不死身の体を持ちどんな姿にもなれどんな物でも作り出す不思議な力を持った存在「フシ」と、彼を観察する者や巡り合った人たちとの出会いと別れの物語。
ノッカーにも愛の概念があったのか??
2016年から週刊少年マガジンで連載している「不滅のあなたへ」は第1部が完結し、13巻から第2部の現世編が始まってるんですが、フシを取り巻く環境は大きく変わりましたね。
これまではいつの時代のどこの国なのか、まあ架空の国っつー事でよかったんだけど、人の生と死をテーマにしたファンタジーな世界観とフシの美しい少年の姿がとても調和していて心惹かれるものがありました。
ところが現世編の舞台はあたかも現代の日本。
最初はなんか現代的なものが合わない気がしてチョット違和感を覚えたんですが、今ではすっかり収まりも良くなった感じです。
人が戦いで死なない平和な世界を夢見たフシでしたが、ようやく平和な世界を見つけたと思ったのも束の間、この社会は自分自身を殺さないと生きていけない息苦しい世界だったんですよ。
これは確かに我々が生きている世界ですわ。
敵もいない誰にも命を奪われない世界なのに、心を病んで自ら死を希求する人がいる。
本来は生きたいと思う事が生き物の本能ですから、人が死にたいなどと考えるのは明らかに本能に逆らった脳が誤作動してる状態です。
現代には現代の苦悩があったというわけです。
そんな死に急ぐ人たちにノッカーは住みついていました。
長い年月を経てノッカーは無差別に命を奪わなくなったかわりに人と共生していく道を選んでまして、駆除したと思い込んでたら実は知らないだけでけっこう蔓延してたんです。ノッカーも進化してるんだね。
しかしながらずっと戦って来たフシの目には、飢えることもなく楽しいことが一杯あるこんな世界でなぜ死にたいなんて思うんだろう、とちっとも理解できませんでした。
自分が蘇らせた仲間たちも同じ思いに違いないとフシは思っていました。
でもみんなそれどころじゃなかったの。
みんないきなり慣れない世界に連れて来られたもんだから、もう生きるのに必死だったのです。
グーグーとハイロは喧嘩で補導されて怪我して帰ってくるわ、カイは無許可で刃物を製造したと逮捕されるわ、マーチとエコは先生から文字や箸の使い方を教わるんですが、(何しろずっと手づかみだったからね、箸は難しいよね)トネリは必死こいて試験勉強を頑張ってましたね。
てっきりみんなも自分と同様に幸せだと思い込んでたら、なんかすごく大変でちっとも幸せそうじゃなかったのです。
そりゃあそうだよね。
彼らがこんな日本みたいな社会に馴染めるはずないですよ。
狭量で人の個性は認めたがらず、みんなと違う事をする人間は仲間はずれにしようとするような社会にさ。
グーグーは思わずタクナハに帰りたいなどとつぶやいてしまいます。
つまづいたっていいじゃないか・・・人間だもの。
まあどれだけフシが頑張ったってですね、人間の悩みや苦しみまでは消す事はできません。
仲間たちはそれぞれ自分の人生をどう生きるか悩んでいて、やがては自分の元から旅立とうとしているのだとフシは知ります。
みんなに置いてきぼれにされる気がしたフシ
それは違うよ
みんな君と生きようとしている
って、ボンが話して聞かせるんですが、きっとフシは今更ながら気づいたんでしょうな。
それは、不死身の自分と違い人間はいつか死ぬという現実です。
だから最後の一回が必ず来るって考えたらもう恐ろしくて耐えられないと、今まで感じたことのない気持ちに襲われてしまいます。
これですよ
皆おれを置いて死なないでって
不死身キャラって多数いますが、「無限の住人」の万次にしても「ポーの一族」のエドガーとアランにしても、いつまでも死なない、永遠に生き続けるってのもつらいものなんです。
周りの人間はどんどん年を取って老いて死んで行くんですから。
だからこの時のフシの気持ちは理解できます。
「たとえば君らが死んじゃったとしても、ここにいてくれればまた生き返らせてあげるよ」なんてつい言っちゃう気持ちもわかるんです。
フシはそんな事を言ってしまった自分を恥じて嫌悪感を持ちます。
そうして、みんなに対して何ができるのかを考えるようになります。
フシというのは、無垢な子供が、自分が今まで出会った人たちの最も尊い部分を濾過して出来上がってるような存在ですから。
そんなわけでフシは中学生になり切り頑張る事にしました。
髪型も変えたりして。
やがて自分でバイトして稼いだ金で、グーグーにタクナハへのチケットをプレゼントしたんです。
フシはスマホを買って、離れてしまったグーグーとやり取りするようになります。
スマホでグーグーと会話するフシ
フシが普通の少年らしくてなんともいい場面です。
一方、学校で孤立していたミズハですが突然転校して姿を消してしまいます。
フシはイズミのパソコンの画像からミズハのためにアルバムを作りました。
これが娘への愛情に溢れたいい写真でした。
ミズハが行方不明になっても自撮りしてるような、何を考えてるのかわからぬ母親に見えましたが、記憶を忘れぬように必死だったのです。
フシはミズハに会いに行く決心をします。
ハンナと青木をはじめオカ研の連中も一緒だぜ。
ダンジョン感
ミズハの祖父宅に行ったらば地下にこんな施設が!中は迷宮だし、どっちへ進めばよいのやら。
そこで青木がおもむろに取り出したのがウィジャボード。
コックリさんみたいに使う
よくこんな物を持って来たね
ウィジャボードは、アルファベットや数字などが書かれたボードと、文字を指し示すためのプランシェットという器具で遊びます。
参加者全員がプランシェットに指を添え、質問すると、プランシェットが動き出して答えを指し示すというね。
あくまで遊びですので、何かに憑依されてるとかではないです。
青木のナイスツールで先に進み、ノッカーと戦い、奥で待っていたのは・・・
ミズハのじっちゃん
まあ彼らはこんな薄暗い地下で暮らしていて、パーティーしようとか言われても腐ったような水の匂いがして、みんなドン引きです。
考えればカハクはちゃんとノッカーを抑えていたんですが、今の守護団は完全にノッカーにコントロールされちゃってますね。
しかしミズハはアルバムを見て泣き出したから、まだ取り込まれてないかもしれん。
でも危ういですねえ
フシの夢はみんなの夢を叶えることで、そのためには世界が平和じゃないといけない。
ミズハは、平和が何かわかったと言います。
もう悪い予感しかしません。
案の定、学校に偽フシあらわる
トナリは目を見ただけでフシではないと気づきました。さすがだぜ。
この後、学校は大変な事になってしまうのです。
ところで今回ちょっと驚いたのは、今にも地下が崩れようという混乱の中で、ミズハの父親が自殺してしまうんですが、それを見た母親が非常に動揺して叫びます。
愛してるのよ!!
ノッカーに愛の概念があるはずはなく、これは人と共生するようになった事で人の感情までも手に入れたという事でしょうか。
やっぱノッカー進化しとる。