akのもろもろの話

大人の漫画読み

漫画/「ひらやすみ」④ 真造圭伍(ネタバレ)感想

阿佐ヶ谷の古い一軒家でのスローライフを描いた日常系漫画。

2021年から「ビッグコミックスピリッツ」で連載中の「ひらやすみ」4巻読みました。

(真造圭伍「ひらやすみ」4巻)

「ひらやすみ」は気になる漫画である。

なぜなら主人公のヒロトが単なるのんびり屋さんとは思えないからである。

 

前巻まで

生田ヒロト(29才・フリーター)は、若い女は苦手だが老人からは愛される性格でして、ひょんなことから意気投合した和田はなえ(83才・年金暮らし)から、いつもただ飯を御馳走になっていまして。

その婆ちゃんがある日急死してしまい、遺言で婆ちゃんが住んでた家をもらうというね。

「アラアラそんなラッキーな話ってあるかしらね??」とは思うものの、彼のように人間らしい正直な暮らしを送る青年ならありそうな気もしてくるんです。

まあ、かなりのボロ屋ではありますが、平屋の一戸建てで庭もあります。

オサレな暮らしに憧れてたら無理でしょうが、古くても婆ちゃんが綺麗に暮らしていた家を、ヒロトは婆ちゃんの思い出と一緒に大切に受け継いでるんですよね。

それはそれでよいのですが、ヒロトったら30にもなるのに定職にもつかず、釣り堀でバイトしながらのほほんと生きてるわけです。

将来について悩んだり、これではいかん!早く正社員にならねば!なんて考えナッシングで、故郷の山形から美大に通うために上京してきたイトコのなつみに「悩みとかないの?」って聞かれてもマジでないって答えるんです。

くよくよ考えたってしょうがないじゃん。

あ、でも夕飯はめっちゃ考えるよ。

ってな調子で、とにかくマイペース&ポジティブ。

拙者、彼を見ておると人の幸せとはなんなのか考えてしまうのである。

ヒロトはきっと人の幸せは普通の生活の中にあると考えてるに違いありません。考えてないかもしれないけど。

 

で、このイトコの娘がヒロトの家に同居するという、わけわかんない展開でしてね。

都会に憧れてたなつみは「タワマンが良かった・・・」などとほざく遠慮のなさで真の兄妹のようなんです。

ところがなつみは、田舎から上京してきた劣等感で美大になかなか友人を作れずにいて、それが悩みの種なんですわ。

 

 

さてさて、立花よもぎはヒロトの家を管理する不動産会社のOLでして、仕事は優秀ですが、何しろ余裕というものがなく常に忙しくイライラしております。

そんなよもぎに、売れっ子小説家の石川リョウ(36才)はホの字なのです。

一人称は「うち」の石川リョウはミニマリストでしてね、生活にシンプルを求めるあまり掃除機も風呂の椅子も捨ててしまい、やり過ぎる断捨離はもはや病気じゃないですかやだー

しかも、あの時貸した本を返してほしいとエッセイに書いたりして、よもぎは返却するために石川の部屋を訪れたわけです。

本の話をしないかと部屋に誘われたよもぎは、ミニマリストの極端にモノのない部屋を見て自分の散らかり放題の部屋を思い浮かべますが(ヨモギの部屋は汚いんです)それより何より、靴を脱いだら左右違う靴下を履いてたことに気づき愕然!

帰り際に気づかれないようにちょっと後ろを向いててほしいと頼みます。

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靴下左右違うの初めから気づいてました。

そりゃフツー気づくわな

 

よもぎはすげえ恥ずかしかったんですが、石川は逆によもぎらしくていいとか言い出し、二人は連絡先を交換しました。

 

一方、クリスマス・イブにヒロトの家ではパーティーをすることになり、準備係のなつみとあかりは同級生の山田が来るのをワクワクして待ちますが。

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うえーいい!メリクリ~

 

