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大人の漫画読み

漫画/「離婚しない男」大竹玲二 ネタバレ

妻の不倫を知り離婚したいけど娘の親権は欲しい夫。

しかし現実は「父親が子どもの親権を勝ち取れるのは1割!」と、親権を男親が取るのはほぼ不可能。

浮気された男が娘の親権を得るために戦う、親権争いコメディ。

(大竹玲二「離婚しない男」既刊3巻講談社ヤンマガKC)

あたしは結婚生活とか子育てとか不倫とかを扱った漫画は守備範囲になく、正直言って食指が動かないのですが、テレビドラマ化されてたので読んでみた次第です。

さて大手新聞社に勤務する岡谷渉は、これまで築いたキャリアを捨て在宅ワークに切り替え突如イクメンとなったのですが。

ひとり娘の心寧(3才)のために慣れない弁当を作り、幼稚園に送り迎えをし、一見すると素敵なイクメンとなった渉には実は綿密な計画があったわけです。

それは結婚して4年目の妻・綾香の浮気を目撃したためでしてね、妻は専業主婦なのに家事はいい加減、不倫相手との大量浮気メッセージの証拠も見つけるにあたり(人のスマホは見ちゃだめよー)チクショー俺が仕事で駆けずりまわってる間に男とやりたい放題かよ!もう愛は冷めたぜ!とばかりに渉は離婚を決意。かつ心寧は絶対妻には渡さぬと心に誓ったのであります。

 

それなのに、離婚相談に行った財田弁護士からは「親権獲得は無理」とけんもほろろでして。

そもそも母親が不倫してるからと言って、「じゃあ親権は父親に」とは絶対ならないってんですな。

浮気相手とやりまくってる女でも「母性優先の法則」っつって、子どもは父親よりも母親と暮らすのが望ましいと昔から考えられているんだって。

なんか理不尽ですなぁ。それに古臭いような・・・

更に「今の日本では父親の親権獲得率はわずか1割」だと指摘され、簡単に親権を取れると考えていた渉はショックを受けます。

そこへ現れた探偵の三砂から「裁判でも使えるちゃんとした証拠集めをした方がよい」と勧められ(浮気調査は金がかかるけど探偵に依頼して協力を仰ぐのが基本)こんな事で親権をあきらめるものかと思い直しプロの探偵に依頼するのです。

 

渉は綾香と不倫相手マサトの浮気現場の撮影に成功し(かなり胸糞ですぜ)財田弁護士からは離婚前の養育実績を積むようにとアドバイスされます。

養育実績とは、これまでどのくらい子どもに関わってきたのかを証明するものです。

普段誰が子どもの面倒を見てるかと言われれば、専業主婦の綾香の方が有利に決まってますから、そのために渉は在宅ワークに切り替え「今まで綾香は大変だったから楽をさせてやりたい」などと上手い事を言い自分が育児の大部分を担うのが作戦。

親権を取るために妻よりも自分が子どもに関わって来た既成事実を作るため、主人公が1年かけて耐え抜くストーリーになっています。

内心では「この浮気女が!」「クソが!」とか罵りながら、全く浮気に気づいてない振りで優しく温厚なイクメンを演じるのが見所のブラックなコメディ漫画です。

これは皮肉なことに、他人から見ればすごい幸せそうな家族なんですよね。

やっぱイクメン、家事メンって理想じゃない?知らんけど。

仕事そっちのけで慣れない家事に奮闘する優しい渉(振りだけど)に、綾香は増長してけなしてばかりなんですが、ホントになんで結婚したんだろ?

幸せな時期もあったはずなのに、結婚生活は夫婦にしかわからない事があるんだろうけど、この嫁は頭悪そうだし尻軽すぎて同情する気になれませんのお。

それにマサトと一緒に心寧を子役にしようと企んでるんですが、娘を猫可愛がりに可愛がるだけで、汚れるからと公園でも遊ばせないとかチョット考えてしまいます。

 

あとマサトの仕掛けたハニートラップでドタバタ&結構エロな展開になりまして、心寧の幼稚園の巨乳ドジっ子新人先生やマンションの隣室に越してきた薄幸な女風の美女やわけありJKが登場し、何?この週刊誌のネタみたいな世界は?と多いに賑わいましたな。

そこでマサトの正体がわかるというね。

とんだクズ野郎かと思ってたら違くて、彼の生い立ちや渉との経緯を知ると、うぐぐ、これはただの不倫ではなかったんだな。

彼は父親(父親と言えるかどうか)の身勝手で苦労して生きてきたかわいそうな子どもだったんですが、これは思いがけない方向へ行きましたね。

あとまあ不倫に至るまでの綾香の専業主婦の閉そく感とかは理解できる気がしましたし、ラストで仕事ばかりで家庭をかえりみなかったと反省した渉が、「もっとちゃんと話しあえていれば」と悔いるのもフツーにヨカッタです。

結局の所、離婚の1番の被害者は子どもなんですよね。

この家庭の場合は、夫婦は心寧の前では仲の良い振りをしているのですが、2人の心が離れている事に彼女は小さくてもなんとなく気づいているんです。

子どもは親が思っているよりもずっと利口なんですよ。

 

男親からの親権問題をテーマにした珍しい作品でしたが、あたしも離婚したら子どもは母親と暮らすもんだと何気に思ってました。

よく離婚後の養育費を父親が払わないって聞きますが、父親って薄情だなと思ってました。

でもこの漫画を読んで、親権を失った父親は子どもを取られた(そのうえ、金も取られる)と感じてるのだろうか?などとも思いました。子どもに会えないのに金だけ払うのはやかも。

今度政府は離婚後の共同親権を導入するそうですから、離婚しても父親と母親が協力して子どもを育てる事が出来ればいいですよね。

アメリカ映画とか見てると、アメリカ人は離婚に対して恐ろしくドライでこだわりがなく、元配偶者の再婚相手と顔見知りで親しくしたり、週末は再婚相手の家に自分の子どもを迎えに行ったり、日本人にはとても複雑に思える関係もアメリカ人は気にしない。

きっと子どもを愛してるのは自分だとアピールしたいんだろね。日本人は見習おう。