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大人の漫画読み

漫画/「北北西に曇と往け」入江亜季

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(入江亜季「北北西に曇と往け」既刊4巻)

この作品の舞台はアイスランドである。

北欧のアイスランドは小さな島国で、その面積は北海道と四国を合わせた程度しかない。

火山と氷河の島と言われるアイスランドには土がなくそのほとんどが溶岩で植物も少ない。

苔やシダや草しか生えない溶岩の大地には米はもちろん麦も野菜も育たないのだ。

それだけに他の国とは異なる、実に変化に富んだ大自然に溢れているのである。

思い出してみ、「ゲームオブスローンズ」のあの絶景を。

活発に活動する火山、国土の10%を占めるヨーロッパ最大級の氷河やフィヨルド、世界最大の露天温泉ブルーラグーン、50メートルの高さにも到達するゴールデンサークルの間欠泉、国のあちこちで見られる滝、二つの大陸プレートによってできた地球の割れ目ギャオ、首都のレイクキャビでも見られるオーロラ。こんな小さな国なのにスケールは地球規模。見所は限りなし。

ウーム世界は広いんだなあ。この作品はちっとも知らなかった知らなすぎたアイスランドのすばらしい美しい風景で溢れている。

夏の白夜、冬のオーロラ。

行ってみたいなあ。

これを読んだら絶対アイスランドに行ってみたくなるって。

 

そんな「北北西に曇と往け」でございますが 、主人公は御山慧(ケイ)という17才の男の子で探偵である。

若き探偵とアイスランドの大自然。それだけでもう絵になるのだが、実は彼には車や電化製品などと話ができるというヒミツの特殊能力がありましてね、愛車のスズキのジムニー(かなりオンボロ)と会話しながら荒野を走行するシーンは心惹かれるものがあって、おおロードムービーみたいな?キノの旅的な?などと最初は思ったのだが、彼は祖父の家に居候している身の上で探偵は生活費を稼ぐよりも退屈しのぎなのだった。

だが大人びて見える彼がなぜ学校にも行かず探偵業のような事をしているのか。なぜアイスランドで祖父のジャック(フランス人)と二人だけで暮らしているのか。

疑問がいろいろ湧いてくるわけなんですが、そういう設定だと読み流してしまえばいいのだろか悩む。

ケイは17才の少年にはとても見えない非常にクールで物怖じしない態度と振る舞いで「それはあんたには関係ない」とか「めんどくせ」つって、作中で何も話さないのである。

だが時折挟まれる独白は文学的で人生や自然への畏怖を感じさせる。

人って大自然の中では感傷的になってしまうのかもしれん。

 

ケイの仕事ときたら、別居中の夫から犬を取り返してとか、ひとめ惚れの相手を探してほしいとかで、その相手っつーのが祖父のジャックだったりしましてね、おじいちゃんなかなかお盛んなんですのよ。なんせフランス人だし。

だけどケイってば、カッコいいしモテるでしょうに女の子とつきあった事もないってんだ。

そんなケイにジャックは「ケイ、一人で生きるなよ」と言うんですが、これがまた思わせ振りでして、やっぱケイには何かあるんじゃないかと思っちゃう。

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(入江亜季「北北西に曇と往け」1巻より)

しかしまあ「ケイは無愛想だがそれは火山にかぶさった氷河みたいなもので本当は優しくて暑苦しい子だ」とジャックが言うように、彼がまだ成長過程の若者である事が読んでるうちにわかって来てちょっと(´∀`*)ウフフとなる。

まず大の肉好きで、羊のバーベキューに招かれた場面は圧巻だった。

アイスランドには人間より羊のほうが多くて、広い大地で悠々と野性のハーブや苔を食べて育つから肉が柔らかくてうまいんですと。

大地の恵みのような羊をすごい食欲で無心に食べるケイの姿は17才の男の子で、「さっきから肉しか食ってないじゃないか!野菜も食べろ!」というジャックの言葉も聞かない。

また、日本からやって来た親友にアイスランドを案内した時も少年らしい可愛げや優しさが垣間見えるし、リリアという女の子とのやり取りはまるで中学生である。

ケイを巡る様々な人物が描かれるが、みんなが彼を愛している事が感じられるのだ。

 

ところがですよ!ケイの弟・未知嵩(ミチタカ)が登場するや一気に面白くいや不穏な空気になる。

未知嵩が日本で一緒に暮らしていた叔父夫婦を殺害したと、日本から未知嵩を追って来た刑事が言うのである。

まさか弟は人殺しなのか。

にわかには信じ難いけど、未知嵩は金髪で天使のような美しい容姿の少年でして、彼はこれまでにも何人もの人を殺していると言うのである。

学校でも問題を起こしていたし、彼を知る人から話を聞こうとするととても怯えているのである。

ケイは小さい頃、ゲーム機でも掃除機でもなんでも分解するのが大好きな子で、中に何があるんだろうという探求心からだったのだが、彼がたどり着いた答えというのが、「なんにでも外側と内側がある」つまり人間というものは外面と内面とは全く違うのだという冷静でリアリスティックなものだった。 

ヤバイ弟の登場でサスペンス感が盛り上がり、がぜん面白くなってくる。

なのに難を言わせてもらえば、急に関係ない話になるんであれえ前回の話の続きじゃないのか!?と肩透かしを食うというか話がブツ切りになる印象で、未知嵩どうなったの??と気がかりな部分が全然進まないのでちょっと困った。

 

それにつけても大量のサンドイッチとか羊肉のバーベキューとか、小生あんまり肉は好きじゃないのだけど、ケイがヒジョーにうまそうに食べるもんだからうまそうに見えちゃう。

若い人がいっぱい食べるのは良いよね。

総じて出てくる料理がうまそうなのである。

アイスランドの水は世界で最もきれいでおいしい水と言われており、水道水そのものが天然水なのでミネラルウォーターを購入する人はほとんどないそうだ。

そんなうまい水で入れたアウトドアで飲むコーヒーも格別に見える。

 

あの島は今頃もっと寒いだろうか

風はもっと強いだろうか

 

旅情をそそるねえ

行ってみたいのお