akのもろもろの話

大人の漫画読み

漫画/「消えた初恋」作画アルコ・ 原作ひねくれ渡

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(画アルコ・原作ひねくれ渡「消えた初恋」既刊5巻)

青木は隣の席の橋本さんに片思いしているのだが、橋本さんが貸してくれた消しゴムに「イダくん♡」と書いてあるのを見てしまいましてね、橋本さんが好きなのは前の席の井田かよっ!つってショックを受けるんだが、さらに井田がその消しゴムを見てしまい・・・

「えっ!?イダくんハート♡って、何それおまえ・・・」(すごい不審な目で)

ちげーよ、これは橋本さんのだよ!って言えばいいんだけど、そうすると橋本さんの恋心が公になってしまうじゃないですか。面白半分でからかわれちゃったりするかもしれないし。橋本さんはとっても優しくていい子だからそれじゃかわいそうだ!

そう思った青木は咄嗟に消しゴムは俺のだと嘘をつくのです。

いや青木もそうとう優しいんだけどね。

しかしこれにぶったまげたのは井田でして、そりゃそうだよねー

 

井田はまだ恋をした事がなかった。

だから青木に好きってどういう気持ちなんだ?と聞いてみる。

それで青木は橋本さんへの思いを真剣に語るんだけど、井田は自分への告白をされてると勘違いし、生真面目にも「友達から始めないか」と告げてくる。

何でだよっっ!?もお振られて終わりでいいのに、好きな子に幸せになってほしいから、井田が早く橋本さんの可愛さに気づいて二人が結ばれればそれでいいのに、クソ真面目な井田は「いやダメだ。お前のことをちゃんと知ってから返事したいんだ。ちゃんと考えるから待っててくれ」なんぞと言い出すのだった。

どないなっとんねんと奇妙な展開に戸惑いながらも、青木は橋本さんの恋を応援するためにあえて誤解を解かなかった。

 

そんな時に高校生活の一大イベント・文化祭があり、クラス演目は「シンデレラ」になり青木と橋本さんと井田とあっくんこと相多の4人は大道具係をやる事に決まる。

青木と井田と橋本さんの三角関係かと思いきや、実は橋本さんが好きなのは井田ではなくてこのチャラい相多だった。

アイダくん♡って書いてあったのにアが消えちゃってたのね、消しゴムだけに。

橋本さんが緊張したり赤くなったりするのは相多のせいだったのに、勘違いしてる青木は橋本さんと井田をなんとかくっつけようとする。

ところがあーだこーだと井田と接っしているうちに、青木ったらなんだか井田の事が気になってきちゃう。

井田は鈍感だけどいい奴だ。

自分の事なんかスルーすればいいのにいつも助けてくれる。

ミスをすれば「あんま気にすんなっ」つって頭ポンポンしてくるし、どうせ俺なんかと自分を卑下してれば「おまえは優しいよ。自分じゃわかんないだろうけど」と真面目な顔して言ってくる。

そんな風に自分を認められたのは初めてで、その上さりげなくカッコよくて、ナンダヨアイツゥって、青木は胸がキュンとととときめいてしまうのだった。

 

しかも文化祭お約束のアクシデント出来でシンデレラの王子役を井田が、シンデレラ役を無理矢理やらされそうになって困っている橋本さんの代わりに青木が演じる事になり、王子の衣装を着た井田が思わずカッコよくて、青木が井田にウットリしてたとかクラスメイトたちにからかわれると「青木はみんなのために頑張ってくれたのになんで笑うんだ」と、どストレートに庇ってくれるしで、もうね井田を好きだと認めざるを得なくなるというね。

 

好きな子から消しゴムを借りたら前の席の男子の名が書いてあって、それを庇った事から始まる勘違いコメディーで、も~始めの数ページから笑える。

彼女のために陰ながら愛のキューピッドになろうとしたのに、なんでだか加速度的に髙まってしまうBL感がおかしいやら微笑ましいやら。いやヒロイン青木可愛すぎか!

これは少女漫画誌の別冊マーガレットで連載されてるのだが、コメディー風味のBLって事でいいんだよね?

まずこの複雑な勘違い人間関係が非常にテンポ良いし、絵もきれいだし、井田くんはカッコいいし、さすがのクオリティーだね。

次第に勘違いが解けて二人はつき合う事となり、お調子者だけど純情な青木とイケメンなのに鈍感な井田、何事も一生懸命な橋本さんとなんかテキトーな相多、のカップルの物語へと移ってゆく。

 

この作品は面白いだけじゃなく素晴らしいとこが2点あって、まずホモフォビア的なものがまったくない。

橋本さんは青木が好きなのが井田だと知っても驚きもせず応援すると言い、二人はフツーに恋バナで盛り上がり励まし合うようになる。

相多は青木が井田を好きな事に気づくと本当の気持ちを言えない雰囲気を作ってしまったと謝まってくる。

井田が所属する男子バレー部の部員たちも非常に家族的で井田の初めての恋を応援する。

みんないい子たちばかりでなんて優しい世界なんだー

彼らは一様に純粋で思いやりがあって人の気持ちに寄り添える。

結局のところ誰かを好きになるのに男も女もないって事を素直に受け入れているんだよね。

そして2点めは二人が性愛とは程遠い事で、ポルノまがいのBLを見慣れた目には実に初々しくて清らかで可憐で胸がキュンとととときめいてしまう。

つき合ってはみたものの何をしたらよいのかわからない。

しかし手ぐらいは繋いでみたい。

初めて横断歩道の上で手を繋いだ場面はよかったのお

あ~尊いという言葉はこういう時にこそ使うのである。

しかしながらゲイである事を悩まないとこも、悩むのは二人の関係性なとこもまさにこれは勘違いBL典型的展開なんだけど、少女漫画誌だから今後もエロはないでしょう。

まあ好きな人は読んでください。おしまい。