人間の証明は1977年の日本映画。
森村誠一の同名小説を映画化した作品。
日本とニューヨークを舞台に繰り広げられるサスペンス。
Kindle Unlimitedで原作を読み面白かったから映画版も見たいなと思い探したら、「シネマコレクションby KADOKAWA」という Prime videoの有料チャンネルで14日間無料キャンペーンで観られるのを発見♡
節約節約(^^)
まずはふわっとしたあらすじを記しておきますが、東京赤坂のロイヤルホテルでは今まさに、デザイナー八杉恭子のファッション・ショーが行われておりまして、ちょうどその頃、ホテルの最上階にあるスカイラウンジに到着したエレベーターの客の1人が「ストウハ」という謎の言葉を残して絶命し大騒ぎになります。
男の胸にはナイフが刺さっていて、遺留品は古めかしい西條八十の詩集。
彼はニューヨークから着いたばかりのジョニー・ヘイワードという黒人男性で、ホテルの正規の客ではありませんでしたが、麹町署の刑事たちはホテル近くの清水谷公園でジョニーの血痕と子供ものの古い麦わら帽子を発見します。
そこで棟居刑事(松田優作)は、ストウハとはストローハット(麦わら帽子)の事じゃないかしらんと名推理を発揮。
さらに、公園で何者かに刺されたジョニーが瀕死の状態でロイヤルホテルを目指したのは、夜見るとスカイラウンジの照明が、遠目には麦わら帽子の形に見えたためではないかと推測したのです。
また、ジョニーがニューヨークを去る際に「キスミーへ行く」と言ってた事が判明し、西條八十詩集の中の一篇に麦わら帽子と霧積温泉を題材とした詩があった事から「キスミー」は群馬県の霧積温泉だと割り出します(・∀・)イイネ!!
一方、ホテルのエレベーターに乗り合わせたカップルから事情を聞くのですが、女性の方はナオミというクラブの女でして、二人は不倫関係なんですが、ナオミは雨の夜に車にはねられ行方不明になってしまいます。
この車を運転していたのが、八杉恭子のドラ息子の恭平でしてね、発覚を恐れた恭平は同乗してた恋人に手伝わせ、ナオミの遺体を車で運び海に捨ててしまうのです。ううむ
物語は、ジョニー・ヘイワード刺殺事件とナオミ失踪事件が複雑に絡みながら、棟居刑事が抱える過去のトラウマも明かされます。
日本がまだ戦争の傷跡を引きずってる時代、棟居は母親の顔も知らず、たった一人の父親は米兵が集団で若い女性を強姦するのを止めようとして、逆に彼らからリンチされて死んでしまったのです。
子供だった棟居は父を暴行し小便までかけた米兵の事も、お父さんを助けてと叫んでも救いの手を差し伸べようともせず笑って見ていた日本人の事も憎悪しました。
そうして八杉恭子があの時の若い女だったと気づんくんですわ。なんたる運命のいたずらっ!
松田優作さんは捜査で渡米してもやっぱ松田優作で、ニューヨークの警察から差別も受けず、ちょっとドスが効きすぎでは?と感じましたが(コワいのね)存在感は抜群。
怒りを抱え人間不信に葛藤する、はみだし刑事情熱系棟居は、自分と同じように不幸な生い立ちのジョニーのために犯人を挙げようと執念を燃やします。
ジョニー・ヘイワードは八杉恭子の息子ではないか?と考えたのです。
でもなんですかねぇ、冒頭からへんなファッション・ショーの場面とジョニーがミュージカルかっ!ってほどノリノリでスラムを闊歩する場面が延々と長くて、後になってからそれほど母親と会えるのが嬉しかったのだなあと気づきましたが、一体何を見せられてるんだろうと不可解でしたね┐(´д`)┌ヤレヤレ
彼は母親にひと目会いたい一心で日本へ来たわけですが、セレブになった母親にとっては黒人の隠し子がいるなんて発覚したら身の破滅と迷惑でしかなかったのです。
だからってなにも殺す事ないじゃんねー。
映画は原作とはだいぶ変えていて、原作と比較すると今一つだと思いましたが、八杉恭子を追い詰めてゆく麦わら帽子の詩が効果的に使われていて、印象に残ります。
ぼくの帽子 西條八十
母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?
ええ、夏碓氷から霧積へゆくみちで、
渓谷へ落としたあの麦わら帽子ですよ。
母さん、あれは好きな帽子でしたよ。
僕はあの時、ずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。
母さん、あのとき向ふから若い薬売が来ましたつけね。
紺の脚絆に手甲をした。
そして拾はうとしてずいぶん骨折ってくれましたつけね。
だけどたうたうだめだった。
なにしろ深い谷で、それに草が背たけぐらゐ伸びてゐたんですもの。
母さん、ほんとにあの帽子どうなつたでせう?
そのとき傍で咲いてゐた車百合の花は、
もうとうに枯れちゃつたでせうね、
そして、秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
あの帽子の下で毎晩きりぎりすが啼いたかも知れませんよ。
母さん、そしてきっと今頃は、
今夜あたりは、あの谷間に、静かに雪が降りつもってゐるでせう。
昔、つやつや光った、あの伊太利麦の帽子と、
その裏に僕が書いたY・Sといふ頭文字を埋めるやうに、静かに、寂しく
霧積温泉は群馬県と長野県の県境(軽井沢近し)にある秘境のポツンと一軒宿。
ダム湖があるだけで深山幽谷といった場所なんで、地元の人間はそんなに行きません。
西條八十の詩は、作者が生前霧積に遊んだ時を懐かしく詩ったもので、宿では宿泊客や立ち寄るハイカーのために作る弁当を包む紙に、その詩を刷り込んでいたそうです。
母親との夏の思い出を麦わら帽子に託した情感が心に沁みるいい詩で、幼い頃に母に捨てられた棟居には他人事とは思えなかったのです。(しみじみ)
とは言いましても、霧積温泉まで追いかけて行って目の前で自殺されたら警察は失態じゃないかしらね?(いらぬ心配)
あと登場人物同士が因縁ありすぎではなかろか??
「昔この映画が大ヒットした時、わざわざ霧積に行って麦わら帽子を投げる人がいた」と、実家(群馬)の父が申してましたが、ほんとかニャ~?
昔の映画は金かかってますぞ
原作お勧めしますぞ