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大人の漫画読み

漫画/「デリシャス・アンダーグラウンド~国際人材バンクより」原作 石井光太 漫画 杉本亜未(ネタバレ)

月刊コミックバンチ(新潮社)で2023年に連載された「デリシャス・アンダーグラウンド」

日本で働く外国人が増加する一方、外国人労働者トラブルも後を絶たない。

身近にいるのにあまり知らない外国人労働者問題を知恵と勇気と美味で解決する漫画。

(原作石井光太/漫画杉本亜未「デリシャス・アンダーグラウンド」既刊2巻)

入管の漫画なんて読むの初めてだから期待してたら打ち切りになりました

まずはあらすじ。

物語は主人公の砂原中也が、川崎の外国人専門の人材派遣会社「国際人材バンク」に就職が決まる所から始まりますねん。

「人の役に立つ仕事がしたい」と漠然と考えていた砂原でしたが、会社はプレハブだし社長の金村は朝から酒臭く、社員は日系ブラジル人のペドロ(イケメン)とバイトのメイ(生意気)だけ。

メイは(中学生くらいかな?)不登校児で金村から言われてバイトしてるらしい。

「こんなに景気の悪い日本に外国人はなぜ来るのだろうか?」

砂原がペドロに素朴な疑問を向けると、「彼らに一番人気があるのは欧米、中東、アジアならシンガポール。日本はビザの取得が難しいうえに言葉も難しい。それでも給料水準が高いのが魅力」とのお答え。

海外に行き自分探しが趣味の砂原は、外国で体調が悪くなった時に言葉が通じなくても親切にしてもらった経験から「世界を知るとは人に触れることだ」なんぞと思っていたのですが、まあこれはこれでいい経験なんですが、ペドロに言わせれば「日本人は本音と建前が違うから、自分の日常に外国人が入り込んでくる事を簡単には受け入れない。自己実現したいとかならこの仕事はやめた方がいい。迷っても正しい答えも出ないし・・・」などと、甘い考えにやんわり釘を刺されてしまいます。しょんぼり

だがしかし、このプレハブ社屋の二階では、ランチタイムだけ社員食堂を開放して異国チックなビュッフェ形式のレストランをやっているのでして。(社長が外国人と地域の付き合いを深めようと始めた)

多国籍グルメな料理がめっちゃうまそうで、グリーンカレーやシェフ(シェフがおんねん)のチリクが自家栽培したホーリーバジル(本場タイのハーブ)を使ったガパオライスなんか絶品で、砂村はがっちり胃袋をつかまれちゃう。

自分に何ができるのかまだよくわからない砂原青年とちょっと風変わりな会社「国際人材バンク」の面々が、うまそうな料理の描写を交えながら、外国人労働者のトラブルに立ち向かう、という作品です。

1巻は、日本から出国したフィリピン人が中国の広東省に向かう途中、麻薬密輸容疑で逮捕され死刑が執行された事件で、妻が夫の無実を訴える話や、農家の畑のパクチーが大量に盗まれた事件とベトナム人盗品密売組織の話など、既視感のある興味深い内容です。

そして2巻は、入管に収容されているスリランカ人の兄を、心臓病なので病院に連れて行って欲しいと希望する妹の話です。

誰もが思い出すのは、2021年に名古屋入管で死亡したスリランカ人女性ウィシュマさんの事件じゃないでしょうか。

ウィシュマさんは体調不良を訴え続けたにもかかわらず、放置され適切な治療を受けられず亡くなったのですが、入管ではなぜ医者に診せなかったんですかね。

この作品の中でも、いくら妹が頼んでも聞き入れてもらえず、「急病人がいると通報があった」と何度も救急車が入管に来るのですが、入管からは門前払いされ搬送できずに終わります。

(ってか、苦肉の策で救急車を呼んでるけど、これは違う意味で問題なような??)

そもそも入管とはどんな場所なのか?

入管を描いた漫画なんて初めてですから、これは期待が高まります。

 

「外国人は煮て食おうが焼いて食おうが自由だ」

65年に法務省入国参事官が述べた言葉

 

処罰感情が基本の組織体質が特高から現在の入管にも受け継がれている

オーバーステイや1年以上の実刑を受けるなどした外国人は国外退去を宣告されるのですが、入管にいる人は何らかの事情で日本にいたい人です。

でも入管はそういう人たちに自分から「国に帰る」と言わせたいわけです。

つまり日本社会からは排除するという方向になってるようです。

それに問題なのは、収容は期限の定めなく行われているため、長期収容になってしまうんです。

ウーム、どうしたらいいの?

もー、入管ってヤバそうなとこだし、入管の闇に迫るのだろうかと期待して読んでたらこれが!よもやまさかの2巻で打ち切りでしてね。

漫画家の人のnoteを見たら、原作者の人とケンカしたとかではないが、入管に対して自分と原作者の考えが違うので2巻は自分で考えて描いたとのこと。

まあ大人の事情でいろいろあるとは思うのですが、打ち切りだから仕方ないとは思うのですが、主人公以外のキャラの掘り下げもないし(ペドロの過去が絶対わけありだと思う)各国の料理の話も折り込んでくるために肝心の外国人労働者のエピソードがあまり深く描かれてないんで物足りないかな。マキヒロチみたいな店の紹介がしたいのか、社会問題が描きたいのか、どっちつかずで残念な気がします。(エラソーでごめんなさいね)