akのもろもろの話

漫画大好きakの覚え書帖

漫画/「残酷な神が支配する」➆巻 萩尾望都 

ついに、ついにジェルミはグレッグを自動車事故に見せかけて殺害する事に成功したのであった。

ところが、その事故であろうことかサンドラが巻き添えになってしまったというね、ジェルミにしたらなんつー想定外の出来事か!

喜んだのも束の間で衝撃のあまりに動揺するジェルミを見てイアンは疑いだす。

でもね、ジェルミがグレッグの自動車に細工して殺したのだというイアンの主張は、まあ当然というか誰にも相手にされなかった。

もう、一人でも事故の真相を探ってやると思うイアンの前に、リンドンと名乗る保険会社の調査員が現れる。

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(萩尾望都「残酷な神が支配する」⑦巻より) 

 

あのクリスマスの朝に戻れたら 

二人はグレッグの事故現場に出かけ、リンドンはイアンの話を聞きたがった。

イアンはジェルミが間違いだと言って葬儀の日に泣いていた事、事故車のスクラップブックを見ていた事、前夜ガレージへ行っている事、事故の知らせを聞いて笑った事などを興奮気味に話した。

「物証がないからと言って許せない。自白させてやる!」と言うイアンの言葉に冷静に耳を傾けていたリンドンは、きみはジェルミをどうしたいんですか?と質問してきた。

イアンは激高しながら「あいつは人殺しだ!警察に捕まって刑務所に入って一生罪を償うべきなんだ!」と答えるのだが、物証もなく自白だけでは裁判も起こせない事はイアンだってわかってるのだった。

今更何をどうしたってもう死んだ人は帰ってこない。

わかってるけど、父を失った悲しみと思いもよらない展開にイアンは憤りを感じていた。

裏切られたような失望感だった。

イアンにとってはグレッグはいい父親だったのよね。

 

父はいい家庭を作ろうと努力していた。

だから俺とジェルミも家では父に協力しようと約束して、信頼していたのに・・・

 

「きみはその新しい弟を好きだったのだね。こんな事が起こるまでは」

って、リンドンは胸にズンと来る言い方をした。

突然の父親の死が受け入れられないのはよくわかる。

それ以上にジェルミに対して怒りながらも愛情を感じ始めているからこんなにも混乱してしまうんである。

その複雑な感情に気づいたリンドンは、ジェルミを脅して自白を強要してはいけないとイアンにアドバイスするのであった。

母親殺し 

イアンもつらいけどジェルミはもっと深刻なのよ。

死んだはずのグレッグがジェルミの前に現れ抱きしめられた感覚がいつまでも残っていたり、サンドラが目の前で燃えていく姿を見たりする。

もうメンタルやばいな。

母親殺しの罪悪感に苦しめられる。

罪の重さに耐えかねたジェルミは誰かにすべてを話してしまいたい誘惑にかられ、介抱するイアンに思わず「助けて!」と言ってしまう。

そうだ、ジェルミはずっと誰かに助けてほしいと願ってたんだ。

イアンはその「助けて」という言葉が妙に頭に残ってしまう。

 

翌日、ジェルミは学校で久し振りにウイリアムとすれ違った。

ジェルミは話してるうちにまた様子がおかしくなり、気分が悪いのかと心配するウイリアムに震える声で手を握って欲しいと頼むのだった。

ウイリアム優しい。

そんな二人をイアンは偶然目撃してしまい「あいつ俺に助けてなんて言っておいて誰にでもすがりつくんだな」とちょっと面白くなさそうなんである。

 

イアンは考えれば考えるほどジェルミの事がわからなくなる。

グレッグを殺された怒りよりもどうして犯行に及んだのかその理由が知りたいと思うのだが、誰に何を聞いても殺害の動機は見当たらない。

それに輪をかけて、大人しくて奥手なジェルミがあんな薬マニアのパンジーなんかと関わってたりウイリアムと訳ありげに寄り添ってるのが謎で、どんどんわからなくなってしまうのだった。

そしてジェルミはと言えば、イアンに告白したいと思いながらやっぱり言えないのだった。

そりゃ、あんたの親父に抱かれてたんだとかSMの相手をさせられてたとは言いづらかろ。

それだけでなくジェルミは、あの川岸で泣いてたジェルミを見てから何かと語りかけてくれたイアンの何も知らない目が、すべてを知ったら蔑みに変わってしまうだろう事を恐れたのだった。

自分のおぞましい秘密を打ち明けたら軽蔑されてしまうと考えたのだ。

告白しろ 

ジェルミが頑固に否定し続け、自分の思い通りにならないイアンは段々暴力的な気持ちになってしまう。

こいつをめちゃめちゃにして傷つけて死ぬほど殴りつけて白状させたいとか、息が止まるほどに押さえつけて骨がバラバラになるほど抱きしめたいとか思ってしまうのだ。

イアンは混乱してる。

それともグレッグの息子だからそうなるの?

しかしながら明らかにジェルミに魅かれているのだった。

グレッグのように暴力的に支配しようとするかと思えば、時折とても優しくてジェルミを悲しくさせる。

 

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(萩尾望都「残酷な神が支配する」➆巻より) 

 

 切ない・・・

ジェルミはこのままではいつか告白してしまうと思い、今度はイアンを殺そうと考えるのだった。

 

一方、イアンはパンジーに会いに行った。

パンジーはラリって校舎の屋根から飛び降り大怪我をして入院していた。

イアンはビビるパンジーを脅して、ジェルミにはサドの恋人がいて背中に打たれた傷があり痛み止めの薬を欲しがっていたと聞き出す。

 

その時ジェルミがやって来て「次の週末家に帰った時、池のそばのボート小屋に一人で来てほしい」と言ってくる。

すべてを話すと言うのだった。

 

リンドンに隠れて会話を録音してほしいと頼むと「自分がもし犯人ならあなたを殺す計画を立てる」と言われるが、イアンはジェルミはそこまではやらないと油断していた。

サンドラの日記帳

一見ジェルミの方が分が悪いように見えるが、その実ジェルミは自分の方が本質が見えていると思っていた。

ジェルミはグレッグの愛憎がどんな風に自分の肉体に向けられたか知っていた。

同じ欲情の炎をイアンの中に感じるのだった。

だが嫌ではなかった。

本当は殺したくないと思っていたのだ。

その日、約束の時間は夜10時だった。

ジェルミはあれこれと考えた末、睡眠薬を入れたコーヒーをイアンに飲ませ眠らせて殺害しようと考える。

 

ジェルミは睡眠薬を探す為にサンドラの部屋へ入るがそこでとんでもない物を見てしまうのだ。

それはサンドラの日記帳だった。

そこには、グレッグとの愛の日記ではなく流産したり火傷をしたり夫の浮気を心配したり心が休まる事のない不安ばかりが書き綴られていた。

そして、サンドラはグレッグとジェルミの事も知っていたのだった。

知っていながら助けてくれなかった。

ジェルミは呆然とするばかりであった。