akのもろもろの話

大人の漫画読み

漫画/「健康で文化的な最低限度の生活」柏木ハルコ つらすぎるな生活保護 日本は貧困に目を背けてる

またためになる漫画を読んでしまった。

この漫画はズバリ「生活保護」をテーマにしています。

大学を出て福祉事務所生活課に配属されたヒロインが生活保護の新人ケースワーカーとして悪戦苦闘する物語でして、不正受給する奴なんかをビシビシ取り締まる話なのかと思ったら違い、生活保護をバッシングするんじゃなく役所側にも受給者側にも偏らない中立な立場で描かれてましたね。

(柏木ハルコ「健康で文化的な最低限度の生活」小学館ビックコミックスピリッツ連載中/既刊11巻)

生活保護ってのは、日本国憲法第25条

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する

国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない

という理念に基づき国が生活の困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする、日本国民にとっていわば最後の砦である(長い)

ええいっ!こんな条文は他人事のようで具体的になんなのかよくわからんよ。

 

しかしまあ大学を卒業して公務員になるような人はきっと、生活保護世帯とは真逆のそれなりに幸福な家庭で、子供の頃から真面目でお母さんの言う事を聞くいい子だったに違いなく、そういった子たちが直面する生活保護のリアルがえげつないです。

義経えみるが担当する生活保護受給世帯は110世帯。そのケースファイルの一冊一冊にそれぞれの事情、それぞれの人生があるわけです。重い。

1ケース1ケースを全力でやってたら身が持たないのではないか?

社会福祉制度の知識もなく、ろくな研修もしてない義経。

社会に出ていきなりこの仕事じゃ不安を覚えるのは当然ですが、その大変さを最初に痛感したのは、平川さんという受給者が自殺をほのめかす電話をかけて来ましてね、係長にも報告し親戚の人からはいつもの事だからほっといていいと言われて、自分にできる事と言えば電話にメッセージを残すくらいだったんですが、翌日、本当に平川さんが自殺したと聞き茫然。

エエッ!?私が悪いの??みたいな流れで釈然としない義経に、先輩ケースワーカーが「まっ、ここだけの話、1ケース減って良かったじゃん」と優しい慰めの言葉をかけてくれるのです。

平川さんの13万8千円ちょっとの生活保護費は国民の血税から出てるんだから、自分から死を選んだんだから、と自分を納得させようとしますが、平川さんが住んでいた部屋に入った義経は、そこに一人の人間が懸命に生きる努力をした足跡を認めます。

その人生は単なる1ケースという数字では片づけられないものだと義経は気づくわけですな。

 

それにしても受給者の自殺とか日常茶飯事なのか、職場の皆さん静かなものです。

ま、これはほんの序の口でして、母親からの虐待を感じさせるような子供との会話や精神疾患を持つ女性から暴言を吐かれたり、アルコール依存症、DV、子供の貧困、等々衝撃的で、ハッキリ言ってロクな人間がいません。

でも彼らだってなりたくてなったわけじゃなく、ちゃんと理由があるんです。

福祉事務所の窓口には、こういう困窮した多種多様な人たちがやって来て、ケースワーカーの仕事とはつまりこうした対象者に金を渡し定期的に訪問して様子を見、必要に応じて適切な援助をし、自立の手助けをするのです。

 

生活保護は命を守る最後の砦生活保護の申請は国民の権利であり、該当する人はすみやかに受給できるはず。

でも現実は異なり、義経の上司の京極係長が言うように、増え続ける生活保護費が国や自治体の財政を圧迫している以上、支出を抑制する傾向が顕著になっています。

扶養照会というのは、生活保護を申請すると、親族に援助ができるか問い合わせが行われます。

体を壊して仕事ができなくなり困窮する64才の女性が息子との関係が良好でなく長年会ってないつってるのに、わざわざ見つけ出して援助できるか連絡されてて、いやいや援助できるならとっくに援助を受けてるはずじゃん、息子に頼れないから生活保護を申請してるんでしょうが、なんかもう嫌がらせなのかな?申請を諦めさせるためにやってるように見えてムカつきましたよ。

あと、絶対扶養照会はしないで欲しいと頼んでるのに父親に連絡しちゃって、実はその青年は父親から性的虐待を受けていて居場所を知られたくなかったんだと後で判明する、という話もあって人権侵害も甚だしいと思いました。

どうも読んでると生活保護っていうのは権利というより、親族が犠牲を払って困窮者の面倒を見る事を求められてて、それでも生活できなくなってようやく支給しますわって感じでスピード感はなく、現実に生活保護を受けるのはそんなに簡単じゃないのだ。

わしのように脆弱な人間は、役所に行くと別に悪い事もしてないのに挙動不審になり書類に記入する文字も震えてしまうので、役所の冷たい仕打ちに心が折れて絶対攻略する事はできんだろうな。

それに福祉事務所でなされる説明というのも親切ではなく、生活保護世帯の高校生がアルバイトする時は福祉事務所に申告しなければならないのを理解しておらず、アルバイト収入の全額返還を求められた話なども気の毒としか言いようがなかったです。

もっと進学もさせてあげて国がちゃんとしてあげてほしい。

たとえば今月働いて数万円の収入があったとして、少し余裕が出来たと思ったら、そのぶん来月の保護費から引かれるんですよ。これで健康で文化的な最低限度の生活とやらを送れてるのでしょうか。

不正受給のニュースなどで生活保護に対する世間のイメージはあまり良い物ではないんですが、みんなが不正受給してるわけじゃないですし、あたしは不正受給よりも必要な人が受給できない事の方が深刻な問題だと思いました。

そして受給する側よりも問題は福祉事務所で、多忙を極める部署にもかかわらず経験豊富な専門職は少ないみたいで、大学を出たばかりの新人がいきなり110世帯も担当させられたり負担が重過ぎですよ。

経験も知識もないから結局は通り一遍の対応になってしまうんで、これは福祉事務所で働く人が悪いのではなく国の問題だと思うし、だから早く他の部署に移りたいと思っているのが実情のようです。

 

義経ケースワーカーとして生活保護の勉強を始め、彼女なりに真剣に受給者たちと向き合おうとします。

先輩ケースワーカーからは「スタンドプレーは迷惑だから」と非難されたりもしますが「巻き込まれないと見えないこともある。義経さんは伴走者になる力を持っている」とベテランの先輩から認められたりもして、人が人を理解する事の難しさを痛いほど感じながら、未熟だけど若い人が奮闘する姿は素晴らしいです。

 

10巻からは貧困ビジネスを取り上げていますが、これはもう闇金ウシジマくんの領域であって、義経さんや京極課長のような公務員が深入りする事ではないんじゃないかしらね。こわいし危険です。