
著者:惣領冬美
講談社モーニングKC
発売日:2025/7/23
うう、なんと美しい表紙・・・ウットリ
ってなわけで、惣領冬美先生の「チェーザレ 破壊の創造者」(2022年に13巻で完結)の番外編がコミックス発売されましたんで、なんか感想とか書いておきますね。
まずチェーザレ・ボルジアは、15世紀末から16世紀初めのルネサンス期のイタリアに登場した、教皇の息子として実権を振るい権謀術数を駆使した人らしいです。
キリスト教会の首長である教皇が皇帝をもしのぐ力を持っていた時代です。
ボルジア家は、父のアレクサンデル6世、チェーザレ・ボルジア、ルクレツィア・ボルジア(妹)など、権謀や毒殺など悪徳の限りを尽くした一族らしいです。
らしいと言うのは、あたくしチェーザレ・ボルジアについての知識が乏しく、実際何をした人なのかよく知らないんですが、「チェーザレ 破壊の創造者」という作品は10代のチェーザレの青春時代を描いていまして、パパが教皇になってさあこれからが面白いぞって所で連載が終わってしまったのざんす。
パパが教皇になったら、チェーザレ教皇庁をぶっ壊すって言ってたやん!?
さてあらすじ。
13巻ではコンクラーベでアレクサンデル6世が新教皇に選出されまして、ボルジア家に我が世の春が来たわけでして。
一方、チェーザレはローマでのボルジア政権が安定するまで、ローマ近郊の要塞都市スポレートに待機していました。
ってのが13巻のラストでしたが、今回はその続きで、スポレートに滞在するチェーザレの秘められた恋を描いた実に優しい美しいお話になっております。
ある日チェーザレはアンジェロを連れて鹿狩りに行ったんですが、鹿には逃げられるし、川に飛び込んでびしょ濡れになるわ、偶然出会った娘に山賊に間違えられて腕に噛みつかれるわ、さんざんでしてね。
ってか山賊って!?
その娘がビアンカといってまだ16歳なのですが、一緒に住んでた伯父が亡くなって今はひとりで暮らしてるってんで、こんな山の中で?とチェーザレは不思議に思います。
ビアンカは山でとった蔓で編んだ籠を売ったり農家を手伝ってわずかな現金収入を得、贅沢しなければなんとかやっていけるから大丈夫とあっけらかんとしてるんですが、女の子ですしチェーザレはやっぱ心配になりますわな。
それより何よりも彼女が読み書きができてラテン語も理解している事に驚き、それにどっかで会ったような気もするんです。
身分を隠し別れてからも気になってしまい、えーいもう一回行ってみようってんで馬を飛ばしまして、それはもう恋の始まりなのね。うふふ
ビアンカは田舎の素朴な娘で、チェーザレの周囲にはいないタイプなもんですから、彼女に何か高価な贈り物をしようとしても全く興味がなくて、オマエは何をしてやれば喜ぶんだよっ!と癇癪を起したら、薪割りしてくれたら嬉しいと言われ、先様は斧も持った事もないんですが薪割りする羽目になりましてね。
薪割りのお礼にと昼食をご馳走になったチェーザレは彼女から秘密の地下室を見せてもらいます。
そこには学者だった伯父が収集したすごい蔵書の数でして、亡くなる時に金に困ることがあったらここにある本を売りなさいって言われたんだって。
そしてビアンカはとっておきの一冊を出してきまして、伯父がこれだけは絶対手放すな誰にも見せてはいけないと言い残したってんですな。
でも何が書いてあるのかさっぱりわからないから見てくれない?と言われチェーザレも興味津々、秘密の地下室でチェーザレがうーむこれはギリシャ語だなどと言う側からビアンカが覗き込んだりとってもいい雰囲気ですの。
ところがところが、このご本が、マグダラのマリアがイエスの妻として描かれてる禁書だったんです。
この本は燃やしてしまった方がいいと言うチェーザレに、彼女がその前に読んじゃおうよと提案しまして、なんか当時の官能小説みたいな感じじゃないかしらね。
当然2人はドキドキな状況となり軽い口づけを交わし抱き合いますが、彼女が小さく「神様お赦しください」と言った所、チェーザレはハッとして我に帰り「その本は焼き捨てるんだぞ」と言い残し慌てて帰ってしまったのです。
アカンがな!女をその気にさせて!
とまあ、そんな感じなのですが、チェーザレの身分を知らぬビアンカが遠慮がなくて無邪気で可憐で良きかな。
対するチェーザレは大人の佇まいですが実はまだ17歳なんです~
昔の人は大人びてるものですが、30代くらいに見える~
1巻では1491年なんですが、13巻での時間軸の経過は1年くらい(漫画あるある)今回はそのまた1年後の1493年の話です。
時代はそれまでのキリスト教体制の変容と改革が呼び覚まされ、北イタリアで頂点に達したルネサンス文化とコロンブスの大航海が始まろうという壮大な歴史的背景の中にチェーザレの青春はありました。
新政権が樹立したとはいえ、情勢は予断を許さず、コンクラーベで揉めに揉めたローヴェレ枢機卿も不穏分子ですし、ボルジア家で固めたいアレクサンデル6世はチェーザレをヴァレンシア大司教に任命したばかりで今度は枢機卿にすると言います。
次から次へと重いお役目で大変だわね。
アンジェロやミゲルも健在で、勝手に出歩くなとお説教するミゲルとのやり取りも楽しいです。
チェーザレがビアンカと関わりを持たなかったのは、枢機卿の愛妾だったために娼婦と揶揄された母を見てきたからだろうと打ち明けるアンジェロの言葉にそうだったかと納得する。
だがそれを聞いたビアンカは女の直感で「あの方の中には別の誰かが住んでいる」と言います。
チェーザレの中でビアンカの笑顔がルクレツィアと重なる思わせ振りな描写に読者はヤキモキするでしょうな。
不穏で何かが起こりそうで結局何も起こらないんだけどね。
何かが起こる前の密やかなチェーザレの青春です。
美麗で繊細な絵柄も相変わらず素晴らしいです。