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大人の漫画読み

漫画/「不滅のあなたへ」⑬ 大今良時

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(大今良時「不滅のあなたへ」13巻)



不死身の体を持ち、どんな姿にもなれ、どんな物でも作り出す不思議な力を持った存在「フシ」。

フシを作り出し時にフシに助言を与え時に傍観しながら、今だ明かされない世界の理を知る正体不明の存在「観察者」。

そして、フシが巡り合う人たちとの出会いと別れの物語に泣いたり笑ったりじーんとしたり。

そんな「不滅のあなたへ」は、第1部「前世編」が完結し、13巻からは第2部「現世編」が始まった。

 

この作品はファンタジーだから、これまではいつの時代なのかどこの国なのか、まあ架空の国っつー設定でよかったんだけどね。

今度はまるで現代日本を舞台にしたような「現世編」なのである。

じゃあこの後は「未来編」があるのかな?と勝手に想像。

しかしフシのいつもの少年の姿は美しいから好きだけど、現世にいたらちょっとヘンな人だと思う。

雪原や狼ならば合うがスマホや女子高生とか現代的な物はあまりそぐわない。

 

あたしは基本的に「永遠の時を生き続ける美しきバンパネラの物語」とか愛してるんで、不死身の美少年の物語も好みだ。

最初は手塚治虫の「火の鳥」っぽい壮大な物語なのかな?と思ってた。

でもここまで読んで来た感じでは、手塚治虫的な生命の尊厳や人間の業とかじゃなく、もっと優しい、この作者らしい人と人とのつながりや細かい心理描写が売りなんだね。

時を超えて、変わり続けるフシは生命の原形みたいに思える。

それに比べたら人間の一生なんてあまりに儚いけど、生命は巡っているんだなと教えられるのである。

 

 

さて、レンリルの街をめぐる攻防戦から数百年がたち、ノッカーの脅威は去った時代だ。

そんな穏やかで平和な時代にフシは再び目を覚ました。

それはフシが夢見た平和で美しい世界だったから、喜び勇んで仲間たちを蘇えらせる事にする。

「みんな、ここで夢をかなえるんだ。今、生き返らせてあげるよ!」つって、相変わらず純真で可愛い。

フシは推定800才である。

 

観察者が姿を現し、おまえはよくやったから褒美をやると言って、腕のロープを切り離すが「再接続」すればまた繋げられる能力を与えられる。

彼は「今後は自分を謳歌しなさい」と言い残し消えるのだった。

 

新しい世界を歩き出したフシだが、街を行く人の多さも、道路を走る車も、見上げるほど高いビルが立ち並ぶ様子も、何もかもがかつてと違う。

おのぼりさん(死語?)みたいにボンヤリしてるんで、猛スピードの車にハネ飛ばされてしまうのだった(まあ死にはしませんが周囲は人がはねられたぞって大騒ぎ)

皆は皆で突然知らない時代に蘇って焦り、その様子が「中世からタイムスリップしてきた人シリーズ」という面白動画にあげられていた。

どうも皆があたふたする姿が面白い。

フシはタピオカが気に入ったみたいだ。

 

西の首都レンリルの大木が世界を支配していた闇を打ち砕くため聖なる根で世界を覆ったという伝説。

今やフシと仲間たちの戦いは、オカルト研究部副部長・ユーキのオタクネタとして語られるだけだった。

ユーキと出会ったフシは彼の家に居つく。

 

ユーキが憧れるミズホ先輩は勉強もスポーツもなんでも出来る美少女だったが、フシはこの少女を一目見るなりすぐに気づく。

そして思わず彼女の左腕を確認するが 、なんでもない。

彼女はカハクによく似ていた。

 

小さい頃からなんでも完璧に出来てトップを取る事ができるミズホだったが、自分にも手に入れられないものがある事に気づいていた。

それは友達だった。

だけど周りにいるのはミズホに嫉妬してくる女の子ばかりで、そういうのは尊敬できないからつるむメリットを感じない。

正直、自分より下の人とは友達になりたくなかった。

 

そして母親との関係にも強いストレスを感じていた。

ミズホが出来がいいからって際限なく求めて来て満足しない母親は、彼女を支配しようといつも抑圧的だった。

だから彼女は疲れて死を夢見る少女だった。

体育祭のリレー練習で意地悪女子からわざと足を踏まれて怪我をしたミズホは「私が死んだら泣いてくれる?」と同級生のハンナに聞く。

ハンナだけはミズホの本質を見ようとする。

ミズホとハンナが少しずつ仲良くなっていくのが微笑ましい。

だけどミズホの母親の行動は解せぬ。

ミズホが行方不明で探している時になんでか自撮りしてたりする。

 

実はミズホは彼女自身もまったく知らなかったけど「守護団」の18代当主だったのである。

そして事件が・・・

 

 

死の象徴のようなノッカーのいない世界。

でもフシが思うような平和な世界とはちょっと違った。

敵のいない誰にも命を奪われない世界ではあったが、なんだか息苦しい。

この社会では人は自分自身を殺さないといけないからだ。

 

そしてまたも現れた守護団である。

ハヤセによって築かれた守護団は何代にも渡りフシにつきまとうストーカーだ。

極めて執拗で愛情関係があるなどと勝手に思い込んでる。

フシを賛美しフシの子供が欲しいとかやたら性的に近ずこうとするのも特徴だ。

あの人たちは過去の感情や間違った信じ込みで愛が歪んでいるのに気づかないのだ。

カハクも哀れだったよね。