人口冬眠から舞鶴太郎が目覚めたのは5百年後の地球だった。未曽有の大寒波により地球は壊滅。高度な文明が滅びた後の人々は原始的な暮らしをしていた。イラクから日本まで徒歩で目指す男が目撃するグレイトジャーニー。
5百年後でも、人は搾取する者に支配されていた
遅ればせながら2月22日発売の第6巻を今さらレビューでございます。
まずはパルとトゥルンの壮絶な死闘からです。
トゥルンは村で一番強い大女。
力比べでトゥルンに勝つ➡パルが村長になる
つー計画なんですが、女性とは言えトゥルンはパルよりもかなりデカく強敵です。
でありますが、巨乳だし豊満な体でこういうのが好きな男性は一定数いる。たぶん。
二人は激しくぶつかり合い、パルの背中が地面につきそうになります➡地面についたら負けなのよ。
耐えろー!!パル!
スゴイ体勢(笑)
ところがところが、この状況下で、パルを組み敷いてるトゥルンの顔がいつしか恋する乙女になり、パルのキスを待つような表情に変わるんです。
なんかもー読んでて恥ずい・・・
あたしが恥じらってどうすんだって話ですが。
人は戦ったり命が危うくなったりする時にはホルモンが沢山出るらしいのです。
しかしながら、たとえどのような体勢であっても、こうなったら男が誘いに乗るのは当然でありましょう。
パルは自分からキスをし、トゥルンを押し返す形で地面に押し倒したのであります。
パルの勝利にヤープトマーを賭けてた者ども、一斉に声が上がります。やったぞ、やったぞ。
大騒ぎの中で興奮が止まらない両者はすごい勢いでまぐわり出すのでした。
やれやれ、おおらかな事ですな~
さてそこへマリョウ兵団が登場しまして、兵団長がしたり顔で「ヤープトマーを持ってる者はすべて捕らえろ!」と命令するのですが、ざわつく人々にハッタは叫びます。
「ヤープト村の村長らも祭職者たちの半分もマリョウの言いなりだ。俺たちもお前らも税を吸い取られるだけの奴隷だったんだ!!」
労働者階級よ立ち上がれ!と、ハッタは言ってるわけですが、イマイチみんな反応は薄い。意味がわからんのじゃ。
その時、太郎がヤープト村兵団と共に駆けつけて来ます。
立場が悪くなったマリョウ兵団長は兵を引くと見せかけて太郎を殺害しようと謀ります。
次の瞬間、マリョウ兵団長を刺す村長 それも口の中
武器は木の杭です
村長は太郎をかばってマリョウ兵団長に襲いかかったのですが、相打ちとなり死んでしまいます。
太郎を守る事は、村長として村を守る事と同義だと判断したんでしょうな。
山田芳裕さんの作風であるデフォルメ過多の人物の顔芸とも思える表情とか、汗や血が飛び散ったダイナミックでページからはみ出しそうな絵とか素晴らしいですよね。
また、メータは弟であるハッタに殺されます。
・・・そうして、村には平和が訪れました・・・
太郎は賭けゴルフや温泉三昧に興じ、村長となったパルはトゥルンとの間に子供が生まれています。
太郎もヤープト村に来てから2年なんですよね(遠い目)
元々はやり手の商社マンだったのに現在はサバイバル生活ですから、さぞやお疲れかと思いきや、今の方がぐっすり眠れるようになったんですと。
昔はいつも何かしら不安を抱えていたからよく眠れなかったと太郎は回想します。
昔、つまり5百年前の太郎の生活、それは今の我々の生活ですが、身近に「死」はありません。
だから「死」に対してなんだか得体の知れない漠然とした不安を持ってると思うんです。
けど太郎は多くの人の「死」を見た事で「死」に慣れて、死ぬ事はそんなに恐ろしい事ではないと実感するようになったようです。
うらやましい境地です。
そんなこんながありましたが、「旅に出る時が来た」と太郎がやっと言い出しましてね、ヤープトマーの発行権は祭司に譲る事とし、パルはトゥルンへ村長の座を渡します。
まあ村長は、流れ者のパルよりもトゥルンの方が適任でしょう。
パルはいい女性を見つけたものです(別れの時は菩薩のようでしたわ)
また、新しく作った法では、ヤープトマーの貸し借りに利子を取ってはいけないと決まります。
でもみんなまだ利子を知らん。
利子の歴史は貨幣の出現に先んじるとされ、たとえば魚を一匹借りたら、返す時にお礼もこめて2匹返したり(貨幣はないため実物利子)と、太郎はみんなが理解できるように利子とは何かを説明します。
けれどまだノンキでピンと来ないんだな。欲がないんだよ。
そんなに沢山マーを持ってたってしょうがないじゃん、どうせたくさん持つなら塩や麦や女の方がいいぜとか言ってその場は大笑いとなります。
まったくねえ、マー(金)の価値をわかっている太郎だからこそ、マー(金)に踊らされる人間の果てしない欲望を見て来た太郎だからこそ、今はマーに対して懐疑的なんですね。
物々交換の暮らしからマーがあれば何とでも交換できる事を知った彼らは、やがてマーを貸し借りして利子を取って儲けようとする者が出てくるかもしれません。
いずれそうなる事は太郎は想定済みなのですが、それでも彼らには絶対にマーの奴隷にはならないでほしいと考えています。
人の幸せは金だけじゃないんだぜ!
村を旅立った太郎とパルは、兄殺しで追放されたハッタを探して合流し、3人はマリョウに入り込みます。
ハッタは祭司の息子にして兄殺しの裏社会を生きる男です。
そんな彼が、太郎たちと一緒にマリョウのヤツらに一杯食わせた時のドキドキが忘れられないと言うので、なんかわかるわと思ったりして。
これもまた人の幸せに関係する事だと思うのですが、人間て我儘なもので平々凡々に暮らすだけでは飽きたらなくなっちゃうんですよね。
太郎がマリョウに来たのは、マリョウから独立したヤープト村が交易だけは続けられように交渉するためなんです。
うーん、勝手に独立しといて交易だけは続けたいとかマリョウがいいって言うかしら?
まあビジネスマン時代に培った太郎の交渉力に期待しよう。
一方、パルはマリョウに囚われた(わざと?)妹の行方を探しに来たのです。
でもマリョウって大都市でして、上級市民・下級市民・奴隷に分かれていて法や国の仕組みはすべて上級市民が決めてるっていうじゃありませんか。
ヤープトで貨幣経済が始まったと思ったら、凄い速さで国家が誕生してたのであります。
勉強になりますねえ。
マリョウの地図
今いるのはモンゴルのあたりですね。
もうここまで来たのに日本は遠いなあ。
日本の噂
人らしき者はいるらしいが化け物みてえなのしか住んでねえって話だ
海とかいう湖のでかいのに囲まれた土地でこっっちより暖かいらしいがよお、化け物に会うと身も心も冷たくなって生気失うってよ