以前書いた感想はコチラでございます。
真修は高校生になったのお。
「私の少年」は18才も年の離れた大人の女性と少年の交流を描いたものだ。
二人が出会った時は聡子は30才で真修はまだ小学生だった。
聡子はスポーツメーカーに勤務するしっかりした女性で、最初は近所に住む小学生の真修と偶然仲良くなり公園でサッカーを教えてやってた。
でも二人が親密になりすぎると周囲の人は変に思う。
別に聡子を変態性欲者と疑ってるわけじゃないけど、どうしてよその子にそんなに親切にするんだ?と不可解に思うのだ。
そこには、父子家庭の真修の父親のネグレクトの痕跡を見たり、聡子なりの思いがあったのだけど他人にはわからない。
理知的な聡子は世間の目も気にしながら、真修と距離を取ってみたり考えあぐねる。
二人の桎梏は18才の年の差のせいだが、言うまでもなく二人は性的に結ばれたいとか思ってるわけじゃない。
ただこの二人はそれぞれがとても孤独なのね。
孤独な者同士が魅かれあうのはよくある話だ。
しかし18才の年の差があるからこそ、二人は性愛を越えたお互いの人間性を認め合う美しい関係なのだ。
年末に仙台へ帰省した聡子が町で再会した元同級生から「この結婚詐欺い!!」とめっちゃ泣きながら絡まれてる所を道行く人から勝手に動画にあげられてしまいSNSで拡散、それを見た真修が仙台へと駆け付けた前巻。王子様かよ。
聡子は母親との確執にも疲弊していて、いやね正直言いましてこんな母親なら帰らなくてもいいよとあたしは思ってるけどな。
なにしろ合わないんだから。
突然現れた真修から「聡子さん一緒に帰ろう」と言われる聡子とか、母親と口喧嘩してた所を真修に見られていた事を知り恥ずかしく思いながらも、つい真修に話してしまう聡子とか、性格的に絶対そんな愚痴っぽい事を話すつもりなんてなかったと思うけど心の中の本当の気持ちを打ち明ける事ができた聡子とか。
子供だと思ってた真修がいつの間にか成長してましてね。
素敵な青年のような雰囲気で、傷ついた少女のような聡子に「なんでも話して」って言ってくれたのよ。
子供っていうのはすごいスピードで成長してるんですよ。
今までは大人と子供だったけど、大人と大人の対等な関係になりつつある事を予感させる。
つまりは二人の関係性にも変化が訪れる時が来たのだ。
モデル並みのイケメンに成長した真修から「聡子さん」「聡子さん」言われて、聡子も嬉しいだろな。
子供が健やかに成長した姿を実感するのは素直に嬉しい事だ。
もっともそれだけ自分が年を取ったわけだけど。
もう約束などしなくても聡子のいる場所を見つけては真修がふらりと現れたり、二人の関係は穏やかで安定したものとなって来た。
交わす言葉も一言二言。
あとはじっとそれぞれの時間を過ごす、って長く付き合ってるカップルだよね~
でもやっぱり二人の関係って恋人じゃないし、友人でも母親代わりでもないし、名状しがたい微妙な関係でございます。
二人はそれでいいんだけど、二人を取り巻く人たちには納得がいかず波紋を投げかけてしまうのだった。
たとえば聡子の上司の椎川。
そもそも聡子が仙台へ転勤となり二人が離れ離れになってしまった時の事を二人は忘れてないわけで(あれはホント悲しかったワ)
真修の父親から会社にクレームが来たから転勤になったんで、仙台から戻ってきて1年チョイ真面目な聡子は会って謝罪しなければといまだに思っていた。
しかし椎川が言うには、お前は家庭に難ありのかわいそうな子に手を差し伸べただけだし会社は特別問題視してない。だいたい向こうからしたらコッチは大事な得意先なんだから気に入らないからあの社員を飛ばせなんて言えるかよ。本人も父親としての役割をぶんどられたような気分にでもなってたんじゃねーの?お前が仙台に転勤になったと聞いてチョー動揺してたよ。ちょうど仙台支店から人をよこせって言って来たからオレが推薦したんだよね~という事でした。
エーッ!?
つまりはアータ、あの悲しい別れは策士椎川のはかりごとだったのだ。
聡子も寝耳に水で、椎川の思いがけない発言に「どうして・・」とつぶやくのがやっとこさ。
椎川は「許せなかった」と言う。
彼は学生時代の聡子の元カレだけど、そんな過去はすっかり忘れてるのかと思いきや、とんでもない粘着質で昔の出来事をいまだに根に持ってたのだ。
人って目の前にいる恋人よりも思い出ばかり見てしまう時もある。
聡子が自分を見てない事が椎川はやるせなかったのである。
よくよく聞いてみれば椎川の気持ちもわかるが、あたしだったら、ぜってー怒るけどね、聡子って感情に流されないんだよね。
そういう所にいつも感心する。
一方、真修は小片さんが自分を好きな事に気づく。
彼女のような若い可愛い女の子は、若いってだけで自分の方が30代の聡子より魅力的だと思ってるからね。
(そりゃセックスするだけなら若い方がいいかもしれないけど)
それに大人の女への謎の思い込みで、聡子が真修とは遊び半分で不誠実な人だと決めつけてるのよ。
うーん、聡子はそんなに男性経験ないと思うな。
小片さんは自分の思いの方が一途で強いと聡子に攻撃的になる。
だが聡子を悪く言い、自分の言葉が自分自身を傷つけるのである。
この作品て主要人物の聡子と真修だけでなく、他のキャラも丁寧に描かれている。
生きるのはつらい。
この作品を読むといつもそう思う。
生きるつらさや苦しさを胸に押し隠して生きる人たちの物語でもあるのだ。