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大人の漫画読み

映画/「燃えよ剣」

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(「燃えよ剣」原田眞人監督/148分/2021年)

映画「燃えよ剣」やっと見ちゃったぜ。

言わずと知れた新選組の土方歳三を描いた作品だ。

コロナのせいで公開が遅れて、いつ見れるんだろうとずっと待ってたから待望の作品だったのよ。

この映画の原作は昭和30年代に発表された司馬遼太郎先生の同名小説だ。

確か初めて読んだのは中学の時だったと思うけど、その頃は土方歳三より沖田総司が好きだったんだよね~

10代は沖田なんだよ。たぶん。

大人になるにつれて、土方の生き方をかっこよく思うようになった。

そう考えると、あたしの人生の傍らには常に「燃えよ剣」があったような気がしてくるぞ。

司馬作品には他に「新選組血風録」という短編集もあって、こちらは新選組に実在した人物や架空の人物を主人公にした群像劇になっている。

新選組に巻き起こるドラマに定番キャラである土方や沖田が絡んでくる構成だ。

どちらも面白い。

 

映画はバラガキ(乱暴者のこと。茨は触ると刺さることから下手に触れると怪我をするぜみたいな。今ならやんちゃが近いかな)と呼ばれた武州多摩時代から京へ上り新選組を結成し戊辰戦争が起こり函館で戦死するまでが描かれている。

土方歳三(岡田准一)の生涯は短い。

江戸から京の都へ上ったのは1863年(文久3年)で、亡くなったのは1869年(明治2年)35才位だ。

新選組が京都で活躍した期間はそれほど長くないのだ。

 

土方は徹底的にやった。

幕府がなくなり新選組が消滅したって、近藤勇(鈴木亮平)が流山で処刑されたって、沖田総司(山田涼介)が結核で死んだって、宇都宮、会津、最後は蝦夷まで転戦し徹底的にやったんだ。

すごいのお。漢だ。

北海道は寒いよ~

そこまで行く根性がエライと思うよ。

人間イケイケの上り坂にある時は誰でも勢いに乗って調子こくんだよ。

でもひとたび落ち目になると、ああ俺はもうダメなんだってなっちゃう。

ところが、なかには逆境に立たされると、なにくそって自分の本領を通常以上に発揮しちゃう人がいるんだよね。たまに。

土方ってそういう人だと思うのよ。

その強さの原理はやっぱ意地だと思う。

意地によって生きるってのは一種の美意識だ。

 

新選組は藩とは違う。

主君もいないし烏合の衆だ。

それをまとまるために考え出された新選組の厳しい隊規、局中法度。

一、士道に背くまじき事

背いた者は切腹という凄まじい規律を土方は作り上げる。

だが芹沢鴨(伊藤英明)から「士道というのは主君があってのものだ。じゃ新選組の主君は誰だ!?」と大酒飲みながら議論をふっかけられる。てか、鴨カッコ良すぎ。

「主君は士道です」と言うしかない近藤さん馬鹿の一つ覚え。

これだから百姓上がりはと侮蔑される。

近藤も土方も出自は百姓だから、馬鹿にされるくやしい。

 

新選組という組織を作ったのも、それを鉄壁の局中法度により維持したのも土方である。

土方は合理的な考えを持ち、鳥羽伏見で敗戦したあとは洋式兵法を取り入れ着物はやめて洋装にした。

歴史は新選組を生んだけど、新選組が歴史に果たした役割はない、という人がいる。

でも歴史にどんな寄与をしたかなんて問題じゃない。

歴史は人の生き様と死に様でできてるんだから、人の情熱とゆうものが素晴らしいんだ。

土方は激しく時流に抵抗した。

葛藤はあったろうけど、ブレはない。

 

沖田が病床から聞く。

「これからどうなるのでしょうか?」と。

土方曰く、

「どうなる?とは男の言う事じゃない。男はどうなるじゃなくてどうすべきか考えるんだ」

 

これからだぜ。

戦う地がある限り戦い続けるぜ。

俺ぁやるぜ。(歳三心の声)

 

新選組が人気者になったのは司馬遼太郎の「燃えよ剣」がきっかけらしい。

特にあの、沖田ね。

純粋無垢で明るくて屈託のない笑顔とか、透明感のある美形だけど子供好きとか、病弱だけど天才剣士みたいな。

沖田といえば高確率なこの造形は、燃えよ剣で司馬遼太郎が作ったものだそうだ。

エルフといえばほっそりして美しくて耳がとがってて、ドワーフはずんぐりむっくり筋肉質とかの、今あるファンタジーものの造形の元ネタが「ロード・オブ・ザ・リング」にあるのと同じ。

沖田には暗殺者が持つ暗さがまったくないと、どこかで司馬先生が書いておられた気がするが、飄々として明るくいつも土方に軽口をたたき、泣く子もだまる鬼の副長をからかうのだ。

土方は「黙れ総司」とか怒ったりしながらも、こいつにはかなわねーって感じで沖田には甘くなってしまう。

まあ沖田の役はいつの時代もアイドル級の俳優が演じてるから山田くんでもよいけど。

一番隊組長っていうのはやっぱ切り込み隊長なのかな。

原作にはないけど、新選組が伏見へ行くので恋人と別れるシーンがあったけど、何も言わずに百両ほど渡すシーンよかった。

史実には残ってなくとも、こういうこともあったかなあ。

あったかもしれんなあ。しみじみ。

土方が近藤さんと別れる所もよかった。

これは原作でも胸が一杯になってしまう場面だ。

でもあれへんなダンスはなんだったの??

座頭市の下駄タップかと思った。

主役の岡田准一はよかった。

土方さんにしか見えない。

てか、「関ヶ原」の時も三成にしか見えなかったし、どうなっちゃってるのあの人。

殺陣とかかっこいいし、乗馬もうまい。

「新選組副長が参謀府に用がありとすれば、斬り込みに行くだけよ」

ラストの決めセリフも良し!(ちょっとなまってた?)

この後死なずに北海道でアイヌの金塊探すんだよね。

原作面白いです