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漫画/「私のことを憶えていますか」東村アキコ

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(東村アキコ「私のことを憶えていますか」既刊2巻)

芸能人ゴシップサイトのライターとして多忙な毎日を送る遥は独身・彼氏ナシ。

徹夜で働きお洒落する間もエステに行く間もなく、気づけば30才である。

ところが30才の誕生日に大ファンだった俳優・SORAの熱愛が発覚Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン しましてね、遥がショックを受けながらその記事をまとめていると、同僚女性たちから「遥の好みのタイプはみな同じ顔だよね」と指摘されちゃう。

言われてみると、SORAを始めいつも好きになるのは同じ系統の顔だった。

まあ好みのタイプって誰にでもあるからこういうのも別に珍しくないと思うけど、誕生日も徹夜となり朝帰りした遥は、なんでああいう顔が好きなのかと疲労困憊した頭で考えたのよ。

そして自分が今まで好きになった人の顔をあーだこーだと思い浮かべるうちに、ふと思い出したのである。

あの顔は小学6年生の時、自分が好きだった男の子・こうちゃん!あの子の顔なんだ!って。

こうちゃんは引っ越すと言って遥にキラキラ光るスーパーボールをくれ、遥の事を好きだと言ってくれたのだ。

なのに自分たら、こうちゃんは3年生だったから年上なのが恥ずかしくて何も言えなかった。

いやいや三十路になってみればね、三才年下なんて下でもなんでもないっつーの。ただのちょっと年下の男やんけ!

遥は思い出した。あれは完璧両想いだったのにって、こうちゃんは私のものだったのにって(笑)

もう彼が天使のように思えてきちゃって、こうちゃん今どこで何をしてるのかしら?きっとイケメンになってるに違いないわ。今の自分を見たらどう思うかしら。毎日仕事でボロボロなのに~。あ~会いたい!

 

とまあこんな感じの滑り出しでありまして、30才ともなれば仕事も忙しくやりがいも感じる反面、ふと自分のこれまでを振り返って自分の生き方は間違ってなかったんだろうかなんて考えちゃったりするんだよね。

無我夢中で仕事に打ち込んで来た遥は、気づくと30才で恋人もおらん。

そんな侘しい現実に、ついつい甘酸っぱい感傷に浸ってしまい、郷里に住む幼なじみで家業のワイナリーを継いだ猫作にこうちゃんを憶えているかと聞いてみたりするけど、会うとすぐ喧嘩になってしまう彼からは思うような情報も得られずあんな奴に聞くんじゃなかったわいと不愉快になる始末。

なんかもうこうちゃんがせっかく告白してくれたのが今更ながら申し訳なく切なさに身悶えるのだった。

そんな時SORA熱愛の記事の本人プロフィールの中に子供の時の写真を見つけた遥は目を疑っちゃう。

こうちゃんそっくりだったのだ。

そこへなんたる僥倖か、SORAの囲みの記者会見に遥が行ける事になりましてね、チャンス到来!とばかりこうちゃんなのか確認しようと緊張しながらも会えはしたが、向こうはまったくの礼儀正しいビジネスライクなので昔の面影があるような気もするけどはっきりしないのだった。

遥が自分の名前をフルネームで名乗っても反応しないし、似てるけどやっぱ違うのかなと思う。

がっかりして帰ろうとする遥は、SORAがルームサービスで猫作のワイナリーの山猫ワインを頼んでいるのを見てしまう。

こんな高級ホテルでわざわざ国産ワインを頼むなんておかしいとは思うものの、SORAがこうちゃんじゃないかと言うと猫作から「オマエ頭の中お花畑かよ。30にもなってそんな妄想するやついんのかよ。キモっ!」とか言われてしまうのだった。

 

東村アキコの新作で、「ピッコマ」と韓国の「カカオページ」でも日韓同時連載してるらしい。

漫画は紙派の小生は縦スクロールのウェブコミックはどうも苦手でして、なんだろうか読んでるそばから忘れてくっつーか、なんか頭に入らないんだよね。

紙のコミックもあるけどこちらはフルカラーなのでちょっとお高いから電子書籍を購入して読んでみましたよ。

でもちょっと東村アキコ節が弱いわあ。

独特のセンスとギャグテイストが魅力なのに少し物足りない気がする。

それに言い知れぬ韓流ドラマ感。

まあ韓国にも配信してるんだから仕方ないのかもしれないけど日本が舞台になってるのにリアリティ的にはどうなのかな、商魂たくましい感じがするだけで残念ながら作品としての新鮮さには乏しいよね。

 

猫作くんは遥が好きなんですよね。

彼は変な名前だけど、イケメンだし山猫ワイナリーの若社長で遥とは幼稚園小学生中学生高校まで同じだったという幼馴染。

なのに遥にはいじめられた記憶しかないから、無神経で馬鹿で優しくない男という認識しかない。

周りの人から好きな子の気を引きたくていじめてたのよって言われても、断固としてコイツは絶対違うと蔑視してまして、猫作の気持ちに気づこうともしないから彼も素直になれずいつも嚙み合わないのが笑えた。

他のキャラクターも巧みな造形で、遥が山猫ワイナリーの社長夫人になれば余生はワイン飲み放題だと二人をくっつけようと暗躍する遥の両親とか。

あと弟思いだけどカッコつける姿が寒いとか動作が古いとかツッコミどころ満載のSORAの兄も笑えたな。

空のギターケース背負ってたから小学生から「カッコつけマン」て呼ばれてたとか、中学では「自意識過剰マン」て呼ばれてたとかフツーに笑いましたな。

ずん子先輩の無表情キャラもいちいち面白かったです。

そんなこんなで物語の展開とか伏線を回収してくのもうまく安心安定の読み応えです。

新選さに乏しいとかエラソーですんません。

でも作品のテーマである初恋の切なさや、忘れられないあの子に対して今の自分はなんてつまらない大人になってしまったんだろうというほろ苦さみたいのは今一つで遥に共感するとこまではいかず、笑えてなんとなく読み終えちゃった感じ。

肝心のSORAについても不可解なままで、まだまだこれからだね。

彼は本当に初恋の人こうちゃんなのだろうか。

いやこうちゃんでしょ、どう見ても。