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大人の漫画読み

漫画/「後ハッピーマニア」安野モヨコ

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(安野モヨコ「後ハッピーマニア」1巻)

1990年代に連載された安野モヨコの「ハッピーマニア」は、大人の女性を読者対象にした、お洒落で軽妙なタッチで恋愛や女性の生き方を描いた作品だ。

1998年にはシゲタ役を稲盛いずみさんがフクちゃん役を藤原紀香さんが演じてテレビドラマ化もされたんだよね。

この作品はコメディーで、主人公シゲタの恋愛への暴走振りが面白すぎてハラがチギれるほど笑えたけど、シゲタとフクちゃんの女性二人がとっても輝いていた。

そしてなんだかよくわからない勢いもあって、あたしの人生もこんな勢いですげー盛り上がればいいのにって思ったものだ。

盛り下がるばっかりだったからね。ホホ

 

重田加代子(24才)はすぐ男とセックスしてしまう女だ。

だいたい会ったその日に体を求めてくる男なんて行きずりのセックスが目的だっつーのに、シゲタはまったく気づかない。

男の甘い言葉にウットリして二人は運命の恋に落ちたのだとその気になってしまうのだ。やべーちょれー。

当然ながらセックスしても彼女にはなれず、なんで自分には彼氏ができないのだろうと真剣に悩んでいる。

セックスすると好きになってしまい、好きになったら一直線でしてね、二股かけられても不倫でもとりあえずテンションMAXで、自分に都合の良い妄想関係、妄想恋愛がどえらい。

相手にパートナーがいても気にしないし、自分も浮気をしても罪悪感を持たないし、性に対してストレートで奔放だ。

失恋しても即立ち直りすぐに次の恋へ走る。

人呼んで「恋の暴走機関車」( *´艸`)

だが下品な尻軽女なのになぜかまったく嫌味がなくて、その暴走振りが痛快ですらある。

 

そんなシゲタにあきれながらも的確なアドバイスをしてくれるのが、親友のフクちゃん(29才)で、彼女はシゲタと違って仕事もできて男にもモテる美人系だ。

 

またシゲタを好きな大学生のタカハシは、危ない女シゲタを健気に見守っている。

だが地味で真面目なタカハシはシゲタの好みのタイプじゃない。

彼は実は東大生でそれを知ったフクちゃんたちは彼を見る目が変わるが、シゲタはまったく変わらない。

いくら傷ついた自分に優しくしてくれても、タカハシを見る目は以外とシビアで内心こんな風に思っているのだ。

 

こんなのじゃないもっとカッコいい人がいいの

私みたいな女の子を好きになんかならないかっこいい男の子

 

 

こんな自分を好きになる男は駄目だって言うのだ。

自分が全く見えてないと思ってたら、自己評価がちゃんとできていて驚いた。

 

 

 

今作ではそんなシゲカヨが45才になっている。

ちなみにこの作者はエヴァの庵野監督が旦那だったんだね知らんかった。

 

前作でのラストは、ずっと自分を好きでいてくれたタカハシと結婚してハッピーを手に入れた?かと思われたが、まさかよもやそんなあのタカハシが浮気!?

しかもタカハシから離婚を切り出される場面から始まるのだ。

結婚して15年、いやよく15年もったなエライよタカハシ。

「今更?!」あたしはもう45才なんだよっつってタカハシを殴ってシゲタは家を飛び出す。

 

いったいこの15年に何があったのか?次第に明らかになる。

親友フクちゃんの家に身を寄せるシゲタ。

かつてハッピーを追い求めたシゲタとフクちゃんも45才と50才の熟年女性となった。

結婚が彼女たちの求めるハッピーだったのか。

安心して暮らしていける一生のパートナーと引き換えに自由に恋する心を捨てる事、それが正しいとか間違ってるかじゃなく、結婚てゆうのはそういう事だ。

やれやれそんな事は当たり前の事だ笑わせんなとフクちゃんが言う。

人生ノープランのシゲタと違いフクちゃんはビジョンをきちんと持っている。

彼女はいまや主婦業のかたわら始めた化粧品ブランドが大当たりして年商何億の女社長なのだ。

なのに、夫のヒデキには愛人がいて別居中なのだった。

フクちゃんのがずっと綺麗なのに、愛人はなんでか中年のおばさんっぽい。

共働きだから子供の面倒は妻が見ても家事は分担しなきゃやってけないよね。

そういう意味では自分はヒデキを夫としてちゃんと躾けた、と思っていた。

夫婦って、二人が同じ方向を向いてる時はいいけど違う方向を向くようになってしまえば駄目なのだ。

ヒデキはフクちゃんが会社を経営する苦労はよく理解していたが、妻としてはもっと労りや優しさがほしいなどと言う。

あなたおかえりなさい疲れたでしょお風呂わいてるわよお食事もできてるわよみたいな絵に描いたような尽くす女を演じる愛人にまんまと騙され、彼女の家に入り浸っている。

フクちゃんがつらいのは高校生になった一人息子までが愛人にてなずけられて夫と共にいる事だ。

シゲタはたとえ成功しても不幸の見本みたいな人生かなしーわねと手厳しいが、そんでも仕事が残るからいいさと思ってたのだ。

でもよくよく話したら離婚したがってるのはヒデキの方で、フクちゃんは夫も子供も失いたくないって言うじゃないか。

フクちゃんともあろう女が、悲しいのお。

フクちゃんはシゲタに、本当に失っていいのかをよく考えた方がいいよ、と助言する。

 

失いたくないけどやり直せない。

 

フクちゃんの場合は、妻が仕事が面白くなって自己実現に夢中で夫と子供が置き去りにされてしまったんだね。

 

シゲタの場合、タカハシは夫としては文句のつけようがないんだけど、シゲタの目にはつまらない男にしか映らない。

この夫婦は価値観が異なり過ぎて、どちらかが一方的に愛するだけ愛されるだけなのが問題だ。

夫の愛に胡坐をかいてシゲタもフクちゃんも自分中心に生きる事を最優先にし過ぎたのだろうか。

 

離婚したくないと思っているのは夫を本当に愛しているのか?生活を失いたくないだけなのか?と、シゲタは考える。

だけどフツーなら45才にもなれば分別ついてしっかりするのに、シゲタはちゃんと生きてこなかったから、なんだかよくわからないのだった。

 

かつて90年代を席巻したカッコイイ女二人が、今では年を取って夫から離婚を望まれてるなんて・・・人生の悲哀をコメディータッチで笑わせる。

素敵な恋をして結婚をしてハッピーを手に入れたはずだったのに、そもそも女性にとって本当に結婚=幸せなのかと問いかけてくる。

45才で専業主婦で子供なし、スキルなし、金なし。

シゲタのハッピーはどこにあるのか。