akのもろもろの話

大人の漫画読み

漫画/「アンダーニンジャ」花沢健吾

太平洋戦争敗戦後の日本に、GHQが命じたのは陸海軍と内務省に対する「忍者」人員リストの提出及びその出頭であった。

戦争中、連合国を最も悩ませたのは「忍者」だったのである。

圧倒的科学力を誇るナチス・ドイツの科学者と日本の「忍者」の確保は、アメリカが戦後の世界の覇権を掌握する上での最大の関心事であった。

 

だが結局、すべての「忍者」組織はGHQにより解体させられ消滅した。

しかしながら現在でも「忍者」は秘密裏に存在している。

しかもその数は驚くなかれ約20万人だと言うのである。

忍者」の一部の精鋭は国家レベルの争いの裏で暗躍し、その最前線で忍びの技を発揮し暗殺や破壊活動任務に従事している。

その他大勢の「忍者」も国内の官民あらゆる組織に潜伏して極秘裏に国民を監視しているのである。ちょっとーこわいわー

 

その一方で、末端の「忍者」の中には職にあぶれる者もいた。

 

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(花沢健吾「アンダーニンジャ」既刊4巻)

 

とまあそんなわけで、主人公の雲隠九郎はボロアパートに引きこもるニートのような生活を送る下忍である。

そりゃあ20万人もいる組織の末端ともなれば、職にありつけない者もいるわな。

忍者って近代になっても組織革命はなく、相変わらずの上忍・中忍・下忍で構成されているのよ。まあそこが面白いんだけど。

仕事がないからって勝手にやめるわけにもいかず、抜け忍になる事は死を意味するのだ。たぶん。

だが九郎は仕事がないっつーだけで、実はかなりの使い手だ。

雲隠一族というのは、今は廃れてしまったけどかつては名門一族だったみたい。NARUTOでいう「うちは」みたいな?

 

この九郎なんですけど、無精ひげの青年で缶ビール飲んでるから30才位かと思ったら17才!Σ( ̄□ ̄;)だと言う。 

彼は9人兄弟の9番目ではなく一人っ子で、母親が九郎を産んですぐ「苦労をかける」と言い残していなくなったのを、父親が「九郎を書ける」と勘違いし出生届を出したんだと。

でも彼は言葉巧みで嘘がうまいので、母親が失踪したとか中学の頃は不登校だったとかの話はどこまで本当かわからない気がする。

 

そんな九郎に講談高校(ネーミング笑)への潜入という任務が下った。もちろん高校生として。

しかも転入試験まで3日間あるのでその間に「男性器の切断事件を起こしている外国人テロリストの討伐」を、直属上司的なキャリア(中忍以上)忍者・加藤から命ぜられる。加藤はいつも宅配業者を装って来る。

 

いやあ、一巻からかなり面白いんですよ(´艸`*)

忍者もの大好きなんで~

現代社会に忍者が生きているという設定はありがちではあるんだけど、17才で一人で金も職もなくてどうして生きてるんだという疑問は、人のいい大野さんというおじさんに巧妙に取り入ってて、ちょっとフツーの人には真似できないと思うんでやっぱ忍者だなあ、と。

まずもって話はユルユルと進むんですよ。

高圧的な加藤からノンキャリとか蔑まれ、抜け忍にならないか見張られてたり、冴えない九郎の姿は組織で生きる悲哀を感じさせるものの、実に食えないキャラなのです。

だいたい彼は大野さんの部屋に間借りしているのだが、冷蔵庫のビールを同じアパートの住人の川戸さんと二人で勝手に飲んでしまったりする。

川戸さんはイメクラに勤務する女性でいっつも酔っぱらっていて、大野さんはビールを飲まれた事を抗議したいが、自分も川戸さんのブラを盗み着用しているために強く言えないのである。

アパートの住人が楽しすぎるよ(^^)

九郎はチンコを切る外国人テロリストを早く見つけなきゃいけないのに、アパートの敷地から出たくないもんだからなかなか動かない。

 

九郎がグズグズしてる間に元キャリア忍者の佐々魔が偶然外国人に遭遇し戦闘になるのだが、佐々魔は近所の子供たちから母乳おじさんと恐れられる変態でいつも搾乳機で自分のおっぱいをしぼっているが、実はおじさんのがわを被ったお姉さんだ。

キャラが強烈すぎてチンコを切る外国人が一番まともだった。

この外国人討伐の任務が九郎だけでなく、編集者を装うくノ一となぜか九郎を憎む日々奇跡(奇跡と書いてミラクルと読む)の三者で争う事になる。

最後は九郎の一撃で決着がつくのだが、講談高校潜入のために支給されていたパーカーが摩利支天バージョン4という最新式でして、これは光学迷彩みたいに透明になれるんだけど日本国内ではフルスペックで使用する事は認められてないっつって、完全な透明人間じゃなくてパーカーを着てる上半身だけが消えてるのよ。

 

また吉田昭和(あきかず)という売れない歴史小説家が住むアパートの部屋に、深夜忍者が枕元で自分たちの過去の任務を語りに来るっていうエピソードが面白かった。

在ペロン日本大使公邸占拠事件、旧石器捏造事件、エアマックス狩り、温泉偽装問題・・・歴史の影には忍者が存在していて、彼らは自分たちの功績が歴史の中に埋もれてしまう事をひそかに嘆いているのだろうか。

機密だから明らかに出来ないけど、実はあれはオレがやったんだって言いたい気持ちはわかる気がする。

 

一巻で講談高校潜入の任務が下るのだが潜入したのは四巻なんで、この作者の作風として大きく物語が動くわけじゃなくユルユルと進んでくけど、設定がよく練られてるので冗長には見えない。

任務がないから暇で身を持て余しているのかと思えば、潜入先が学校で行きたくないとか、アパートから出たくないとかやっぱニートかよ!ってもどかしくてクスっと笑えるよね。これが現代忍者なのねーつって。

キャリアの人たちもそれぞれが組織の中の忍者として悩んでいるのもよい。

忍者の戦いが結構リアルなわりには、やはり忍者だから無闇に絶叫したりへんに昂揚してるとかはなくて、非常に淡々としている。

そのうえセリフ回しが気がきいてて楽しいのだ。

 

なんかこう技を磨いた覚悟を持った人同士が戦うのはいいよね。

あたしはバジリスク甲賀忍法帖みたいな忍者の戦いが好みだけど。

 

最新刊は4巻です。