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大人の漫画読み

漫画/「ダーウィン事変」うめざわしゅん

 

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(うめざわしゅん「ダーウィン事変」既刊2巻)

主人公のチャーリーはヒトとチンパンジーの間に生まれた「ヒューマンジー」である。

ヒューマンジーなどという言葉はてっきりこの作者の造語かと思ってたら、あに図らんや既存の言葉として存在しておりました。

なんつーか、ヒューマンジーを誕生させることにどんなメリットがあるのか知らないが、科学の世界ではそういう試みが行われたこともあるらしい。

かつて日本にもやって来た事があるオリバー君という有名なヒューマンジーもいたらしい。(でもオリバー君は後の遺伝子検査で正真正銘のチンパンジーである事が証明されたらしい)

らしいらしいで曖昧な文章をお漏らしするだけで何が書きたかったのかわからなくなっちゃった。すみません。チャーリーです。

チャーリーは15年前、ヴィーガンテロリスト集団「動物解放同盟(ALA)」が動物実験を行っている生物科学研究所を襲撃した時に保護した妊娠中のチンパンジーから生まれた、半分ヒトで半分チンパンジーのヒューマンジーだ。

彼はチンパンジー研究の権威であるバートとハンナ夫妻に引き取られて養育されミズーリ州で暮らしていた。

15歳になったチャーリーはなんと高校へ編入するのだが、生徒たちはもうヒューマンジーが来たっつって大騒ぎ。

けっこう可愛いじゃん♡と言う人から、何されるかわからないよ~と不安視する人もいるがまずは物珍しさでいっぱい。

チャーリーはサルよりも人間に近い、サルっぽい少年に描かれてましてね、温厚で礼儀正しく知的である。

だがALAがニューヨークで爆破テロを起こした事により、チャーリーはALAとの関係を取り沙汰されるようになり彼の学校生活に暗雲が立ち込めてく。

そもそもチャーリーが学校へ通うのには理由があって、彼を育てたバートとハンナがチャーリーのために計画したヒューマンジーの権利を得る目的だ。

チャーリーが人間と同じ知性と感情を持つだけでなく、社会でも人間とより良い協力関係を築く事ができると証明するために学校に通い実績を作ったら、いずれは国を相手取って訴訟を起こし裁判でアメリカ市民権を勝ち取ろうというのである。

つまりこの養父母や学校で唯一仲良くなった人間の女の子のルーシーは、チャーリーをヒトとして見ているのだが、大方の人間や法的にはサルじゃねえかって認知なのよね。

しかもやばいテロリスト集団ALAは、チャーリーを自分たちのリーダーとして引っ張りだそうと暗躍する。

 

そこで本日のお勉強~ヴィーガニズムとは

 

ヴィーガニズムは、人間ができる限り動物を搾取することなく生きるべきであるという主義。英国にあるVegan Societyの定義によるとヴィーガニズムとは、「衣食他全ての目的において(実践不可能ではない限り)いかなる方法による動物からの搾取及び動物への残酷な行為の排斥に努める哲学と生き方を言う。 (wikipediaより)

 

この漫画を読む前にヴィーガンと呼ばれる人たちの事をちっとばかしお勉強しといた方がよいだろうと思う。

日本ではまだヴィーガン人口は少ないが、海外では増加してるみたいだぞ。

みんながレストランで美味しく食事を楽しんでる時に、「あなたたちが今食べている肉は牛の命を奪ったものだ!!」とか叫び出し死骸写真を見せたりして客をドン引きさせる動画ならあたしも見たことある。

まあそんなの一部の人だとは思うけど、ヴィーガンはただの菜食主義者ではない。

菜食主義者は肉や魚を食べないがヴィーガンは卵や乳製品なども食べずよりストイックなのだが、単に健康にいいからとかではないんだよね。

たとえば畜産業は動物への残虐行為であり動物を搾取している事だと主張し、道徳的側面から人間は動物を利用せずに生きるべきだという一種の理想主義者だ。

その理想は自分たちだけで実践していれば何も問題ないが、一部のヴィーガンは自分たちこそが正しい、それ以外は悪だと決めつけてしまって、実際フランスではヴィーガンが肉屋を襲撃する事件も起きている。

この連中はテロリストではないだろうが、自分の思想や主義主張を暴力で訴えようとする姿勢は事実上テロリストと同じだと思うよ。

 

そして作中に登場するALAは過激で暴力的で実にコワイ集団だ。

なぜ人間だけが特別なのか?

皮を剥がされ生きたまま吊られて殺されるためだけに生み出される動物が憐れではないか。

自分たちは人間だけに特権がある事は捨て去り、すべての動物の平等な権利のために闘う。

世界を変えたいなら生ぬるい事をしていてはダメだ。相手の頬っつらを張って覚醒させるしかない。

なんかいい事言ってるようなのに方向性が間違っとるよ。

ALAはヒトと動物のハイブリッドであるチャーリーこそが声なき動物たちの代弁者だと、ヒトとヒト以外の動物の真の架け橋となる存在だと執拗に狙ってくる。

周囲の人間からチャーリーが孤立するように画策する。

 ルーシーはそんなチャーリーに友達を作ろうと奮闘するがうまくいかない。

でも差別やいじめなんてものはチャーリーにとっては屁のようなもので「学校で友達ができないと人間の社会に適応できないの? 」と一顧だにしない。

「ぼくは友達はルーシーだけでいいよ」と少しも気にとめないチャーリーのなんだか澄んだ瞳がいいんですよね。

そして素晴らしい洞察力で、人間や人間の社会や人間の抱えるあらゆる問題を見ている非常に賢い存在として描かれております。

でもね、通常のチンパンジー以上の怪力と人間以上の知性を兼ね備えたチャーリーは、本当にただテロリストと戦うだけのヒーローなのだろか。

そこはまだ2巻しか出てないのでなんとも言えないけど、チャーリーの澄み切った瞳を見ているときっとなんか面白い展開になるんじゃないかなって思ってしまうあたしがいるのだ。