akのもろもろの話

大人の漫画読み

小説

「前髪の惣三郎」新選組の男色騒動 /司馬遼太郎 新選組血風録より

「新選組血風録」は司馬遼太郎が60年代に書いた傑作で、新選組を題材にした短編集です。 各話は、新選組に実在した人物あるいは架空の人物を主人公にした群像劇となっており、隊内に巻き起こるドラマに定番キャラの土方歳三や沖田総司が絡んでくる構成です。…

読んだ本の感想まとめ(箇条書き)

最近の読書傾向ですが、ちょっと何を読んだっけか?ちっとも思い出せない。 今は読書メーターとか使ってないし、何も書き残してなかったので、読んだはずの本の題名はもうすっかり忘却の彼方でして、けっこうヤバイ。 とりあえずkindleのライブラリと購入し…

梅安乱れ雲 仕掛人・藤枝梅安 (五) 池波正太郎/BL日記④

北山彦八と田島一之助 (池波正太郎「梅安乱れ雲」仕掛人・藤枝梅安⑤) なんといってもシリーズ最大の悪役は白子屋菊右衛門です。 菊右衛門は大阪から京にかけて一大勢力を持つ香具師の元締めでして、江戸進出を企み音羽の半右衛門と対立しています。 かつて…

本/「熱源」川越宗一 感想

「熱源」は第162回直木賞受賞作。 樺太アイヌの闘いと冒険を描いた群像劇ですが、主たる登場人物は二人。 アイヌのヤヨマネクフとポーランド人のブロニスワフ・ピウスツキです。 (川越宗一「熱源」) アイヌは北海道にだけ住んでいたわけではないんですよ …

本/「贅沢貧乏のマリア」群ようこ

1987年に84歳で亡くなった作家の森茉莉は文豪・森鴎外の娘。 軽妙な語り口のエッセイを書く群ようこが1996年に発表した、森茉莉の生涯を辿った伝記小説。 (森茉莉 1903年~1987年 小説家・エッセイスト) 森家の長女として生まれた茉莉は蝶よ花よと育てられ…

本/「夜を賭けて」梁石日 感想

梁石日(ヤン・ソギル)は1936年、大阪に在日朝鮮人二世として生まれまして、代表作である「血と骨」で描かれた通りの壮絶な少年時代を送りました。 22才の時、旧陸軍大阪造兵廠(ぞうへいしょう)跡の鉄屑掘りで勇名を轟かせた集団「アパッチ族」に参加し、…

本/「聖の青春」大崎善生 感想

「聖の青春」(さとしのせいしゅん)は将棋棋士・村山聖の一生を描いた、2000年に刊行されたノンフィクション小説 (村山聖/1969年~1998年/将棋棋士) まず初めに、わたくし将棋は、子供の頃にお父さんに駒の並べ方を教わった程度ですが、この作品は将棋の知…

本/「星の子」今村夏子 子供の世界はとても悲しい

「星の子」は、「むらさきのスカートの女」で芥川賞を授賞した今村夏子の2017年の長編小説。 病弱な娘を救いたい一心から両親が新興宗教にのめり込み、次第に崩壊していく家庭を、娘の視点で描いている。 (今村夏子「星の子」) ちひろは、生まれた時に体が…

本/「羆嵐(くまあらし)」吉村昭 人間はもっと自然への畏敬の念を持たねばね

「羆嵐」は1977年に刊行された吉村昭の小説 1915年(大正4年)に、北海道苫前群苫前村三毛別六線沢の開拓村をヒグマが襲った「三毛別羆事件」がモデルになっている (吉村昭「羆嵐」) 北海道苫前村六線沢の開拓集落の一つ、島川家がヒグマに襲われ妻と9才…

本/「街道をゆく 42 三浦半島記」司馬遼太郎 鎌倉殿の13人を見てるといっそう楽しめます

「街道をゆく」は司馬遼太郎による紀行文集。 街道・みち、すなわち交通に着目し、その土地の歴史を独自の視点で語るシリーズの42は、三浦半島の巻。 そこには源頼朝と伊豆、房総、そして三浦半島の武士たちとの出会いがあったんだよねー (司馬遼太郎「街…

映画/「人間の証明」母さん、僕のあの帽子、どうしたでしょうね?

