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大人の漫画読み

漫画/「ひとりでしにたい」⑤カレー沢薫 感想

悠々自適な老後を過ごしていたはずの伯母がまさかの孤独死。

ひとりでも潔く生きるために、鳴海(35才独身女性)は自ら終活を始める。

そもそも終活とは何をどうすればよいのか?これが難題である。

若いうちからしっかり準備するために、面白くてためになる終活マニュアル漫画。

(カレー沢薫「ひとりでしにたい」5巻)

30代で終活とはこれいかに

主人公の鳴海(なるみ)は美術館の学芸員なのですが、趣味はアイドル推し活でしてね、最近マンションも購入しお猫さまとの二人暮らしを満喫してますから、結婚する気などサラサラないのです。

彼女は実家に両親が健在でしてマンション購入時もいくらか援助してもらってるくらいですから、学芸員の年収はそれほど高くないけどまあ金の苦労はないんですよね。

別に結婚しないのが悪いとか、わがままだとは思いませんが、時間も金も自分のためにだけ使いたいから、わざわざ家族というしがらみを作ってまで自分の時間を奪われたくないって彼女は考えています。(自分の気持ちに正直)

ただ、このままでは老後に一人きりでどうしようっていう漠然とした不安は、10年先、20年先には相当大きくなってるんじゃないかな?

ってなわけで、今の時代、30代で終活を始めることは決して早過ぎやしないんですよ。

 

④巻の感想はコチラです↓

 

www.akirainhope.com

 

前置きはこれくらいにして・・・

 

さて、前巻では投資や保険などのお役立ち情報でしたが、この巻での鳴海は、家族を作らない人生での人との関わり方を考えます。

制度上だけでなく、家族というのは強いものでありまして、肉親てのは甘えが許されますから気なんか使わないし、多少の喧嘩くらいはすぐ忘れちゃうし、何もなかったことにできる都合のよい存在。(家族にもよる)

でも他人とはそんな雑なつき合いはできませんから、縁を切られないようにそれなりに気を使わなければなりません。

家族を持たないってのは、他人との関係だけで生きていかなければならないっていう、ある意味ハードモードでしてね、人とつきあうのがめんどくせーとか、金さえあればひとりでいいやとか言ってちゃあかんねん。

 

那須田くんは鳴海の同僚で官庁から出向してきたエリートなのですが、鳴海よりも一回り年下の彼が鳴海を好きなことは①巻から提示されていました。

前巻では、自分が結婚に焦って年下のエリート男子につきまとっている、と社内の人から見られてる!と察知したことから、二人はチョット気まずくなってしまったのですが、考え直して彼との関係を修復しようとします。

ところがなんかー、話が意外な方へ、行っちゃうんだよね。

那須田くんが今までとは別人のように鳴海を無視するので、鳴海はついつい彼のことが気になっちゃう。

これは―?恋かー?

違うってばよー。この漫画そんなお気楽な展開にはならないぜ。

あくまでも主人公は仕事と趣味で忙しいから、安易に恋愛には発展しません。

 

鳴海は那須田くんについてよくよく考えてみますが、どうやら親から虐待された過去があるのでは?と想像してみるも、それは具体的に明示されてはいないのですが。

実際あの時那須田くんは、もっと優しい言葉をかけようと思ったんだけど、かけるべき優しい言葉を知らなかった、と驚くべき発言をします。

優しい言葉を知らない=親から優しい言葉をかけられたことがない

つまり那須田くんは親が自分優先で子供の感情を無視するような、典型的なモラルハラスメントを受けて育ったらしい。

そう言えば若いのに自分の人生に対して憂うつなビジョンしか持てないとか、思い当たることは色々ある。

大人になって仲良くなりたい人ができても、悲しいかな、親の真似しかできないから無視してしまったのだ。

無視することで相手を支配しようとする。

相手にいきなりでかい傷をつけてそこに無理矢理入り込んで居座る。俺が子供の頃、親に教え込まれたコミュニケーション方法です

言ってることがよくわかんないのだが、モラハラについてこんな説明されたら、こりゃ鳴海ならずともビビるわ。

でも那須田くんのような人が、こんな風に内省して他人に話したりすることは普通はできないと思います。

 

なんか意外な展開になりましたけども、家族を作らず他人との関係が重要というなら、つきあってはいけない人間といかにつきあわないかも大事ですよね。

ひとりで自由に生きるつもりが、気がついたらモラハラ野郎にハマってたじゃ目も当てられないもの。いや男女間とは限らず職場でもあるものだがね。

 

鳴海はどこまでも自己中心的な人間であり、冒頭でも保険屋の元カレから「おまえは自分が興味ない話をまったく聞かないしおそろしく冷淡だ。さらにそれを隠そうともしない」と言われるのですが、思わず「えっ、あたしのことかしら?」と自分のことを言われてるような気がしまして、ってか、みんな人の話なんてそんなに聞いてないと思います。

鳴海だけが特別自己中なわけではないと思うけど、自分は自己中だと真摯に認めたうえで、那須田くんの心の闇と向かい合い、おまえは中二病だと言い切るのが最高でした。

 

 

ところで今回の教訓は「死ぬのは未定でもエンディングノートを書いとく」

加トちゃんが書いてるやつね。