あてくしコロナに罹り8月はずっと体調不良だったざんす。(;´д`)トホホ
ようやく癒えて来たので久々にマイブログを開きまして、とりあえずはリハビリがてら今kindle unlimitedで読める、谷口ジローさんの「風の抄 柳生秘帖」の感想でも書いてみるべ。
それにしてもコロナはヤバイのお。
もう1ヶ月もたつのにまだ咳が治まらぬ。
二度と罹りたくないので外出はマスク必須ですがな。
さて、「風の抄」。別題は「柳生秘帖」。
単行本のタイトルは版によって異同があり、いずれも「風の抄」と「柳生秘帖」を併せて用いているものの、順序が異なったりしている。「ヤングチャンピオン」(秋田書店)にて、1992年No.6 から1992年No.14まで連載された。(wikiより)
1992年か~(しみじみ)
90年代の谷口作品は「歩くひと」とか好きなのがたくさんあるんですが、これは珍しく時代劇でしてね、しかも主人公は柳生十兵衛なんでございます。
ふわっと説明しますと、時は慶安二年(江戸時代の初期)大和の柳生の庄から、ある物が盗み出されます。
それがっ!!柳生秘帖!
十兵衛の父である柳生宗矩は将軍家(家光)指南番ですが、これは表の顔で、裏の顔は諸国大名を監察する裏柳生の総帥です。
德川家の安定のためには裏で手を汚す者も必要なのだと語る宗矩から、「柳生秘帖を盗み出させたのは京の後水尾上皇しかおらぬ」と聞かされる十兵衛。
ミカドが!?なして??
幕府は天皇の権力を弱めるため様々な策を弄しまして、後水尾上皇は積年の恨みで幕府への憎悪が限界突破!ブチギレ寸前だったのです。
柳生秘帖って何なんすかね?
德川家の機密情報でも書いてあるのかな?
そこはまだわからないけど、十兵衛は父に命ぜられ隠密裏に中仙道を京へ上ります。
柳生秘帖を盗み出した上皇の手先を見つけ出して斬り、柳生秘帖を取り返すためです。
ってなわけで、徳川に不満を持ち天下に動乱を起こそうとする京のミカドが操る伏兵と柳生十兵衛が戦うアクション娯楽時代劇なのです。
あとがきにて「時代劇は初の試みだけど殺陣を描いてみたかった」とありましたが、「時代考証も含めたコスチュームの複雑さ、小道具の色々、脇差を腰に差した時の人物のバランス、帯の位置、着物の流れなど、想像以上の困難さでした」との事。いやいやいやいや作画はもう圧倒的にうまいから文句ないですよ。
示現流とか居合とか鎖鎌の使い手とか色々登場しますし普通に面白いです。
柳生一族から忍びから八瀬童子から松尾芭蕉から勝海舟まで出張って来るてんこ盛りのストーリーであります。
十兵衛の弟の六丸くん(後の柳生烈堂)がまだ前髪立ちの美少年なのに有能なのも感心します。
これが柳生新陰流の剣の構え「無形(むぎょう)の位」
構えなき構えで相手は打ち込もうにも打ち込めないのである
だがしかし!なんか盛りだくさんの割には盛り上がらないような気がする展開。
それは十兵衛が強すぎるねん。
薩摩の示現流がキエエエと襲ってきても、「すさまじい太刀行きの速さだ」などと冷静に分析した挙句にやすやすと倒しちゃうわけですし、居合術集団と戦う時も「兄上、私は居合と立ち会ったことがありません」と焦る六丸に「抜き打ちの第一刀はなんとしてもかわせ!そして初太刀が宙にあるうちに踏み込んで斬る!」とその場でレクチャーし苦もなくやってみせちゃうわけでして。
たとえば「バガボンド」の武蔵が吉岡一門とか宝蔵院槍の胤舜とか鎖鎌の宍戸梅軒とか次々と強敵と命のやり取りになる戦いをするけどめっちゃ面白いじゃん。
武蔵も強いけど相手も強いから面白いんであって、なのに十兵衛ったらもう!レベチ過ぎるから逆に盛り上がりに欠けるのよ。
柳生秘帖を盗み出した夜叉麿とかいう忍びが両刃の太刀で秘剣を使い、いい勝負をするんだけど、こやつとて十兵衛の敵ではないんです。
後水尾上皇に利用されてるんだけど、いつの時代でも高貴な人っちゅうのは情がないもんです。
柳生新陰流の有名な無刀取りという技は、刀に頼らず勝ちを得るという究極の技です。
無刀取りは自分も相手も傷つけることなく相手を制する技です。
十兵衛は終盤で活人剣なるものを編み出し、十兵衛と真っ向勝負しようとする夜叉麿の懐に入ってしまうので夜叉麿は戦えないのです。
つまり剣の立ち会いというものは、互いに一定の距離を取って一対一で戦うとか予定調和があるわけよ。それがめっちゃ近くに顔の横にピタっと十兵衛に来られちゃいかに秘剣でも振るえないわけよ。
こりゃあ戦えねえのお~
いやー天才剣士ってすごいんだなあと思いましたね。(夜叉麿がかわいそうな気がしてきた・・・)
しかしながらこの勝負なんか納得できないのは俺だけじゃなく夜叉麿もでして、すったもんだしてるうちに夜叉麿から相打ちにされ十兵衛は命を落とす羽目になるのです。
十兵衛は天下無双と畏れられながら慢心することなく謙虚に己れの技を磨き続けた孤高の存在だと思うんですが、読み手にどれだけ伝わったかは懐疑的です。
また、後水尾上皇とか何がやりたかったのか計画がショボいし、柳生秘帖なんてモノは思った通り名ばかりのどうという事はない代物のようです。おしまい