「乾と巽ーザバイカル戦記ー」はアフタヌーンで連載中の戦争漫画
大正時代の知られざる戦争「シベリア出兵史」を描いています
乾は帝国陸軍砲兵、巽は新聞記者
著者はあの安彦良和
毎日毎日暑いですねえ~
もうなんもやる気でないわ。
ってなわけで、ブログの更新も滞りがちではありますが、「乾と巽-ザバイカル戦記」⑦の感想をなんとなく書き残しておくことにします。
過去記事はコチラなのです↓
アジアの盟主気取りで、欧米列強と肩を並べようとする日本。
当時ロシアで起きた革命は大事件だったと思うんですが、その時日本はどうしたのか。
この作品は今は忘れられた戦争とも言える「シベリア出兵」を、一兵卒と一新聞記者の目を通して描いているんですが、➆巻出ましたわ。
今回のテーマは「二階級特進は喜べない」ですよ。
さて、1919年初めです。
乾はザバイカル軍事政府の首都であるチタに、巽はコルチャーク政府があるオムスクにいます。
ザバイカルのセミョーノフとオムスクのコルチャークの確執は深くて、お互いに大大大キライやねん。
それぞれロシア革命に抵抗して、外国の支援を受け内戦を続けているわけですが、両人の反目が深刻すぎて問題ばかり。
コサックの頭領を務めるセミョーノフは粗暴なゴリラでして、日本の従軍武官である黒木大尉への友情や、腕のいい乾をすぐに気に入ったり憎めない所もあるんですが、もう感情の幅が大きすぎて日本人にはあまりいないタイプ。
そうして乾は日本軍では一介の軍曹なのですが(尋常小学校も出ていないんだべ)セミョーノフ軍では暫定的に少尉となっておりましたのが、この度なんとまあ二階級特進で大尉にしてくれるんだと。
しかしちっとも嬉しそうな顔をしない乾に、セミョーノフは怒りだし「頼むから喜んでくれえええ、俺がおまえにしてやれる事はそれだけなんだああ、俺はダメな男だああ、腰抜けの禿げデブと言っていいぞおおお」と次には泣き出すというね。もう戦局が泥沼だから情緒不安定かしらん。
ドン引きする乾に黒木大尉から「砲兵一個大隊を指揮してオムスクの政府軍に加わりウラル戦線に参加せよ!」と命令が下る。ジーーーク、ジオン!!!
ところが、この時黒木大尉はセミョーノフ軍の従軍武官を解任寸前でありまして、革命の波を止める緩衝国家としてザバイカルを独立させたわけですが、各国首脳の思惑が交錯した結果の戦略的敗北なんですよね。
黒木大尉は東京から帰国命令が出てたんです。
志半ばで夢破れて日本に帰国するとか抜かす黒木大尉ですが、アララ自分に酔ってるのかしらね?それにチョット待って!大将だけ帰るん?乾にはウラル戦線に行けつって?
だいたい大尉と言ったってロシア軍の話でして、日本軍の原隊に復帰すれば元の軍曹なわけですよ。
乾は部下だけは日本軍に戻してくれるようにと頼む。
5人いた部下も3人となり、1人は帰国直前にスペイン風邪で亡くなってしまう。
スペイン風邪、この頃に流行したんだね。
乾を慕う部下たちとのやり取りは癒しだったけど、1人また1人と死んでいった(しみじみ)
乾は「俺は頭が悪いから難しい事はわからない」と言うけど、学が無くても戦場では頼りになるし部下思いの良い隊長ですよ。
けれど思い出すのは、郷里の叔父が「真っ先に弾に当たるから隊長にはなるな」と言ってた事ですよ。
いつだって戦争で死ぬのは彼のような青年です。
乾は一時帰郷を認められるのですが、北海道では警察に引っ張られていた叔父から、おまえはブルジョワたちにいいように利用されてるだけだと非難されます。それな。
そのうえ叔父が警察に捕まったのも、乾の帰郷で特高刑事が来ていたからのよう。
ロシア帰りの日本人が共産主義者ではないかと疑われ特高にマークされる嫌な時代なのです。
一方、オムスクでロイターの臨時雇い記者として活動する巽ですが、コルチャーク政権はチャーチルが作ったと聞かされ驚きますが、オムスクにエヴゲーニャが来ると知り心を躍らせます。
もう一人の主人公であるはずなのに、乾と違ってあんまり出番がない巽。
存在薄い。
夜の雪原を逃げ惑うエヴゲーニャとミーシャは美しく悲劇的だけど、巽またもや、ただ見てるだけ。
もう➆巻なんだから少しは活躍してほしい所です。
ロシアから北海道に一時帰国した場面よかったです。
お母さんと妹ちゃんは大尉になった乾の立派な姿に喜んだけど、アル中クソ親父は「将校でも露助の将校だばダメだっ!」とケチをつける。のに、誰もいない時に壁に掛けられた軍服を見ながら「大尉かあ・・」と嬉しそう。
ようやく会えてうれしかったから、再びの別れはツライ。
「もうそんなにえらくならなくたっていいから!早く帰ってきてー!」と泣きながら見送る妹ちゃん。
振りむきもせずに去っていく乾の頬に涙がこぼれ落ちる。
もう帰れない事をきっと覚悟しているのでしょう。
シベリア出兵は泥沼状態。
日本軍は苛酷な寒さとパルチザンに苦戦し、一般兵士の間では戦争の目的が曖昧なために士気が低調だったと言います。
みんな早く帰りたかったでしょうね。