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大人の漫画読み

漫画/「人の息子」2 あのあやの

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(あのあやの「人の息子」2巻)

この作品は、31歳独身の漫画家・鈴木旭が児童養護施設で暮らす9才の高嶺くんの里親になる物語なのだが、作者が里親制度について丹念に調べて描いているのがとても好感が持てる。

それと高嶺くんが実にかわいらしく描けてて、どうにもいじらしくて胸が痛むのだ。

1巻の感想はコチラでございます。

 

www.akirainhope.com

 

だけどいくらかわいいからと言って、里親になろうとまではフツーは考えないよね。

二人はただの保育園の先生と園児だったというだけの間柄なのだ。

いい人を通り越して少々変わり者かと疑われる鈴木だが、ただカワイソー!ナントカしてやりたい!と感情に流されてるわけじゃない。

ボーっとしてるようでいてその実行力に驚かされるし、思った事はハッキリ口にするけど誠実で人としての謙虚さを持っとるんですよ。

しょせんは他人の心の痛みや悲しみなんてわかりっこないじゃないですか。

わかると言うのは傲慢ですよ。

お母さんと一緒に暮らしたいという、高嶺くんのまだ小さくて健気な魂を誰も救ってはやれないのが現状なんです。

せめて側で支えてやりたいって鈴木は思ってるわけなの。

 

行方不明になってしまった高嶺くんの居場所を慌てず騒がず探し当てたのは鈴木だったし、秋山さんの目には思わず抱き合った姿が実の親子のように映る。

あなたは誰といたいの?と秋山さんに聞かれた高嶺くんは「旭先生」と答えるのかと思いきや「お母さん」と答えた。

ううむそりゃあそうか。

こんなに母親を求めているというのに母親は何をしておるのかのお。

「お母さんと一緒に暮らしたい。でも無理だってわかってる」

高嶺くんのこの言葉は子供なのに諦観してましてね、5才で施設に入ってからこれまで希望と絶望を繰り返した挙句あきらめを覚えたのだよね。

そして鈴木が里親になろうとしてる事で旭先生に迷惑をかけたくないとも言うのである(ウッ!なんていい子なの)いい子すぎて不憫なんだよ。

そんな高嶺くんに「うれしかったら素直に喜ぼうよ」とアドバイスをする秋山さんは、早く彼が子供らしく振る舞える環境を作ってあげなくちゃと思うのだった。

 

きれいな顔して厳しい事をズバズバ言いやがって法律とか杓子定規の事ばっかで融通がきかないし子供の根本的な希望に対応するのが仕事でしょ!キイーッ!!と読んでてイラついた秋山さんだったが、鈴木を知るにつけ変化してきた。

「里親の事もよく知らんもんが思いつきでなりたいとか言い出しおって困るのよね~(あきれ顔)」から「この人はもしかしたら高嶺くんのいい里親になれるかも・・・」へと変わり鈴木に好意的になってきたのだ。

秋山さんは鈴木に里親認定研修を受けてみませんかと言い出す。

子育てを手伝える人物が近くにいないとダメだと言うから仙台の両親に上京してくれるよう頼んだもののまだ完全に説得しきれてないのに、それはまだ先で大丈夫だからまず研修と実習を受けたらどうかと提案されたのである。

これが、基礎研修と実習が1日ずつ、登録前研修とその実習が2日ずつ、家庭訪問とその調査が1日さらに施設での養育実習が10日間で合計17日間あるのだった。

あたしは意外と簡単になれるんだなーと思ったけど、まず働いている人がそれだけ会社を休むのは大変だよねー。鈴木も連載を抱えてるわけだし。

しかし鈴木は子供を預かるんだからそれくらい当然かと思い直し、一か月休載させてほしいと担当編集者に頼むのだった。

やるって決めたんだからと鈴木は意気込む。

担当もいい人で高嶺くんのためだからと快く応じてくれるのだが、これが後々大変な事となる。

 

鈴木は高嶺くんと一緒に水族館に出かけ(高嶺くんはサメが好きなのだ)鈴木が男の料理で握り飯をいっぱい作ってきたりして楽しい時を過ごすが、「俺と一緒に暮らしませんか?」などとプロポーズでもするように改めて申し込む。

売店で高嶺くんに誕生日プレゼント代わりに何か買ってやろうとしたらクラスの友達にお土産が買いたいと言う。

いつもお土産をもらうだけで一度もあげたことがないのを引け目に感じていたと聞いた鈴木は「どれにする?何個買う?」と気前良くなってしまい高嶺くんは戸惑う。

 

高嶺くんは戸惑うばかりである。

我々は施設で暮らす子は不幸に違いないと思い込んでるけど、それでもそこにはその子が置かれた場所で懸命に生きて構築した世界があるんだよね。

高嶺くんは明るくて利発だから友達も多いし、鈴木と暮らす事になれば転校しなければならないわけで、大人の都合に振り回されるのは仕方ないんだけどかわいそう。

 

そんなこんなで、連載を休んで研修に行ったり、秋山さんの上司である児童相談所の所長が「あなたが特別なことをしようとしてるから私も特別に来たんですよ」と抜き打ちで自宅に面接に来たり、里親制度は基本的に委託される子は選べないと言われたり、でもそういう前例だってあると秋山さんが食い下がり所長を説得してくれたり、次は審議会で所長が説得してくれたり、鈴木の家族と高嶺くんの交流があったりなんかして、めでたく里親に認定されたのであった。

まあ色々とやる事はあったけど、里親になるのはそれほど難しい事ではないんだなという印象だ。

 

ところが念願かなって高嶺くんと一緒に暮らし始めたものの、高嶺くんはあまりうれしそうじゃないのだ。

高嶺くんは戸惑っているのである。

施設の生活との違いや、自分が鈴木に迷惑をかけてるんじゃないかという不安で。

鈴木が連載を休んだ事を知って自分が悪いせいだとショックを受けてしまう。

まだ子供だからそんな気持ちのモヤモヤをうまく言葉で説明できないのよ。

鈴木が高嶺くんのために何か買ってやったり何かしてやるたびに心が重くなっちゃう。

鈴木は鈴木でどうして喜んでくれないんだろうと思う。

 

他人が親子になる事がそう簡単にはいかないとわかってはいたけど先が思いやられる。

でも実の親だから愛情深く育てられるとは限らないもの。

鈴木と過ごした楽しい思い出や愛された経験が、高嶺くんが生きて行く糧になるはずだよきっと。