ホロケウオシコニ 「オオカミに追いつく」
アシリパの母が夫であるウイルクに名付け、ウイルクがアシリパに教えた、三人だけしか知らないウイルクのもうひとつのアイヌ語の名前。
いったいこの名前がどう金塊の隠し場所と関わるのか?ぜんぜんわかんない。
北海道に帰るため樺太を南下する一行。
まさに極寒の地で、今みたいに優秀な防寒着もないのに昔の人はすごいわねえ~
それにしても隻眼となり姿を消した尾形百之助が気になるわけで。
医者が呼吸も血圧も弱くなってるし臨終が近いだろうと判断した人間が、フツーあんなに動けるものだろうか?フツーの人間ではないよね。
杉元に背後から銃撃されながらもヒャッハー!って(ヒャッハー!とは言わなかったか)馬で逃亡して行く姿もクレイジーで尋常じゃなかったけど。
あのシーンは嫌いじゃないわ。
尾形の心の闇はいつまでも自分の複雑な出自に囚われている事で、あたしはこういう拗らせてしまってる人が好きだ。
でももうスナイパーとしては駄目だろう。
いい腕だったのにもったいないのお。
一方、薩摩の貴公子・鯉登少尉殿には何か引っかかる事があった。
さて、鶴見中尉を待つ間、樺太の豊原で自由時間ができた一行。
豊原は当時の樺太で一番大きな街だ。
杉元とアシㇼパはリュミエール社の「シネマトグラフ」でアイヌ文化を撮影している稲葉勝太郎と撮影技師のジュレールと出会う。
北海道アイヌの活動写真が評判が良かったから、樺太にもアイヌがいると聞いてやって来たと言うのだ。
リュミエール社は世界各地にカメラマンを派遣し様々な風物を撮影させた事で知られるが、アシㇼパは彼らにアイヌの昔話を動きで見せて活動写真に残そうと提案する。
アイヌは文字を持たない民族で、すべての事は記憶して口伝えに伝えてきた。
それってすごい記憶力だよねえ。
あたしなんて認知症か!?ってほど、物事をすぐ忘れちゃうし覚えられないのに。
数多くの口承文芸を活動写真にすれば、アイヌの言葉がわからない人たちにも伝わるはずだとアシㇼパは思いついたのだ。
北海道は先住民であるアイヌの土地なのに、そんな意識をまったく持たない和人連中が大量にやって来て、アイヌの伝統的な生活や文化は破壊されつつある。
樺太アイヌだって歴史に翻弄されて苦難の道をたどる事をあたしたちは知ってる。
アシㇼパは自分たちの文化がこのまま消えてゆくかもしれない危機感に、どうにかして残す方法はないかと真剣に考えてたんだね。エライネ~
やっぱアシㇼパは普通の子供ではないのよ。
ウイルクは亡くなる前に杉元に、アシㇼパにはゲリラ戦ができるようにサバイバル技術を仕込んだのだと言ってたもの
( ̄□ ̄;)!!
これは爆弾宣言だった。
アシㇼパの狩りの技術も山の知識も、これがまさにこの作品の魅力を成してるんだけど、実はお父さんによる英才教育の賜物だったんだね。
ある意味アシㇼパはアイヌのエリート予備軍なのだ。
だからこそ彼女はこの樺太の旅を通して、ウイルクやキロランケの言う通り守るためには戦わなければならないのだろうかと悩む。
ウーム・・・ここが悩ましいとこで、杉元はイヤだから「戦うのはアシㇼパさんがやらなくたっていいじゃないか」と言う。
ウイルクやキロランケがアシㇼパに託したものが結局は「アイヌの先頭に立って死ね」とか「戦って人を殺せ」って事だったんだと思い、こいつら許せないと思ってる。
だって不死身の杉元が見て来た地獄をアシㇼパのような少女には見せたくないからだ。
でもキロランケが命をかけて伝えて来たのに、もう自分は無関心ではいられないとアシㇼパは言うのだ。
樺太の旅は良くも悪くもアシㇼパを変えたのである。
ベストコンビだったはずの二人が、今は少しづつすれ違ってゆくのがなんだかもどかしい。
杉元のアシㇼパへの思いもよくわかるから。
でもね、子供はいつまでも子供ではないんだよ、杉元さん。
アシㇼパちゃんは日々成長してゆくのに、アータが守りたいとか幸せだと思ってるものは、ただ自分の価値観を押し付けてるだけだし。
彼女のほのかな恋心だって気づいてないし。
もう子供扱いしないで一個の人格として認めてあげなさいや。
谷垣ニシパだってチカパシを連れて帰りたかったに違いないのに、自分の意思で残る事を選択した彼の気持ちを察して背中を押してあげたわけで。
二人が過ごして来た時間を思うと切ない。
決して下ネタばかりじゃないのだ。オホホ
白石由竹は杉元に「全部覚悟のうえでアシㇼパがアイヌを背負いたいと言うなら背負わせりゃいいだろっ!!」と怒る。
「今のおまえは人生に守るものができたと勝手に思い込んで冒険ができなくなったショボショボくたびれ男だ!」
「彼女を自立した相棒として信じるならおまえは元のギラギラした男に戻れるのに!」って。
白石はギャグ要員だと思ってたけど、正直このセリフはしびれましたぜ。
そして、鯉登少尉の尾形への引っかかりは屈託となり確信へと変わる。
尾形が残した「今度鶴見中慰に会ったら満鉄のことを聞いてみろ」という言葉に、あれほど鶴見中尉を崇拝していたはずが不信感を抱き始めるのだ。
満鉄計画の反対論者だった花沢中将の自刃を裏で糸を引いていたのも、自分が少年時代に函館で拉致監禁された事件が狂言だったのも、すべては鶴見中尉が主導者だったと気づいてしまう。
そのカリスマと甘いウソで部下の心を掌握しているかと思われた鶴見中尉を、意外にも詰めの甘そうな鯉登が疑い出すのである。
「鶴見中尉の考える未来にアイヌは存在してるのか?」
(ナイナイソンナノー)
そう自分を質すアシㇼパの真っ直ぐな青い瞳に、ウイルクの姿を重ねる鶴見中尉の脳汁は止まらない。もう笑いながらどくどくどくどく流す!
そんなわけで、アシㇼパと杉元が逃げ出すのも当たり前なのである。