akのもろもろの話

大人の漫画読み

映画/「ハウス・オブ・グッチ」

1995年3月27日。GUCCI創業者グッチオ・グッチの孫にあたる3代目社長マウリツィオ・グッチがミラノで何者かにより殺害された。

サラ・ゲイ・フォーデンの原作「ハウス・オブ・グッチ」をもとに、リドリー・スコットが映画化。グッチ一族の確執の中でおきたマウリツィオ・グッチ殺害事件を描くサスペンス。

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(「ハウス・オブ・グッチ」/リドリー・スコット監督/159分/2021年/アメリカ)

華麗なる一族の御家騒動

あたくしブランド品とかあまり興味ないんで、グッチも興味なくてですね、このような事件が実際にあった事は全然知りませんでした。

でもでもリドリー・スコット監督だからこれは見なくてはっ!と勇んで鑑賞。

いや~面白かったです。

ちょっと長いけど気になりませんでした。

あとレディー・ガガが好きになっちゃった。

 

そう言えばグッチと聞いて思い出す事がちょっぴりありました。

あれはもうウン十年も前の事なんですが、姉がグッチのバンブーのリュックを購入してとても自慢げだったのですが、一ヶ月もしないでバンブーのハンドルが壊れたとチョー怒ってました。

たしかブランド品安売りショップ(群馬では有名店)で9万円くらいと言ってたっけ。

いや直営店ならもっとするんでしょうけど、それでも9万が壊れるってなんやねん!とたまげたのを覚えておりますです。

 

実はそのバンブーのバック、劇中に登場したんですよ。

リュックじゃなくてハンドバックでしたが。

レディー・ガガ扮するマウリツィオ・グッチ(アダム・ドライバー)の嫁パトリツィアが、自分ちのメイドさんがグッチのバンブーバックを持ってるのを見て、どこで買ったか聞いて駆けつけると、露店で色んなグッチ商品が山のように積まれて売られてたんです。

いわゆるコピー商品ですわ。

それを見た瞬間、あたしは思いました。

姉のバックはきっとコピー商品だったんだ。(どうでもよいですね)

でもなんだか昔がよみがえって色づくような気持ちになりました。

 

パトリツィアアルド・グッチ(アル・パチーノ)にコピー商品を野放しにしていたらグッチのブランドイメージを損なうと強く訴えるのですが、アルドったら「俺がグッチだ!」とか言い出しちゃってまったくスルーなのです。

グッチ一族というのは、アルドロドルフォ(ジェレミー・アイアンズ)が2代目であり、アルドの息子パオロ(ジャレッド・レト)とロドルフォの息子マウリツィオが3代目ってわけですな。

最近映画出過ぎの感があるアダム・ドライバーが、いかにも苦労しらずのボンボンで穏やかで知的でいい人なんです。

それに対してパトリツィアは偶然パーティーで彼と出会うのですが、彼がグッチの御曹司だと知った時の、ガガの獲物を前に舌なめずりする感じときたらもう。完全に肉食獣の目つきだったよね。

彼女はクリムトの絵をピカソと言うような教養の無さで、ロドルフォからはすぐに金目当ての女だと見抜かれてしまいます。

でも3代目ってやっぱ世間知らずだし、彼女はとても魅力的なので反対を押し切ってパトリツィアと結婚しちゃう。

もうね、レディー・ガガがセクシーで勝ち気なパトリツィアにハマリ役でして、彼女の大仰な演技で最後までグイグイ引っ張っていくんですよ。

まったく独立自尊の気概っつーか、なんであんなに自信満々で押しが強いんだろね。

初めはそんな対照的な二人の恋物語で、80年代のファッションや車や音楽が楽しいんです。

しかしアルドの引きでマウリツィオがグッチの経営に参画しだしてから、なんか欲望が渦巻くビジネスの物語になってきます。

その影にはマウリツィオを操ってグッチに君臨しようとするパトリツィアの影が!キャ~!

でも悪女と一概には言い切れない気がするのは、グッチ家の人よりは経営の才能があったと思うんですよ。

彼女は実家の運送会社で経理をしていたし、グッチの持つ高級感あるブランドイメージの重要性も庶民だからこそわかっていたと思うんです。

でもアルドのやり方って事業を広げ過ぎてしまって、ブランドとしての価値が落ちてしまったようです。

ゴッドファーザーのオマージュみたいなアル・パチーノの口から「ゴテンバ」とか「モール」とか日本語が飛び出したのには仰天です。

まそういう海外進出にね、力入れすぎたのが良くなかったね。脱税もよくないし。

その脱税を息子のパオロ(ジャレッド・レトじゃないみたいな薄ら禿げ)が告発しちゃったもんだからアルドは服役する事になり、何を家族で足を引っ張り合ってんだって感じで、骨肉の争いで同族経営が揺らいでいく様子がよくわかります。

マウリツィオもいい人だけど経営能力はないし、パトリツィアがやり過ぎるもんだから段々鬱陶しくなって来ちゃうんです。「きみはグッチじゃない」つって。

結局はグッチは同族経営から巨大ファッション複合企業体へと変遷してくわけで、それはちょっと一つの王朝が滅んでいくような切なさでした。

 

うーん。何がいけなかったのかなあ。

同族経営は3代でつぶれると申しますが、まっことその言葉どおりですが、こういう原因というのは常に一つじゃないですよね。

色んな事柄が互いに絡み合い、ついに掛け算になって勢いが崩れていくものです。

でも一つだけ原因をあげれば、グッチ家の人たちの危機感の無さじゃないかしら。

みんな奢ってて身勝手で信頼感もなく、それぞれが別の方向を見ていると思った次第でございます。