2021年に単行本化された「末期ガンでも元気です 38才エロ漫画家、大腸ガンになる」は、末期の大腸ガンを宣告されてからのエピソードを綴った超ポジティブな闘病記。
作者はBLを執筆していた漫画家です。
つい最近YouTubeのおすすめにこの漫画が急に出て来たのですが、作者の訃報を知り大変驚きました。
大腸ガン死亡数は日本人女性の第一位を占めていますが、大腸ガンは他の消化器ガンに比べて進行が遅いので、早期に発見すればほぼ治るそうですよ。
ただ大腸ガンの自覚症状はある程度進行してからでないと表れないことが多いので、自覚症状のないうちにガンを見つける最善の方法は検診を受けることです。
あたしもそろそろ大腸ガン検診を受けるお年頃なのですが、なんか大腸ガン検診て恥ずかしいし、痛そうだし、怖いし、めっちゃハードル高いんですよね。
で、作者の場合はと言いますと、胃が疲れてんのかな?ぐらいの感じで病院行ったら末期ガンだった・・・というビックリ仰天な話から始まるんです。
2019年秋。
とある症状で悩んでいた作者。
それは・・・すぐ腹が減ること!
以前の半量くらいしか飯が食えないので一日中腹が鳴ってる。
年のせいかしらね?
などと思ってたら、よもやまさか!それは大腸ガンの末期の自覚症状だったのです。
人生とは何が起こるかわからないものです。
精神的ショックは計り知れん。
大腸ガンて、腸粘膜には痛覚神経がないから痛くも痒くもないんだそうです。
作者の病名は、日本で毎年約15万人診断されるという大腸ガンのうち、比較的珍しい「横行結腸ガン」(大腸ガン中約7%)でした。
作者はこう問います。
でもさあ、こんな程度で病院に行こうと思います!?
↓
「最近すぐ満腹になって空腹になるんですよー」
確かに。
変だなって思ってもまさかガンとは思わないよね。
最初に異変を感じた日から「ガンでした」ってなるまでに3週間。
その後手術(約7時間)してみて「開けてみたら腹膜播種が複数ありました。ステージ4です」ってなるまでに2週間。(腹膜播種とは、転移の一つで再発が多く完治困難とされています)
そのあと詳しい検査結果が出て「あなたの状態だと術後の予後平均は30カ月です」ってなるまでにさらに3週間。
そして抗ガン剤治療開始まで計約80日。
病院4軒、主治医7人、他の医者14人くらい。看護師さんと薬剤師さんは数えきれないほど。作業療法士、介護福祉士、栄養士。
検査費諸々・約20万円。
入院・約130万。手術・30万円。
抗ガン剤・月約10万円×2年。(高額療養費制度により窓口負担はかなり減額される)
といった非常に重い内容なのですが、鳥獣戯画の兎みたいに擬態した主人公が、あっけらかんと明るく笑わせながら、闘病の一部始終が描かれています。
まず大腸内視鏡検査。
大事な検査なのはわかるけど、やっぱ痛いんだねー!
以前痛くなかったよと言ってる人もいましたけど、これは人それぞれなんでしょうね。
腸が曲がってるとこを通過する時が痛いらしいです。
医学的にもちゃんとしてるように見えますし、検査が具体的にどんな風に行われるのか漫画だからよくわかり勉強になります。
苦しい検査からガンの告知、手術、抗ガン剤治療・・・実際は壮絶であったろう経験を、時折エロ漫画家らしい視点も入れつつ(エロはいらないような気がしますが)笑わせながら、リアルに描かれてるんです。
「抗ガン剤治療のしんどかった副作用ランキング」
「ぶっちゃけ言われて嬉しかったこと、嫌だったこと」
「もらって嬉しかった物」
等々、きっと同じ病気を患う人のために書いてるんだなと思いましたねー
また闘病生活に欠かせない家族の協力について、末期ガンのような大病の場合、本人のみならずそれを支える家族のメンタルも注意が必要だと説いています。
この方の夫はウツを患っていたので、自分は夫に寄りかかれるけど夫にも寄りかかれる人が必要だと夫の姉さんを召喚しています。(この姉さんがとてもいい人なのです)
あたしの母もガンで亡くなりましたので、看取る家族も大変なことはわかります。
無理をして共倒れになっては元も子もないですし、病人を支える家族も非常にツライのです。
そして友人や知人の有難さ。
ガンと闘うためには頼れる人を増やすことが重要です。
末期ガンでも生き生きと毎日を楽しく過ごした作者が素晴らしいです。
苦しい過去もあったようですが、強い人だと思いました。
手術から11日目で退院となりまして、その足でとうらぶの舞台を観に行き友人と食事したそうです。
家族は心配したと思いますが、人生を楽しむことがガンを克服しようという意志や闘う勇気が生まれてくると思うのです。
いつやって来るかわからない死に心を砕いて、かけがえのない人生のひとときをおろそかにするのは惜しいことです。
絶対ガンに負けませんとか死にませんとかの言及はありませんでした。
人はいつか死ぬという現実を受け入れながら、今生きていることを大切に日常を送られたようです。
ご冥福をお祈りいたします。