の人間関係や、植物状態になった恋人の為金が必要という男の純情とでしがらみだらけだったのだ。
最初は亜人を見下していてやな奴だったけど、アレは、きっと亜人も人間なんだと思うようになったんだろうね。
あと田中くん。
過酷な拷問を受け人間への憎悪から佐藤さんとツルんでいたけど、この人は亜人になる前は優しい人柄でこんな争いに巻き込まれる人ではなかったんだ。
人間に復讐したいという気持ちから、これは本当に正しい事なのかと葛藤するようになりやがては佐藤さんに見捨てられてしまう。
あっさりしたキャラが多い中で非常に人間的で、自分がもし亜人だったら田中くんタイプだろうと思うのです。
だから私は強い佐藤さんよりも苦悩や葛藤を抱えた田中くんの方に一票入れたくなるのだ。
映画では城田優くんが演じていて、これまた原作とはまったく別人のイケメンである。
城田くんと言えばデカい人というイメージだったけど、身体をだいぶ絞ってて長身が際立つせくしーさで思わず「カッコよ♡」と笑ったのだ。
というわけで、城田優くんにも一票入れたい。