akのもろもろの話

大人の漫画読み

漫画/「波よ聞いてくれ」⑨ 沙村広明

鼓田ミナレ(27才)は札幌のスープカレー屋「ボイジャー」の店員だが、ひょんな事から地元FM局「藻岩山ラジオ」でラジオパーソナリティーとしての道を歩み始めた。

晩秋に起こった北海道胆振東部地震の夜も一人で生放送を務め、ミナレは着実に成長を遂げている。

 

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(沙村広明「波よ聞いてくれ」9巻)

謎のイベント「バレンタイン・ラジオ」開幕前夜に、またもや事件が巻き起こっちゃう~

波よ聞いてくれっつーのは、ミナレがパーソナリティーを務めるラジオの番組名なんです。

海とか関係ないやんけ!と最初は思ったのですが、波って電波の事だったのかしらね?と今更ながら気づくというね。

さて、めでたく放送枠が50分に拡大されたミナレの番組の記念すべき第1回のゲストのイギリス人ですが、エッグ・ベネディクトと缶バッジを合わせたような名前のイギリス俳優似(笑)のトーマスが、缶ビールを飲みながら雑談して彼女の魅力を引き出していくのかなー?と思ったら、酔っぱらってイスから転げ落ちてました。生放送中に。

トーマス実は酒が弱かったようです。

あたしは飲むとなんか顔が白くなるって怖がられるんですが、すぐ顔が赤くなる人はガンになりやすいって言いますから注意しましょう。(脈絡がない文章)

トーマスはラジオ番組の制作会社の取締役をしながらコミュニティ放送局も運営しているらしい。

彼はぶっ倒れる前にこんな事を言ってました。

アナタは、30年前に、ラジオ業界がこうなる事を、予測してイマシタか?

 

そんな意味深な滑り出しの一方で、ボイジャーには奇妙な女性客が訪れていました。

土曜の夜営業開始と同時に来店し4人前はあろうかという量をひとりで注文する女。

やおら取り出したジューサーで注文した料理を混ぜ出しまして、出来上がった液体(ま、カレースープですな)をボイジャーの麗人・マキエに一息に飲み干せと強要。

待て!それを飲んではいかん!!毒が入っている!!

 

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ど、毒じゃなかったけど・・

 

マキエ嬢は顔が火照り、息が乱れ、腰が抜けてヘロヘロなご様子。

彼女いわく、カレーに使用するスパイス類には、強壮、血行促進、泌尿器系温暖、女性ホルモン活性化、興奮刺激、子宮運動促進など様々な効能があり、これだけの食材を一度に摂取できるカレー屋は理想的なのだそう。(そうなの?)

是非マキエにインタビューさせてほしいと言い出しますが、尋常じゃないマキエの状態にふざけた奴だと出入り禁止になりました。

いやークセが強そうな新キャラがまた登場したねー。

 

そうしてミナレはと言えば、麻藤からトーマスのラジオを一度聴いてやってくれと乞われまして、しかしいまだにガラケーなんで海外ラジオは聴けない彼女に麻藤がすすめたのがコレ!

 

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スカイセンサー5900

 

えっ!ラジオ?なんかカッコよ。

小生よく知らんのですが、スカイセンサーは1970年代に販売されたソニー製のポータブルラジオで、海外の放送局を受信して楽しむBCLが日本で一大ブームになった時の人気機種である(wiki調べ)そっかー、そんなブームがあったのねー

しかも70年代~80年代のBCLブームの主役は小学生から中学生などの若年層であった。へー

しかし1976年に郵便料金の大幅値上げがありBCLブームは下火に。どゆこと?

BCLブーム終了後の日本の小中学生はテレビゲームやパソコンなどに関心が移って行った。なるほどねー

 

これはイギリスのBBCの国際放送の中に間借りしたトーマスの日本語放送を聴くには最適のブツだったようです。

自分たちが知らない所で、海外の人たちが北海道胆振東部地震の被災者へエールを送ってくれているのを聴いた瑞穂は感激して涙ぐんじゃう。

なのにミナレときたら、あいつがこんな真面目な番組を作れるわけないよっ!と懐疑的でしたが、またゲストに呼ぼうと二人は相談します。

 

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二人はこんな感じで寝てます

寝る前のおしゃべりも楽しそう

 

素人離れしたしゃべりと頭の回転の早さと語彙力とで、破天荒に我が道を行くミナレとは対照的に、瑞穂は驚くほど普通です。

几帳面で面倒見がよくて、そのうえ居候のミナレに飯を作ったり相談に乗ったりもします。

ミナレの活躍も瑞穂のサポートがあってこそ。

なのに内心では自分の事を取柄がないって思ってるフシがあるんですから、人って本当に複雑だよね。

時にイチャついたり二人はとても仲がよいんですが、それを見てると男と女が恋愛するだけの漫画はもう古いのかもしれないなあ、なんて思います。

この作品には元気で魅力的な女性キャラが数多く登場しますが、激しいボケとツッコミの応酬の中で、描かれる恋模様は案外さらりとしています。

恋愛よりもラジオ、いやラジオは主軸にはあるけどラジオ放送以外の奇想天外なエピソードが中心の、人の死なない安心して見てられる漫画ですな。

 

それにしても沙村先生の描く女性は誠に美しいですね。

 

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なんかもうたまりませんな

 

マキエの上目使いとか表情とか匂い立つエロス。

女性キャラの儚げな風情や切ない表情は日本画の美人画を見てるようであります。

それに、まったくもってあり得ないような巨乳じゃないのもいい。

 

うーん、脱線しちゃったけど、トーマスが言っていた30年前、つまり1988年に話は遡ります。

 

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この美女はシセル光明

 

シセル光明は30年前に活躍していた麻藤憧れの女芸人(三国志ネタじゃないよ)で、ミナレの才能を高く買っているのも彼女への強い思い入れからのようでした。

1988年のロンドンでトーマスとシセルは会っていました。

しかもシセル光明ってきれいな男性だったのね。

この時代に既に二人はラジオの終焉を予測していたのですね。

 

バレンタインラジオを目前にして、トーマスのラジオをミナレに聴かせたりと麻藤がミナレのため策を講じる中、瑞穂の身に事件が起こります。

ミナレにインタビューを申し込んで来たラジオ雑誌が、取材の前に瑞穂と会って打ち合わせしたいと言って来たんです。

取材の概要ならメールで十分なのにと甲本やミナレは心配しますが、瑞穂は子供扱いしないでと出かけてしまいます。

ボイジャーで仕事しながら瑞穂を案じていたミナレに、麻藤からバレンタイン・ラジオのリハがあるから仕事がハネたら局に顔を出せとのおっ達しが。

 

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よく聞け・・・人はいずれ死ぬ

 

ちょいちょい名言(迷言?)飛び出すけど、今回1番の名言かもしれない。

 

ところが缶ビールを摂取しながらブースで待っていたのは茅代まどかでして、バレンタインラジオの予行練習と言うか、ディスり合い?まあ二人共キレキレなんで、酒が入った方が逆にいいのかもしれん。

茅代まどかが酒が入ると面白いのは以前も見た光景ですな。

だがそんな二人の元によもやまさかそんな瑞穂から拉致されたという連絡が・・・

ミナレはすぐに救出に向かう!!

 

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私も一緒に行くわ!

狩猟用エアガンみたいです。