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大人の漫画読み

漫画/「ひとりでしにたい」④ カレー沢薫

悠々自適の老後を過ごしていたはずの伯母のまさかの孤独死に衝撃を受けた山口鳴海(35才独身)は、自分の老後を真剣に考え始める。大事なのは婚活より終活だったんだ!!

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(カレー沢薫「ひとりでしにたい」第4巻)

毎回面白くてためになるけど今回は投資と保険の話です

老後は誰にでもやってくるわけですが、若いうちから老後の心配などしてる人はあまりいないよね。

でもこの漫画を読むと、今の時代は終活っつーものは若いうちからやっておくべきなんだって思うんですよ。

老後破産とか貧困老人にはなりたくないから早くから自分の老後をきちんと考えて人生の最終ステージを豊かにしよう、というね。この絵柄からは考えられない(スミマセン)堅実で真面目な内容にとても勉強になりますわ。

また、主人公の鳴海を導く終活マスター・那須田くんを見てると、今の若い人たちが置かれている状況の深刻さなども伝わって来て考えさせられます。

 

さてなんとなく概要を書いておきますと、鳴海ったら己れの終活の前に親が終活しなくちゃならない現実に気づいたわけですよ。

でもさ、大手企業を定年退職して暇を持て余してる昭和の頑固オヤジは娘の話なんかはなっから聞く耳を持たないし、長年専業主婦だったお母さんはなんでかヒップホップにハマってて、どうやら熟年離婚を考えてるらしいのです。

そこへお父さんが投資をやるなどと言い出したからアラアラ大変てなわけで、那須田くんと共に実家へ急行します。

なぜなら那須田くんいわく、相手は無駄に張り切ってる暇な老人だからやると決めた瞬間にはやり終わってるから早く行って制止せねばと。

まそんなわけで、銀行がお父さんに勧める投資信託の落とし穴(手数料がかかる・リスクが高いなど)を那須田くんが指摘する事で話は流れるんですが、問題は投資をする事が間違いなのではなく、自分は勉強もせず知識もないのにプロに任せればいいやというその姿勢。

お父さんのようなひとを情弱と言いますな。

情報弱者の略です。

インターネットが普及した現代では誰でも気軽に様々な情報を得られますが、その一方で満足にアクセスできない人や情報を十分に活用できない人もいます。

高度情報化社会では得られる情報の量や質の差が社会的・経済的格差をも生み出すのです。

情弱な老人はこの社会では食い物にされてしまうのだ。

けどお父さんにだって言い分はあったのよ。

スマホで投資について勉強しようとしたけど文字が小さくて拡大しても全然頭に入らない。読んでもすぐ忘れる(なんかわかるわ~)だーかーらー「わかってるヤツに任せた方が早い」と丸投げになってしまったんだって。

悲しいかな年を取れば絶対に体も心も衰えるのに老いを自覚出来てない、意識だけがハンパに衰えないご高齢の方おりますやん。

そういう人って自分の判断力や理解力が衰えてる自覚がないから、間違いを指摘されると怒り出したりするんだよね。困るのお。

ともかく那須田くんによると、投資による資産運用は高齢者には勧められないって事ですが、さらに金よりも大事な資産があると言います。

当たり前すぎるけど健康です。(当たり前すぎるなあ)今の高齢者は金は持ってるから、喉から手が出るほど欲しいのは健康だろね。

いくら節約が大事だからって食費や医療費をケチったら健康を害すかもしれんし、交際費を減らすために人との交流を断てば孤立して認知症になっちゃうかもしれん。

ここでお母さんが語るヒップホップ教室の仲間ノムネムさんの話がいいんです。

いつも同じニット帽でヨレヨレのパーカーを着た野村さんというおじいちゃん。苦しい生活の中無理して通っているらしく皆の輪には入らないのですが、ダンスだけは誰よりもキレキレで先生からも一目置かれていましてね、でもある日から来なくなってしまったのです。生活に困って支援する所へ相談に行ったら「ダンスをやめれば?」と言われたからです。そりゃあフツーに考えれば、ダンスなんて無駄使い。でも野村さんにとっては食べるのを我慢してでも月謝を捻出して踊ってた。だからもはや生きがい。大事な物は人それぞれ、ダンスをやめたら希望がない♪(韻を踏んでみました)

生活保護はただ金がもらえるだけではなく、様々な制約を受けるため今までと同じ生活を送る事ができなくなります。

それが人間の尊厳を奪い生きる気力がなくなるなら結局は孤独死してしまう。

いくつになっても人間に必要なのは生きがいなんですよね。

この作品は孤独死から始まり老後に発生する可能性のある様々なリスクを取り上げてて、それはもう深刻なヤバさであたしなんて不安しかありません。

実際のところ解決の見いだせない問題も人によってはあると思いますし。

とは言え未来は暗いだけなのかと思えば必ずしもそうではなく、人が生きる気力が大事なんだと語っています。

iDeKoとかNISAとかにも触れてて、自分も情弱にならないようにしなければと思いました。

また元カレに勧められて加入した昔の保険を見直したりとやるべき事を教えてくれます。

鳴海と那須田くんの恋愛模様は、那須田くんはともかく鳴海の方はまったく眼中にないみたいで、だからこそ面白いんで、とかく異性を意識し出すと面白さが半減しちゃうからまあこれでいいんじゃないかな。

ただちょっと作画は・・・ぶっちゃけ絵よりもストーリー重視と期待もしてないのですが、今巻は雑さが目立ちましてちょっとアレです。仕事忙しいんか。