akのもろもろの話

大人の漫画読み

漫画/「狼の娘」小玉ユキ (ネタバレ)

ある違和感を、ずっと抱えていた高校生の月菜

彼女は実は灰色狼

新たな出会いに導かれ、未知の世界に踏み出す青春ファンタジー

「月刊flowers」で連載中の「狼の娘」3巻が発売しました

(小玉ユキ「狼の娘」既刊3巻 小学館フラワーコミックス)


小玉ユキさんが描く女性キャラは気立てのいい美しさを持つ人が多いのですが、それはそれとしましても、悩めるヒロインの前に現れる2人のイケメンの恋のさや当てが、いやもうね、ケンカをやめて2人を止めて私のために争わないで状態でして、なんだろうもう、キュンしかないよ~(/ω\)イヤン

月菜は受験を控えた女子高生でしてね、抜群の身体能力を持つ彼女は、陸上部では高跳びの選手として活躍してたんですが、ずっと自分が抱える違和感から(跳躍力がハンパない)試合では人を驚かせないように力をセーブして跳んでいたんですな。

また、バイト先のステーキ屋で生肉を見たらゾクッとしたり、ああ私ったらなんか変だわって感じてた時に、端正で温厚な俳優にでもなれそうな美青年・颯(はやて)に出会いまして、彼はなんと黒い狼に変身できる狼人で、月菜に「君も仲間だ。同じことができるはずだよ」と告げるのです。

ええっ!私ったら人間じゃないの!?とショックを受ける月菜でしたが、山梨でワイナリーを営む颯の実家に招待され(けっこう裕福)彼の姉や甥っ子姪っ子も同居する狼人の大家族を知り、颯の優しさに包まれた月菜は、もう本当の自分を隠して生きるのは無理っ!あたし狼人として暮したい!ってな気持ちが昂ぶります。

ところが、そんな月菜の前に今度は白い狼が現れるわけで、こいつもイケメンなんだよな。オホホ<ここまで1巻>

 

白い狼は霧斗という名の青年で、月菜がまだ狼人界のルールをわかっていないために、「月菜は俺とつがいになるためにやってきた」と勘違いし、居合わせた颯とすったもんだがあるのですが、自己チューの俺様キャラに見えた霧斗がけっこう話のわかるいい奴で子どもみたいに無邪気だし、人間に育てられた狼人で今は一匹狼(紛らわしい文章)だと知り、月菜と颯は霧斗の住む山に会いに行ってみたりと3人なかなかいい関係になるのです。

しかしある日、月菜は狼になったまま人間の姿に戻れなくなるという緊急事態が勃発。この時は颯のナイスアシストもあり事なきを得ましたが、人間界で自分の本性を隠しながら生きて行くことに不安や恐れを感じ始めた月菜は、大学入試も蹴ってプンスカの母親と対立、もう学校や家には戻りたくないと家出してしまうのです。<ここまで2巻>

 

さて3巻では、颯の家のブドウ農園で働くことになる月菜ですが、颯の母は「お客さんじゃなく見習い社員として働いてもらうよ」と言ったり、「颯は月菜さんの部屋には出入り禁止」と言うなど、黒狼は人間社会に溶け込んで生きて来たせいか非常にキチンとした印象で好感ですよ、お母さん。

白い狼と黒い狼の対立構造なんざんすが、颯の父親は黒狼と白狼の長年の分断について研究していたそうで、ある時白狼について調べるため山にこもり戻って来た直後、自分の意志と関係なく狼に変身して人の姿に戻れなくなってしまい、段々意志の疎通ができなくなり野生化してどこかへ姿を消してしまったと言います。いと悲し

若い颯は一方的に白狼が悪いとは思いたくないと言うのですが、悪意を持つ白狼から呪いをかけられたと信じる母親もあながち間違ってるとは思えず、人と共生してきた黒狼とは違い白狼はいまだ謎に包まれております。

ところで月菜は灰色の狼で非常にレアな扱いを受けてるけど、フツー狼って灰色じゃないっけ?白や黒のが珍しい感じがするのでちょいと違和感でしたが、ストーリーから察して黒と白のハーフなんだろね。

あと変身したら服はどうなったのかとツッコミたい(笑)

一方、白い霧と共に現れるミステリアスな霧斗が2人に会いたくて来てみれば「この霧はオマエの仕業か白狼」と殺気だった颯の母と姉がバリバリ臨戦態勢なのが、ナルトの犬塚一族みたいでかっこいいんだってばよ。

それなのに戦闘を止めねばと考えた月菜が「私が霧斗についていけば」と余計なことを考えたために、霧斗にさらわれてしまうのです。何やってんねん!?

まあね、なんやかんやで若い子は大人で理知的な颯よりも本能で行動するワイルドな霧斗に惹かれてしまうのがお約束だよね。

でもでも老婆心ながら申しますと、女が幸せになれるのは颯だからぜってー。

なんぞと言うても月菜ちゃんには届きまへんが、ひとりぼっちで孤独な霧斗が月菜に頭ポンポンしてくれいと甘える姿に萌え禿げたり、ようやく月菜を探し当てた颯が息を切らしながら山を登ってきてもうキュン死しそうになったり、イケメン2人が愛おしすぎて、さすがだぜ小玉ユキさん。ウマい。

もちろん三角関係ばかりではなく、自分がどこから来た何者なのか?を探そうとするヒロインの葛藤と成長の物語なんです。

あと狼人が主題ですから、狼の野生や威厳や鋭い眼力や人ならざる者としての神秘的な世界観がもっと広がっていけばいいなと思いました。

小玉ユキさんの作品は安心安定の面白さです。