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漫画/「ダーウィン事変」➄(ネタバレ)感想

好むと好まざるとに関わらず、半分ヒトで半分チンパンジーの「ヒューマンジー」チャーリーは動物の権利を求めるヴィーガンテロリスト集団「動物解放同盟(ALA)」との戦いに巻き込まれてゆくわけです。

アニマルライツ(動物の権利)とは、動物には人間からの苦痛を被ることなく動物らしく生きる権利があるということです。

でもたとえば肉食や動物実験など動物を利用することを人間の社会からなくすなんてできるでしょうか?

そしてチャーリーの生物学上の父であるグロスマン博士はなぜ「ヒューマンジー」を作ったのでしょう?

(うめざわしゅん「ダーウィン事変」5巻)

チャーリーの母であるチンパンジーのエヴァが前巻で亡くなったのですが、最後に残したメッセージが「I am a mother of 2(私は二児の母や)」

よもやまさかエヴァには他にも子どもがいたというね。

いったいどういうこってすか!?

前巻の感想はコチラです

 

www.akirainhope.com

 

さて、リヴェラ・ファイヤアーベントと人目を避けて会談するのはストラルド生物科学研究所所長のサラ・ユァンです。

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チャーリーの弟はオメラスと言うらしい。

オメラスはまだリハビリの途中で人工声帯の手術を終えたばかりなのにとキツイ口調でして、その存在が世にばれたら私だけでなくオメラス自身も終わりなのよと眉間にシワを寄せてファイヤアーベントをなじります。

彼によるとオメラスは15年のほぼ寝たきりの苦しみから解放されたんだから自由を謳歌したいんだ、と言うのです。

オメラスなんかボロボロやんけ。

 

その頃チャーリーが身を寄せるフィルの家にルーシーのママが訪ねて来まして、チャーリーと一緒にいるとALAの標的にされ危険ですから家に連れ戻そうとします。

母親の心配は当然なんですが、チャーリーがしれっと言うんです。

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言い方っ!

ルーシーがどうなってもいいんかい!?とママは怒りますが、チャーリーはALAを壊滅させるのもグロスマン博士を見つけるのもルーシーの協力が必要だと言うんです。

母親の心配とは齟齬がありますが、これまで積み上げて来たルーシーとの関係性で信頼関係が出来上がってたんだな。

それにルーシーに何かあればチャーリーは命がけで守ることでしょう。

ルーシーも自分たちはチームだからチャーリーを助けたいと主張し母親は折れる形で帰って行きました。

彼女を見送る2人はいつの間にか手を握り合ってましたね。ヒューヒュー

 

チャーリーの家族の死を悼みたいルーシーは一緒にエヴァの墓参りに行こうと誘いますが、チャーリーはピンと来ないみたいでして、墓へ何しに行くの?もう死んでるのに?などと言うもんでルーシーは呆れて1人で出かけます。

コーンバーグ霊長類研究所のペットセメタリーでルーシーはある人物と邂逅します。

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エヴァの墓に花を手向ける男。

木漏れ日の描き方とかいいですよねえ~

この作品は海外ドラマみたいな空気感を持ってますよね。

 

彼はルーシーにエヴァは幸せだったと思う?と語りかけます。

口ごもるルーシーに、実験材料として強制的に子どもを出産させられ死んだのに幸せだったはずがない。これが人間だったら大問題だけどヒトじゃないから知らんぷりだ。

と負のオーラを全身に纏いながら一方的に喋るのです。

チャーリーはかわいい澄んだ目をしてますけどオメラスの目は暗いし冷酷そう。

そこにルーシーを追って来たチャーリーが登場し2人は今にも一触即発な状態に。

オメラスはボロボロどころか強そうです。

ってか、チャーリーより強いかも。

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助けを呼びに走ったルーシーの前に現れたファイヤアーベントは、オメラスこそALAのリーダーで育てたのは自分だと言うんです。

今まではチャーリーをALAのリーダーに担ごうとつけ狙ってたのに、ALAは新たなフェーズに入りチャーリーは今や邪魔者になっていたんです。

だったら最初からオメラスをリーダーにしとけよって話ですが、ファイヤアーベントが15年も寝たきりだったと言いましたから動けるようになったのは最近ですよね。

しかも初仕事が、愛玩動物になったチャーリーの目を覚まさせるためハンナとバートをKILLした、ってんだからやべえ奴だったわ。

それにめっちゃ強かった。

初戦は圧倒的にオメラスの勝利でして、ルーシーはチャーリーを助けようと必死でオメラスを説得します。

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エヴァが自分の意志を持っていたかはわかりませんが、エヴァは確かにもう1人の子どもの存在を知っていました。
彼女が犠牲者でなかったかどうかはグロスマン博士が見つかりさえすればわかるんですが、どこにいるんですかねえ。

オメラスの恨み節は続きます。

チャーリーが歩いて来た道のりは平坦ではありませんでしたが、彼にはずっとハンナとバートという庇護者がいて幸せでした。

健康に生まれたチャーリーと対照的に不具の子だったオメラスは、暗い地下室で声帯の構造も未発達だったから痛くても声も出せず苦しむ日々だったという残酷な話。

これじゃチャーリーやグロスマン博士を恨む気持ちもわかります。

 

実に重い問題をはらみながらも、思えばルーシーはまだ10代の少女でしてただもう大事な友達のチャーリーを放っとけない一心だったと思うんです。

その想いがこの巻では互いにかけがえのない存在となり必然の帰結として2人は結ばれます。

ええっ!はやっ!恋とか飛び越えてるし(まあ伏線はあったけど)

ついに交尾かー。やること早いわねー。

ハンナとバートも突然死んでしまったし、けっこう展開の早い作品なんですよね。

でもこの先2人に何が起こるのかもちゃんと考えてるんじゃないかな。

そうして2人はオメラスを止めようと誓いあうのです。