週刊ヤングジャンプでの連載が完結しまして、今全話を無料配信してるんですが、ゴールデンカムイはコミックス派を貫こうと思って見てないです。
加えて実写映画化やらゴールデンカムイ展の開催やらと、話題に事欠きませんな。
実写化はどうかと思うんですけど、ゴールデンカムイ展ちょっと行ってみたい。と思ったり。
まそんなわけで、オレ的にはまだ完結してないこの漫画、前巻ではついに解読された暗号。
金塊の在り処は函館の五稜郭だったし、五稜郭と言えば土方歳三の最後の地だし(なんかうまい設定)暗号解読に成功した鶴見中尉たち第七師団も速攻向かってるというね、もおうかうかしてられない有様。
開始早々なんですが、函館グルメといえばイカ。
イカ漁は明治時代から盛んだったんですね。
今は温暖化による海水温度の上昇でイカの漁獲量も激減してると聞きますが、杉元たちイカの串焼きをヒンナでございますよ。ノンキか。
イカってアイヌ語でエペッペッケ(枝のように分かれているの意味)というんだそうで、「運命の枝別れなんて素敵なウエケペレ(昔話)がありそうだね」などと言う杉元。
これまで度々登場したウエケペレは、アイヌの昔話といってもおとぎ話ではなく実際にあった事が物語形式で伝わったものです。
でもイカのウエケペレはないらしい
後ろで永倉新八が「歩きながら食えっ!」と怒ってるのがおかしいんですが、そりゃあ鶴見中尉たちも暗号を解読してるんだからノンキにはしてられないのです。
五稜郭は江戸時代末期に江戸幕府が築造した日本では珍しい星型要塞(稜堡式城郭)です。
なぜ星形をしてるのかというと、星型の先端に砲台を設置できるようになってて中心にあった箱館奉行所を守るためなのです。
五稜郭は旧幕府軍の本拠地であって、土方さんたちが実際戦ったのはその先の海岸線にある「弁天台場」や「一本木関門」です。遥かに遠い蝦夷地まで行ってよく戦ったものですなあ。
もちろんこの作品での土方は今もしたたかに生きています。
老いてなお気骨あるものは賞すべきかな。
信じることを貫こうとして簡単に屈服しない姿は、おじいちゃんになっても実にカッコよく、土方さんが生きていたらきっとこんな老人だろうと彷彿とさせます。
土方と永倉。新選組の生き残りの二人が感慨深く五稜郭を眺める場面はいいですねえ・・・。
今は無人となっている五稜郭に、ウイルクはどうやって金塊を運んだのだろう?いったいどこから?
この作品は謎解きの面白さがずっとありますよね。死んだ海賊房太郎によれば、金塊は40年前、函館山のロシア領事館に隠されました。
例のアイヌ7人殺し事件のメンバーは金塊のありかを知っているキムシプを伴い、閉鎖されているロシア領事館に侵入。
金塊を隠したアイヌの最後の生き残りであるキムシプが一同に見せたもの。
おおっ!!まぶじい!
そこには意外なものもあったが、追想してる場合じゃないわよ。なにしろ鶴見中尉と部下たちが五稜郭に来ちゃうんだってば。一刻の猶予もない。早く金塊を早く探さなきゃ!いや見つかったとしてもどうやって持って逃げるのか?金塊は一袋60キロが1200袋あるはず。馬が引けるのはせいぜい13袋。とても無理じゃね。
もうここに籠城して第七師団を迎え撃つしかない!と杉元が言い出す。
それに土方歳三はすでに手を打っている。
さすが!喧嘩上等、かかってこいや
汽車を乗っ取ってやって来たのはソフィア率いる百戦錬磨のゲリラたちでして、これは大きな戦力になりますし、函館で戦うのが二度目の土方は地の利を得ていますし、なんかもう自身満々。
かつて北海道に渡ったウイルクは、「帝政ロシアから少数民族だけで極東連邦を守るには広すぎる。海に囲まれた北海道だけを独立させ守りを固めた方がよい」と考えを改め、それがキロランケとの対立に繋がり命を落とす結果になりました。
でもソフィアには、親友のようにずっと一緒だった二人の男の確執を解くような偉大な決心があるようです。
「我々は北海道で移民として足下を固め力をつけ、いずれ北海道からロシア極東へ勢力を広げよう」
それはウイルクが望んだ北海道の他民族国家からキロランケが望んだ極東連邦国家へ広がりを持つ、二人の遺志を融合するような決意です。
ソフィアは母のように大いなる魂を持つ素晴らしい女性に見えるんですが・・・。
また、以前土方が語っていた「蝦夷共和国の経済基盤は炭鉱に置く。炭鉱開発は諸外国から移民を募って国力増大を目指す」という国家構想に参画するという意味でもありますね。
ソフィアたちが鳴り物入りで函館に向かう汽車には、ひっそりと尾形の姿もありました
尾形の行く所バシリも目指しますし、土方、杉元、ソフィア、鶴見中尉と役者は一斉に揃い函館に集結します。
一方、鶴見中尉が来ちゃうと焦りながらヘトヘトになって地面を掘っていた杉元たちが探し当てた意外なもの、それは土地の権利書だったのです。
キムシプたちアイヌは蝦夷共和国の榎本と会い、金塊を渡す代わりにアイヌの土地占有を認める条約を結んでいました。
権利書に記載されていた土地は北海道のあちこちに渡る広大なものだったのです。
ウイルクの思いをアシㇼパが受け取る
北海道の森を守らなきゃ。
自然に育まれたアイヌの精神や文化を守りアイヌが生き残るためには、森を守りカムイを残す事が重要なんです。
金塊の使い道は土地を買い占めるしかないと心に決めていたアシㇼパは、それがすでに昔のアイヌによって成し遂げられていた事に驚きながら、災厄をもたらすと言われた黄金のカムイはすでに自分たちが必要とするカムイに変わっていたと悟ります。
でもまあ、アシㇼパはそれでいいんだけど、みんなは金塊が出なかった事にガッカリ
アシㇼパと杉元は日露戦争後の1907年に出会った事になっていますが「北海道旧土人保護法」が制定されたのは1899年です。
この法律は狩猟民族であるアイヌを農耕民化し、和人社会に同化させるのが目的ですから、伝統的な生活基盤を奪われたアイヌ文化は衰退してしまいます。
しかしながらこの作品が素晴らしいのは、明治末期のアイヌを滅びかけた弱者として描くのではなく、ウイルクやアシㇼパのように強靭な意志や生きる術、そしてオーラを持つアイヌを登場させる事により非常に力強く生き生きとした印象になっています。
アイヌを取りまく状況が待ったなしだとしても、アシㇼパならば法律の目をかいくぐって何かできちゃいそうに思えます。
母を亡くし父は行方不明となるわ、大好きなレタラに去られるわ、失う事ばかりだったアシㇼパが実は戦えるように父から育てられていたと知り、戦いに巻き込まれる状況や、慕っていたキロランケに父を殺される展開、大人から身柄を狙われるとか胃が痛い。
実に苛酷な話なんですが、身に降りかかる禍も、彼らが持つ知恵や信仰や伝統的な世界観の中ではなんだか大したことじゃないように見えるのです。
また、アイヌの解放や独立を謳う者たちによって、アシㇼパ自身の自由が奪われていく事を危惧する杉元の存在にも救われます。
でも杉元以外の大人には気を許せない。
たとえば土方は本当にアイヌのために金塊を使う気があるのかしらん。
まあ何はともあれ、答えは五稜郭の戦いの時、若き日の土方とキムシプに因縁があったという事で。
爽やか二シパ♡