柳田格之進(草彅剛) 浪人。囲碁の名人
お絹(清原果那) 格之進の娘
萬屋源兵衛(國村隼) 大店の旦那
弥吉(中川大志) 顔がいいだけの萬屋の手代
身に覚えのない罪を着せられ故郷の彦根藩を追われた柳田格之進は江戸で浪人となり、娘のお絹と2人絵に描いたような貧乏長屋で暮らしています。
あたしはなかなかに時代劇が好きなのですが、黒沢映画や漫画原作物を抜かして好きな時代劇映画は「たそがれ清兵衛」(真田広之の伝説的殺陣がスゴイ名作)と「必死剣鳥刺し」(「隠し剣鬼の爪」より好き)です。
奇しくも両者藤沢周平原作ですが、「碁盤斬り」はこの系譜に入れてもいいかもしれませぬが、原作は古典落語みたいですがよく知りませぬ。
あと囲碁も本作の重要なファクターですが、囲碁全然わかりませぬ。ひん
主人公の仇である柴田兵庫(斎藤工)の囲碁の打ち方が「星に打つ」とか言われても何それ!?だったし、かつて「哭きの竜」(能條純一の有名な麻雀漫画)を読んだ時鳴くってなんだろう??と何が何やらだったのを思い出します。(どうでもいいですね)
とは言っても、わからんでもそれなりに楽しめましたよって。
囲碁も原作落語も知らない人間の感想です。
草彅剛の浪人姿は堂に入ってて、ジャニーズだった人とは思えず時代劇も似合いますねえ。
格之進は篆刻で判子を彫ったりお絹は縫物をして糊口をしのぐも、長屋の店賃も滞る貧乏暮らしですが、大家が店賃を待ってくれたり江戸人情がいいです。
狭い長屋でもキチっと居住まいを正す格之進。お武家様って美しいよね。
あと武士の娘らしく凛としたお絹が愛おしいほどでして。(清原果那がいい)
赤貧に甘んじながら実直を旨とする格之進の唯一の楽しみは囲碁で、嘘偽りない勝負を心掛けるなど真面目さが表れております。囲碁の打ち筋には人間性が出るそうです。
賭け碁を通じて知り合った萬屋の旦那源兵衛はケチでやなヤツだったけど、格之進の高潔さに感化され変ってゆくのです。
身分も立場も違う2人が囲碁を通して交誼を結ぶの良きかな。
とここまでは落語原作らしくほのぼの調なのですが、彦根藩士・梶木左門(奥野瑛太)が訪ねて来まして、格之進が藩を追われたのは柴田兵庫が濡れ衣を着せていたと知らされ愕然。
しかも格之進の妻が自殺したのは柴田に凌辱されたのが真相でしてね、許せん柴田を討つわとなった格之進が、藩への復帰を促す梶木の話にも耳を貸さず復讐の旅に出ようとした矢先、萬屋で50両が紛失し格之進が疑われる事に。悪い事って重なるもんです。
ヘラヘラ愛想笑いの中川に疑われ、それまでのほほんとした仏面で優しかった草彅にスイッチが入ると鬼の形相となりバチクソ怖い人になって緊張が走ります。
自らの潔白を示す事ができない格之進は武士の一分を立てるために切腹しようとするのです。
それを止めたお絹はよせばいいのに自分が50両を用立てると吉原に身売り。
親父が親父なら娘も娘でして、個人の幸せより親の為に犠牲になるのが美徳なのは現代人は理解に苦しみますが、娘が身を売って亡き妻の復讐を遂げようとする武士の意地にも困ったもんです。
ってなわけで、ここから落語の人情長屋物から一転して仇討ち物へとシフトするんですがな。
憎き柴田を探す旅に出た柳田格之進は、後で金に困って刀を売りはらい脇差しか持ってなかった事がわかるほど貧しいんです。
ですが復讐に燃える男の情動を演じる草彅がかっこよく、渡世人風の道中合羽に菅笠を合わせたセンスもよくて往年の東映時代劇の股旅物を見るようでした。
温厚で優しげに見えた前半と打って変わり、格之進のように愚直に武士道に囚われた人は闇に落ちるおっかなさを孕んでるものです。
あの時代にそんなに囲碁が盛んだったのだろかと思ったけど、各地の碁会所を訪ね居所を探し回りようやく柴田を見つけ出すんですが┐(´д`)┌ヤレヤレ 過去の因縁で格之進に斬られ足が不自由な柴田がシグルイ並みに無双するので仰天しますΣ( ̄ロ ̄lll)エエ⁈
また大晦日までに50両を返せばお絹は苦界に落ちずに済むので、仇討ちパートと並行してタイムリミットがあってハラハラさせる体だけどなんか話がよくわからなくなってしまうあたくし。
小泉今日子演じる遊郭の女将が刻限過ぎたのにアッサリ許してしまうのはどういう事なのかしら。粋な計らいにも程があるよ。
更に、全ての元凶ともいえる弥吉とお絹がラストに結婚って!アータ!取ってつけたような展開!格之進が旅に出るのになんだか娘を押し付けて行ったように見えてしまったのはあたしだけ?