3月は体調不良でちっともブログが更新できず、なんかもういいかと投げやりになってたらあっという間に4月ですよ。
ところで朱戸アオ先生の「インハンド」完結したと思ってたら4年振りに最新作が出てて驚きましたわ。
まあ大喜びで購入し即読んだのですが、非常に面白く読みました。
「インハンド」は寄生虫がご専門の天才科学者・紐倉哲とその助手で医師の高家春馬が難事件を解決していく、いわゆる医療ミステリー系漫画なんです。
医療だけでなく生物科学系の専門知識も豊富に盛り込まれてまして、緻密なストーリー展開で読み応えがあるんです。
かつ、自己チューで支離滅裂な変わり者キャラの紐倉博士に振り回される相棒の高家とのやり取りも楽しい「インハンド」であります。
以前、山下智久主演でテレビドラマ化しました。
そして今作は遺伝子ドライブという最先端技術がテーマです。
遺伝子ドライブってなんだろう?
とある大学の研究室にて、遺伝子ドライブの研究者が毒殺される事件が発生します。
ボツリヌス毒素が仕込まれた高級チョコレートを食べたのです。
しかも残された手がかりから警察が推定した犯人が、よもやまさかの紐倉哲なわけですよ。
ってか、韓国アカン警察じゃあるまいし、被害者に毒入りチョコレートを郵送した差出人欄に紐倉哲って書いてあっただけでハイ犯人確定ってどうなん。
紐倉も「そんなに僕がバカに見えるのか!!」と違う意味でブチギレてしまい、警察から逃走してしまうんですが(相変わらずの自由人)真犯人を見つけ出すため独自に調べまして、実はアメリカとフランスでも同様の研究者毒殺事件が連続していた事を突き止めます。
彼らはマイクロバイオームや昆虫の忌避剤を研究していたと言うんですが、じゃ彼らと遺伝子ドライブの研究者との共通点は何なのか?
さて、遺伝子ドライブとは、特定の遺伝子を次世代に伝播させ集団全体の遺伝子を書き換えるというSFさながらの技術みたいです。
通常の遺伝では親から子へ50%の確率で受け継がれますが、遺伝子ドライブでは特定の遺伝子がもっと高い確率で受け継がれるように操作します。
たとえばマラリアを媒介する蚊ですが、蚊の遺伝子を操作しマラリアの耐性遺伝子を持つデザイナーズ蚊を作って、遺伝子ドライブで広めればマラリア撲滅できるんじゃね!?みたいな。
遺伝子ドライブすごい技術だけど、なんかコワイワー。
生態系への影響とか大丈夫なのかしらね。
遺伝子ドライブの研究者はマラリアを撲滅するための研究をしていましたが、海外の研究者も世の中の役に立つ研究をしていたようなのに、なぜにKILLされたのだろうか?
この難しい、しかも複雑なテーマを、専門的な知識を交えつつ読み手を引き込むストーリー展開です。
遺伝子ドライブの仕組みや可能性、危険性を、こういう専門的な事は素人には難解なものですが、俺みたいな理系が全然できない人にもわかりやすく読ませる技量がすごい。
紐倉が被害者たちの研究内容や人間関係を洗い出すうちに、事件の背後に潜む巨大でおぞましい陰謀に迫っていくんですわ。
左手がカッコいい義手の紐倉博士は天才的な頭脳を持ちながら、めっちゃ偏屈な人物でして社会のルールなんてものはこの人には関係ないんです。
そもそも警察から逃走したけども犯人を見つけようとか事件を解決しようとか思ってないよね。
なんかね、科学者として興味を持った事柄を解き明かしたいんだろうなって思う。
また一般常識や社会性がないからこそ、事件の本質を見失わないんだよね。
ピッキングして留守宅に侵入したり違法行為も平然とやらかしちゃうので、張り込んでた刑事さんもビックリしちゃいますが、天才ってこういうものかもしれんの。
天才的な頭脳と時に常識を逸脱する行動は我々を惹きつけてやみません。
一方そんな紐倉にいつも頭を悩ませているのが高家ですが、紐倉が気に入って助手に誘ったくらいだから優秀な人なんですよ。
けど真面目で常識人だから紐倉の言動には常に振り回されています。
警察の取り調べで紐倉の行方を聞かれても「俺にわかるわけない!あいつが俺の思った通りに動いた事なんて一度もないんだよ!」って叫んでましたもの。
しかも紐倉ってば、上から目線でものを言ってくるからすごーく腹が立つんです。
でも2人の関係は対等で高家の紐倉に対するツッコミは読者の気持ちを代弁してるようで思わず笑ってしまいます。
高家いてこその「インハンド」でございます。
加えて、紐倉がアドバイザーを務める内閣情報調査室所属の女性官僚・牧野や料理担当・潤月などの定番キャラとのコミカルなやり取りも良きですな。
科学技術の発展には光と影があります。
いつの時代のどの国でも科学技術は戦争に利用されてきました。
研究者たちの思惑や葛藤、事件の背景となる社会問題や人間の心理まで描写しながら、アフリカの民族浄化計画というゾッとするような結末にまで繋げるとは流石ですな。朱戸アオ先生。
次はどのようなテーマで俺たちを驚かせ、考えさせてくれるのかな。楽しみです。
あてくしも精進してブログの更新イタシマスワ。