akのもろもろの話

大人の漫画読み

サイと鳥獣戯画展の話

そうそう、米須玄師の「パプリカ」の国宝鳥獣戯画バージョンをYouTubeで見て笑ってしまった。

兎と蛙が「パプリカ」に合わせて踊るんだけど、動きがキレがよくて妙にクオリティー高いのよ。

「鳥獣戯画」と言えば4・5年前に東京国立博物館に甥っ子と見に行った事を思い出す。

現在大学生になった甥っ子はあの時はまだ中学生だった。

確かゴールデンウィークで実家に帰ったら、甥っ子がつまらなそうにしてたので「akちゃんと鳥獣戯画見に行こうよー」と単なる思いつきで誘ったんであった。

「ホラホラ、サイのさー忍法・鳥獣戯画の元ネタだよー。見たいでしょー」とか適当な事を言って半ば無理矢理群馬から東京へ。

ちなみにサイとは岸本斉史の有名な漫画「NARUTO」に登場するキャラだ。

忍者の世界を描いたバトル漫画「NARUTO」は落ちこぼれの主人公ナルトの成長物語であり、ナルトとサスケの壮大な友情物語でもある。

故国を捨て抜け忍となったサスケをナルトは友と信じ続ける。

それはまるで惚れた女に捨てられた哀れな男みたいな様相で、未練がましいからいい加減あんな男の事は忘れなよと言いたくなってしまうのだ。

サイはそんなサスケの後任で登場する凄腕の忍者だ。

 

サイが使うのは巻物に墨で描いた鳥や獣が具現化するというカッコいい術だ。

口寄せと言って契約した動物を召喚するのとは違い、サイが墨で描いた絵がそのまま巻物から飛び出して来る。

正確な術名は「忍法・超獣偽画」である。

 

この日我らが東京国立博物館に見に行った「鳥獣戯画」は現存する日本最古の漫画とも言われている。

京都の高山寺に伝わる絵巻物で貴重なものだから国宝になっているのだ。

そんなお宝が生で見れるのはすげえけど、ゴールデンウィークに行ったのは無謀でございまして長蛇の列でおまけにすげー暑い日だったのよ。

まったく、場当たり的で考えなしな私の横で甥っ子は大人しく並んでるわけだ。

彼は私の実の姉の子で、姉が離婚して子供を連れて出戻って来た時はまだ3歳だったんだよね。

今は亡き母が不憫がって、父親がいなくても寂しい思いをさせないようにといつも気張ってたね。

その当時無職で家にいた私は幼稚園バスのお迎えで外に出て待ってる役目を仰せつかってね。

あと運動会とかお遊戯会とかなんやかんや行事があるたびに母の音頭で父と私も同行させられたもんよ。

知らない保護者に「いつもにぎやかですねえ」とか言われたりして、一家勢ぞろいで気恥ずかしかったわ。

ねーちゃんとかーさんで行けばいいじゃんと思ったけど、母は「パパのいる家に負けないようにみんなで盛り上げてやろうよ」とか言っていつも張り切ってたね。

でもK太よ(甥っ子の名前)!いつになったら中へ入れるの?もう1時間以上並んでますやん。

会場に入る前に行き倒れるんじゃないかと思ったがなんとか入れた、と思ったらまた中で行列ですわ。

おっ、やっと見れるんか?と思いましたらよくわからん絵巻物が部屋全体を占拠して延々と展示されてまして。

それは高山寺所蔵の美術品だったのだ。

よく見りゃチケットにも「鳥獣戯画ー京都高山寺の至宝ー」ってあるのに、突然思いついて行ったもんだから下調べもしてなくてなんの知識もないまま、鳥獣戯画はまだかまだかと思ってたダメな私。

まだなのよ。

そこから2時間待ち(笑)

ただ並んで待ち続けるだけの苦行に意識が朦朧とする中、連れて来なければ良かったと後悔し始め「K太、すまん」と心でつぶやいたのだった。

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          (鳥獣戯画はこんな感じい・・・)

鳥獣戯画の作者は鳥羽僧正だと学校で教わった気がする。

鳥羽僧正は平安時代の僧で画技に優れ風刺画が巧みであったという。

でも現在は否定されているようだし、鳥羽僧正自身もどういう人物だったのか謎らしい。

作者が誰なのか、何を目的に描いた絵なのか、そしてどのように京都の高山寺に伝わったのか、これほど有名でありながら謎とされている。

江戸や明治ならいざ知らず時代が古過ぎてわかっていない事が多すぎるんである。

絵巻は4巻からなり全長は約44mにも及ぶ。

特に有名なのが甲巻で兎と蛙が楽し気に相撲に興じる場面は最もよく知られている。

兎と蛙の大きさ同じなんですけど、と思ってしまうが実に生き生きと描かれててうまいんである。

ふと甥っ子が「まてよーこのー」「やだねー」と擬人化した動物たちにアテレコし出す。

そうそう、漫画だから吹き出しつけたら面白いね。

これは和紙をつないで絵巻物に仕立ててあるんだけど、よく見りゃ絵柄やタッチが違っててあきらかに複数の人が描いたものだとわかる。

この時は確か4年がかりの大がかりな修復を終えたので4巻ある絵巻物を一挙大公開となったんだった。

そのせいかものすごい混雑で立ち止まれないのでどんどん先に進まねばならない。

あれだけ並んだのだからもっとゆっくり鑑賞したかった。

要するに本物の鳥獣戯画をこの目で見たというだけの事ね。

 

ちなみに甥っ子の感想は「サイの鳥獣戯画の方がすごい!」と言ってた。

まあ、サイのは迫力満点の狛犬とか人が乗れるほど大きい鳥とか金剛力士像まで出すからね。

 

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(岸本斉史「NARUTO」より) 

 

 

こっちはウサギとか蛙だもんな・・・

 

ごめんね鳥羽僧正

こんな甥っ子で