まさかの山田を誘ったはずが同級生のイケてる奴らまでやって来る。

山田は人数多い方が楽しいだろうと連れて来ただけで悪気はないのですが、なつみは彼らが嫌いですからテンションが下がってしまいます。

ヒロトはなかなか帰って来ないし、友だちでもないのに図々しくくつろがれて、予想外の出来事になつみとあかりはガッカリです。

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絵画科1年の中でトップヒエラルキーにいる中島

SNSフォロワー数二千人越えのイケてる美大生(しかも金持ち)

 

その中島から「マンガを見せて」と言われるんですが、劣等感の強いなつみは見せたら馬鹿にされるだけだと考えます。

ところが山田から中島もマンガを描いてると聞き、実はお仲間だったとチョット親近感を覚え、自分の描いた作品を見せてやるなつみ。

 

その頃ヒロトはと言えば、釣り堀でぬいぐるみを失くした子供のために探し回った挙句、帰り道でチャリの鍵を失くした爺さんを見かけ、早く帰りたいのに優しいから見過ごせない。

同じくチャリの鍵を失くした爺さんを心配するよもぎと二人で助けてあげ、別れ間際にヒロトはよもぎをクリスマスパーティーに誘います。

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背景の商店街もいいですねえ

 

でも、よもぎは予定があるからと断り、取っ散らかった自分の部屋に帰ります(とにかくよもぎの部屋は汚いんです)

世間がクリスマスで浮かれてる時に、汚い部屋に一人帰るのはチョットへこむわね~

ヒロトはヒロトで、バイクがエンストしてしまい押して帰りながら、予定があると言ったよもぎのことが気にかかります。

ヒロトはまだ本当の恋をしたことがないんですよね。

「恋」と呼ぶ激情をヒロトが体感する日はいつ来るのだろね?

しかしまあ、家にたどり着けばみんな盛り上がっていて、特になつみの楽しそうな顔を見てヒロトはホッとします。

どうやらなつみは、マンガを通して中島と仲良くなれたみたいです。

新入生歓迎コンパの時に泥酔したなつみは彼らに置き去りにされてしまい、いいイメージを持ってなかったのですが、話してみればそんなに悪い奴らでもないかもと思い直します。

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山田の寝顔カワユス

 

そうして、酔いつぶれてヒロトの家に泊まったあかりが夜中にふと目を覚ますと、山田の可愛い寝顔があってビックリ仰天。

あかりは彼の寝顔をそっと写真に撮りました。

いとうれし

 

 

 

さて正月。

ヒロトとなつみは山形に帰省しましたのよ。

勝手に飯が出てくるし皿も洗わなくていい、実家の有難さを満喫するなつみですが、まだ親にマンガ家になりたいとは言えていません。

でもヒロトの家で雪遊びしてるなつみの楽しそうな様子にお母さんは安心します。

そんなこんなで東京に帰る日、ヒロトになつみをよろしくと頼むお母さん。

それを見たなつみは、ためらいを断ち切って言います。

わたしマンガ家になるの

 

お母さんはやるなら徹底的にやってみなさいと言ってくれます。

 

しかしマンガ家への道は厳しいものです。

なつみに雑誌デビューを目指そうと言ってくれた、副編集長の二階堂は頑固一徹な人。

自分のやり方は時代遅れかもと感じても、やっぱ絶対の自信があるから譲れない。

なつみにも自然と言い方が厳しくなる。

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泣きながら帰るなっちゃん

 

なつみに才能があると思うからこそ、二階堂は厳しくするのです。

なつみといいよもぎといい、この作品の女性たちは非常に魅力的に描かれています。

 

それと、時々挟まれるヒロトと婆ちゃんとの思い出エピソードがいいですね。

二人で縁側で将棋をしたこと。

風が気持ち良かったこと。

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いつになく真面目な顔をしてた婆ちゃんに、ヒロトは生半可な気持ちで家をもらってはいけないと感じたのです。

 

 

そしてヒロトに大事件が起こってしまいました。

家の給湯器が壊れてしまったのです。

交換にはだいたい15万~20万ほどかかるとのことですが、そんな金ないわと風呂好きのヒロトはパニック寸前(貯金ないんかーい?)

それでヒロトは給湯器のために仕事を増やすと決心しまして、銭湯のバイトも始めます。

これまで変わらなかったヒロトが何やら変わる予感がして、なつみは心配です。