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大人の漫画読み

映画/「レボリューショナリー・ロード/ 燃え尽きるまで」

レオナルド・ディカプリオケイト・ウィンスレット主演の2009年公開の映画ある夫婦の夢や葛藤を描いた人間ドラマ。

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(「レボリューショナリーロード/燃え尽きるまで」/サム・メンデス監督/125分/2008年/アメリカ)

結婚が幻想だと気づいた時

あたくし最近ネットフリックスでちょっと懐かしい「レボリューショナリー・ロード/ 燃え尽きるまで」を見たのです。

当時「タイタニック」コンビの再共演が話題になりました。

ディカプリオの映画はほとんど見てるのでその時も観に行ったんですが、なんかラブ・ロマンスだと思って観に行っちゃったらとんでもねぇ、震えあがるようなおっかない夫婦喧嘩の話でしたね。

でもあたしときたら、ついついディカプリオに甘くてですね、ディカプリオ演じる夫フランク目線で観てしまって、ディカプリオがかわいそう!ケイト・ウィンスレットはわがまま過ぎるんでは!?ムキーッ!!とか思ってましてね、あたしも若かったですわ(遠い目)

でも今回改めて観ましたら、アラこんな話だったかしらと思うほど、依然とはまったく違う感想を持ちましたので、なんとなく書き残しておきます。

ちなみにレボリューショナリー・ロードというのは、主人公夫婦の家が建っている通りの名前なのです。

ホントに燃え尽きちゃったわねえ。と思ったりして。

 

舞台は50年代のアメリカでして、郊外の一戸建てに暮らすフランクエイプリルのウィーラー夫妻は他人の目には理想的な夫婦に見えるんですが、本当は互いに閉塞感を感じながら生活しているのです。

それを打開すべく、二人は家を売ってパリへ移住する計画を立てるのですが、フランクは生活のためにイヤイヤやってた仕事のはずが、なんでか突然の昇進。

よもやまさかのエイプリルの妊娠も発覚し、この計画は流れてしまいます。

それまで口論が絶えなかった二人は、パリ移住計画が進行中は結婚前のようなラブラブムードに戻りエイプリルも幸せそうだったんですが、再び激しくも恐ろしい夫婦喧嘩勃発。二人の溝はどんどん深くなってしまうのです。

 

とまあ、ざっとこんなあらすじなのですが、まずこれを見たら独身者は結婚したくなくなりますわ絶対。

わたくし今回はエイプリル目線で観てまして、彼女の気持ちを代弁すると、「独身だった頃はよかったのお~お互いに夢を持って輝いていたのに、結婚して現実の生活に追われてたらつまらない人生になってしまったわい・・・」だと思うんです。

50年代でも現代でも、結婚生活へ閉塞感を感じるのは普遍的な事なんですのお。

出会って恋に落ちた時の二人は、この世のすべてを感じて、すべてを見て、真実を見出したい、などという価値観を共有してたし、本音で語り合い向き合っていたのです。

エイプリルは女優になる夢を持っていましたし、二人の未来は輝かしいものでした。

でもどうでしょう。結婚して二人の子供に恵まれ専業主婦となった妻と、自家用車と電車を乗り継いで都会の会社に通勤する夫となった今、夫婦生活はマンネリ化しすぐに喧嘩になってしまいます。

いくら素敵なご夫婦とうらやましがられたって、内心ではそんなもん唾を吐きかけてやりたい位なのです。

それはそうとエイプリルは、二人でやり直すため家を売りパリへ移住しようフランクに提案するんですが、なんかホント突然思いついちゃったみたいで唐突です。

その計画も、パリエイプリルが働き、その間フランクは本を読んだり自分が真にやりたい事を探す、というものなんです。(うーん???)

フランクもこの計画に乗り気になり、二人は夢と希望のために人生の大きな賭けに出ようと決意します。

すると二人は今までの虚しい生活が嘘みたいに楽しくなって来て、また昔のように素直な気持ちで互いに心を通じ合う事ができるようになったのです。

ただこんなテキトーなパリ移住計画、周りの人は打ち明けられてもみんな口あんぐりでキョトン顔でしたが。

 

もうとにかく二人の喧嘩が凄まじいんで、激しい夫婦喧嘩が見所っちゃ見所なんですが、あれじゃエイプリルの心が壊れてしまうのもわかります。

彼女は自身の妊娠を自分の夢を阻むものとして嫌悪してしまい、昇進すれば給料もアップするからと現状維持を望み始めたフランクにも失望し苛立ちます。

以前はフランクエイプリルに振り回されてるように見えて、「エイプリルさっきのは本心じゃないっ、話し合おう」つってんじゃん。外に逃げても心配して追っかけてくるし優しい夫じゃん。などと思いましたし「あなたを愛してない!あたしに指一本でも触れたら叫ぶから!」本当にギャーッと叫ぶんでフランクの泣きそうな顔が不憫でしたが、今回はフランクが正論で妻を言い負かそうとしてるのが気になりました。まあどっちもどっちなんですけどね。

フランクったら「この喧嘩には四つの問題点がある!一つ、なんたら!二つ、どうたら!」って自分が正しい事を主張して喧嘩を収めようとするっていうね、男性ってすぐに結論を出したがるのな。

あたしも経験あるんですけど、ああいう修羅場になると言わんでもいい事まで言っちゃうんですよね。

普段はこれだけは人として言ったらいかんと心に閉まっているものでも、怒りのあまり相手への憎悪がわきあがって、相手をもっともっと傷つけたくなってしまう。

それはまさに暴走する言葉の凶器なんです。こわいよねー。

もう二人が演技が上手いからなおさらコワい。

 

でもね、そもそもこの二人にどんな夢があったのかしら?

特にエイプリルですけど、昔持っていた女優の夢など自分には才能がないととうに捨ててますよね。

50年代のアメリカでは郊外に一戸建てを持つ専業主婦が憧れの的だったという話ですが、実際は掃除して洗濯して料理して買い物して子供の世話して一日が終ってしまう。

家族は愛しているけれど、そこに女性の自己実現の場はありません。

家庭が男性にとっての居心地の良い場所であるほど、妻の不満は夫には理解されません。

結局のところ、エイプリルパリフランクの夢を支える事で自身も夢を見ようとしていたのではないでしょうか。

夢などないのに夢を見ようとした結果、家庭は幻想でしかない事に気づき、もう後には孤独しか残らなかったと感じました。

しかしながら彼女の苦悩が、今のあたしにはなんだかとてもよくわかり、ラストでの彼女の選択を批判する気にはなりません。

大多数の人が理想と現実のギャップに気づくと理想を捨ててしまう道を選ぶものですが、物質的に豊かでさえあれば人生は幸せなのでしょうか。

夢を捨てて生きる事が本当に正しい事なのか、人の生き方の本質を問うているような気がした次第です。