ダーウィンクラブのルールが怖すぎた!
朱戸アオさんの新刊が出たら必ず買うんですが、現在連載中の「ダーウィンクラブ」ついに➄巻が出ましてもうチョー面白いです。(なんて頭の悪そうな感想)
まずこれまでの話をざっと書いておきますと、世界中に経済格差が広がった現代でGAFA的な巨大企業が次々とテロで狙われていくんです。
これを仕掛けた犯罪組織の中に、子どもの頃父親を殺害した犯人を発見した元警察官・石井大良(たいら)は、「ダーウィンクラブ」という謎の組織を突き止め潜入をします。
このクラブは秘密結社のような体で「正しい事をしろ」とか「他人を助けてやれ」とかめっちゃまともな教えを垂れながら、同時にテロを起こし人を殺してるわけでして。
なんか独特の思想や考えで動く不気味この上ない組織なんですが、これがダーウィンの進化論と繋がっていくからチョー面白いんですよ!
4巻の感想はコチラです↓
さて、小川の紹介でクラブ会員の矢垣という会社社長の運転手に雇われた大良でしたが、異様な内部事情を知ることになります。
矢垣は上級会員でこれまた温厚ないい人に見えるんですが、妻以外の女性との間にいくつも家があって(4軒くらいかしら)子どもがたくさんいるのです。
クラブには収入に応じての会費があり上級会員ともなれば高額になりますが、子どもを多く持てば会費は減るシステムです。
いわゆる重婚なんですが、才能ある(クラブでは金儲けも才能とされている)上級会員を1人のパートナーが独占しないことで多くの子孫を残せるし、本妻以外も不利になることなく(愛人ではないんです)金銭面の援助もちゃんとあります。
ってなわけで、実は上級会員はみんな重婚で子どもが何人もいます。
もうおかしいです。みんなおかしいんです。
でもって、大良は上級会員の会合に矢垣を送った先で佐藤を見つけたのです。
大良の父を殺した犯人佐藤はテロ行為中に起きた火災で死んだはずなのですが・・・
いやはや堂々と話しかけてましたよ。
大良は不器用で嘘をつくのも下手そうですが、ほぼ本当のことを喋りでも肝心のことは喋らないという絶の妙で危ない場面も切り抜けて来ちゃった天然くん。
佐藤に対してもアンタのファンですわ的な顔をして「アングリービーグルむっちゃすごい。あれくらいのことやって世界変えないと・・・」などと本心から喋ってるように見えるんですよね。
すると、なぜか佐藤が突然一筋の涙を流しましてね。
ウーン、ちょっとどういうことなの?
「アングリービーグル」を追って「ダーウィンクラブ」に行きついたんですから当然テロはクラブが関与してると思いきや、矢垣はテロには否定的だし他人事みたいに「あれはクラブ内の同好会のひとつ」みたいなことを言いますし一枚岩ではなかったんです。
んなぁ~、テロ同好会とはエライこってすよ。
すべてはダーウィンの進化論に倣い、生物として存続し繁栄するために正しい子どもを増やしていく。
そうすれば自然と自分たちは今の人類を淘汰する。
というのがクラブの思想なんです。
まあ優性思想ですよね。
「こんな歪んだルールに従えるかよっ!」とか言い出す不適性な人は密かに排除されるというね。
香取さんは上級会員のイケメンを紹介され夢中でしたが、彼が結婚してると知りショックで関係を断ちます。
さらに自分が双子を産みやすい家系だということがクラブ内で特別な才能として見られてることに反発を感じています。
多胎児は単体で生まれるより低出生体重児になる割合が多いからリスクがありますし、人数多ければいいってもんじゃないと思いますけどね。
香取さんにすれば子どもを産む道具に思われてるようで嫌なんです。
あとやっぱイケメン上級会員の魅力が忘れられず、別の男から餃子の王将みたいな所で僕の子どもを産んでくださいとか言われてもテンションは下がる一方です。
上級会員になるには結婚していて、すごい才能があること。
そして一番難しい条件は「子どもを5人以上産むか、クラブのために人を1人殺すこと」らしいんです。
生殖と淘汰をコントロールしようとするクラブで殺人は合法です。
でも殺人と言っても殺す相手はそうそういませんので、大良はクラブが交換殺人をさせてるんじゃないかと睨むんです。
殺したい人がいる会員の代わりに殺してやれば自分は上の階級に上がれるし、検察や裁判所にはクラブの会員がいるんだから罪も軽くしてもらえるよね、みたいな。
一方、大良の父の捜査資料がなくなりまして(警察にいる会員の仕業でしょうな)当時の担当刑事をあたると「犯人は2人組で殺しに慣れた奴が準備して初めての奴に殺させたみたいな死体だった」という話からも交換殺人の線は濃厚。
大良は佐藤を「あいつは手伝うだけで実行犯は誰か別の奴」と勘づいてましたが、まさにその通りでして、これまでわからなかった「何故大良の父親が殺されたのか?殺したのは誰なのか?」も描かれております。
しかも交換殺人を依頼すると自分も殺さないといけなくなることが判明。
怖いよ怖い。
大良は「アングリービーグル」に入りたいと考えます。
バカだから?
いやいや、時折すごくカッコいいです。
父親の仇を討ちたい一心なんです。
でもちょっと資金も人材も豊富でワールドワイドな巨大組織である「ダーウィンクラブ」に対して、大良をバックアップしてる高津や松田の警察組が脆弱すぎですよね。
小川から階級が上がらなければ「アングリービーグル」には入れないと言われた大良は「階級を上げるには結婚しなくちゃならないのかしらん??クソー」と立ち往生です。
そんな時に香取さんの「適応委員会」という名の吊し上げが行われまして、曰く「性格が悪い」「損得勘定で一杯」「スペックが低いのに上級会員を独り占めしたいなんて思い上がってる」「もう若くないのに自分に価値があると勘違いしてる」などと糾弾される公開処刑で怖かったです。
そうやって人の心の中まで支配していくんだね。
殺人とは別に淘汰する方法として「忘却刑」というのが出てきますが、殺された方がマシよ。
自分を犠牲にして組織のために働き殺人まで犯すような狂気的な思想に洗脳されるなんてあるだろうか?
と懐疑的に思う人は読むとわかるんですが、これがダーウィンの進化論といい具合に結びついてて傑作だと思います。