akのもろもろの話

大人の漫画読み

漫画/「10ダンス」井上佐藤

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(井上佐藤「10ダンス」既刊6巻)

競技ダンスにはスタンダードとラテンがあって、通常この2種類のダンサーは決して競い合う事はない。

しかし例外があるらしい。それが10(テン)ダンス。

なんでもラテンとスタンダードを極めた凄ダンサーがラテン5種目とスタンダード5種目の合計10種目を競い合うという、肉体的にも精神的にも非常に苛酷な大会なんだそうで。

見た目はゴージャスだけどまるで競技ダンスのトライアスロンだとか。

 

そんな10ダンスに出場しないかと、ラテンの日本チャンピオン・鈴木信也は、スタンダードの日本チャンピオン・杉木信也から誘われちゃう。

この二人、名前が一文字違い。

でもダンスのスタイルも見た目も性格もまったく対照的でして。

杉木信也はイギリス三大大会を7連覇しているスタンダードの帝王とも呼ばれる超有名人である。

一方の鈴木信也は国内チャンピオンでしかなく海外では無名で、杉木とは格段の差があるわけよ。

俺コイツ大っ嫌い!なんか腹立つう!つって、鈴木はその場で断わってしまうがなぜか杉木はあきらめなかった。

あーだこーだと負けず嫌いを刺激され、売り言葉に買い言葉で10ダンスに出場する事になってしまうんだよね。

これは杉木にうまく乗せられちゃったね。

 

杉木も鈴木も既に一流のダンサーだから、普段は自分のダンススクールを構えて生徒を教えている。

それで練習は杉木の教室で生徒たちがいなくなった夜11時から、杉木はスタンダードを鈴木はラテンをお互いの専門分野を教え合う事になった。

ペアを組む杉木のパートナー・房子と鈴木のパートナー・アキも一緒だ。

しかし、陽気なキューバ育ちで楽器が鳴るだけで体が動き出すような鈴木にとって、お堅いスタンダードの練習は困難を極める。

杉木の指導も厳格すぎて、音楽もなくカウントだけでステップを踏まされ、スタンダードの3拍子になかなか体が馴染めず思うように動けなかった。

女性陣が先に帰った後も、なんとなく二人は深夜まで練習するようになる。

畑違いのスタンダードに苦戦する鈴木は、アキからも迷惑になるからもうやめようと言われ辞退した方がいいのか悩む。

ところがところが鈴木ったら音楽をかけて楽しくないと踊れない人だったのよ~ラテン男だけに。

それに気づいた杉木が音楽を流すと、途端に鈴木の体は動き出し見事に踊り出すっつーね。なんつーか、生まれながらのダンサーなんだよね。

杉木は自分の後を追いかけて来た鈴木にこんな事を言う。

間違ってなかった

やっぱりあなたは僕の憧れ・・・

 

さんざん悩んだあの期間は何だったんだろうと思うほど練習は順調に進むようになり、鈴木の目には杉木が変わったように思えた。

いや変わったのは自分なのか。

世界戦で踊る杉木を見た鈴木は自分も同じ舞台に立ちたいと考えるようになる。

互いに相手のダンスを認める事で二人の距離はどんどん縮まってゆく。

それと共に不思議な感情も芽生えてゆくのだった。

 

とまあそんな粗筋でございますが、作中とにかく杉木と鈴木の男二人のダンスシーンが盛り沢山。

二人は名前だけでなく身長や体格もシンクロするくらい同じで、まるでもう一人の自分がいるのではと錯覚しそうになるほどでして、女性だと体力的にやっぱ違うけども、天才的な男同士だから相手も自分と同じように動けるじゃん。

かつてない一体感でもう楽しくって仕方ない。

二人で踊る事に喜びを見いだしていくダンスシーンが圧倒的なのよ。

まるで二人の魂が輝くようで、しかもラブシーンに匹敵するようなセクシーさ。

男二人のダンスつーのは、昔からセックスと同義ではないだろか。

シチュエーションも素晴らしくて、室内にとどまらず杉木のダンス教室がある深夜の銀座や、雪が散らつく公園で踊ったりと非常にロマンチック。

踊った興奮が冷めやらず思わずキスしてしまうBL展開もなんか許せる気がするのは必然性を感じるからで、一流のダンサー同士魅かれあってしまうのはわかる。

 

しかしながらこの作品はBLの枠を超えた本格的なダンス漫画だ。

杉木は世界選手権だけはいつも勝てず2位。

それは業界の大人の事情なんだけど、たとえ出来レースとわかっていても腐らず正々堂々と1位を取りに臨む杉木はたとえようもないほど強い。

そんな杉木でも引退を考えた事もあり、彼を熱くしたのはキューバの血で自由に踊る鈴木だったのだ。

鈴木の才能に惚れこんでいる杉木は彼を世界に出そうとしている。

でも「僕についてくれば世界に行けるよ」なんて甘い言葉は言わない。

まるで暴れ馬を調教するように鈴木を導いていくけど、あくまで二人は対等だ。

 

きらびやかなダンス競技会もいいけど、内幕的な描写も面白いんだよね。

海外から大金を出して招待選手を呼んでるんだから日本人選手は1位になれない、みたいのは実際にありそう。

これまでは日本一以上は目指さなかった鈴木が杉木に触発されて競技会で本気を出す。

すると審査員はあんなダンスをする奴を落としていいのか?と悩み出したり。

無駄のない美しい鍛えられた肉体が見せる圧巻のダンスは見る者の心を奪う。

あたしは1巻で鈴木が半裸で自分の体にマジックで線を描いて「これがエイトロールだ」とかいいながらラテンのリズムの取り方を見せるシーンが好きなんだけど。

房子が「魅惑の腰つきでした♡」って喜んでたけど、女性陣も可愛くてよいよ。