人間の証明は1977年の日本映画。 森村誠一の同名小説を映画化した作品。 日本とニューヨークを舞台に繰り広げられるサスペンス。 (「人間の証明」佐藤純彌監督/1977年/132分) まずはふわっとしたあらすじですが、東京赤坂のロイヤルホテルでは今まさに…

本/「雪の花」吉村昭 こんなにご苦労されたとは

雪の花は吉村昭が1988年に発表した小説 江戸末期に天然痘の予防に力を尽くした笠原良策が主人公 福井藩の町医者である良策が27才~40代まで戦った保守的な地域の天然痘ワクチン接種忌避問題 天然痘は伝染力が非常に強く死に至る疫病として人々から恐…

Audibleデビューして宇佐美りん著「推し、燃ゆ」を読んでみた

日頃メガネかコンタクトなのですが、このところ眼精疲労が酷いあたしは「聴く読書」ってどうなん?と思いつき調べてみたら、今ならAmazonプライム会員3か月無料で聴き放題じゃないですかやだー、ってなわけでAudibleデビューしちゃいました。 いやーよいで…

本/「はなれ瞽女おりん」水上勉 生きるということ

水上勉はミズカミツトムと読むんだよ。 水上勉が1975年に発表した小説。 ずいぶん昔に読んだのを再読いたしました。 今読んでもすげえ面白い。いや面白いって話ではないんだが・・・心に沁みる悲しい作品。 瞽女とは、昭和の高度成長期頃まで実在した、…

本/「運転者 未来を変える過去からの使者」喜多川泰イライラしてると幸せになれないよ!

「ミステリーと言う勿れ」の新刊が出たので感想を書こうと思ったけど、全然まとまらないので昨日読んだ本の感想でも書いとこ。 (喜多川泰「運転者未来を変える過去からの使者」 あらすじ 保険会社の営業に転職した岡田修一は、思うような成績が出せずパッと…

本/「家康、江戸を建てる」門井慶喜

「北条家の旧領関東240万石をそっくり差し上げよう。お受けなされい」 天正18年、落ちゆく小田原城を眺めながら、関白・豊臣秀吉は德川家康に告げた。 「・・・・・・・・・・」家康沈黙。 家康は駿府城に戻り家臣たちに相談したが皆口をそろえて「断固…

本/「李王家の縁談」林真理子

いつの時代も高貴な方々の結婚はむずかしい・・・梨本宮伊都子妃は、娘・方子女王の結婚相手探しに奔走していた。なかなか身分の釣り合う婿が見つからないのだ。 (林真理子「李王家の縁談」) 好きな者同士が結ばれるのが幸せ、などというのは、何も持たぬ…

本/「東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか」中村淳彦

家賃は高く地域の縁が薄い東京暮らしはつまづいて貧困に陥りやすい。東京の貧困女子の心の叫びを個人の物語として丹念に聞き続けたノンフィクション。東洋経済オンライン1億2千万PV突破の人気連載の書籍化。 (中村淳彦「東京貧困女子」) 今の日本で貧困…

本/「リボルバー」原田マハ

(原田マハ「リボルバー」) 誰が引き金を引いたのか? 「ゴッホの死」。アート史上最大の謎に迫る、著者渾身の傑作ミステリ。 高遠冴はパリの小規模なオークション会社「キャビネ・ド・キュリオジテ」通称CDCに勤務している。 パリには大小いくつものオーク…

本/「一度きりの大泉の話」萩尾望都

(萩尾望都「一度きりの大泉の話」) はああ驚いたのお。 こういう事って、才能あるクリエイター同士が切磋琢磨していたら結構ありそうな気はする。 だけど50年も前の話をよく活字にしたなあと思って。 萩尾望都や竹宮恵子の世代は前を走る女性漫画家がい…

本/「我らが少女A」髙村薫

(高村薫「我らが少女A」) 年の初めと言うにはもう遅い。なんとなく本の感想とか書いとこう。 これは2019年に発売された合田雄一郎シリーズの最新刊。 あたしが愛してやまない合田氏は本作では57才となっており、警察大学校の教官となっていた。うう…

本/前髪の惣三郎(司馬遼太郎「新選組血風録」より)

(司馬遼太郎「新選組血風録」) 「新選組血風録」は司馬遼太郎さんが60年代に書いた傑作で新選組をテーマにした短編集だ。 各話は新選組に実在をしてた人や架空の人を主人公に据えた群像劇で、新選組に巻き起こるドラマに定番キャラの土方歳三や沖田総司…

10月の覚え書き/「日本の四季がなくなる日」

今月も終わりだから、10月の出来事や読んだ本・漫画・見た映画など忘れないように残しておこう。 先月は仕事が忙しくて休日が少なかったけど、今月は平穏。 でもなんか疲れが取れない。 老化でしょうか。 10月某日、カレーを作ろうと思い材料を買いに行った…

本/「アイヌ文化で読み解くゴールデンカムイ」 中川裕

本書は、野田サトルの漫画「ゴールデンカムイ」のアイヌ語監修者にしてアイヌ文化研究の第一人者である著者が、漫画の名場面を引用しながら解説を行った唯一の公式解説本にしてアイヌ文化への入り口となる入門的新書です。 (中川裕「アイヌ文化で読み解くゴ…

本/「サブカル勃興史 すべては1970年代に始まった」中川右介

2010年代に入ってからウルトラシリーズ、仮面ライダー、ガンダム、あるいはベルバラ、ポーの一族などが40、50周年を迎えている。逆算すれば分かるが、これらの大半は1970年代に始まったのだ・・・・ (中川右介「サブカル勃興史すべては1970年代に始まった」…