CEOと従業員の経済格差が広がるGAFA的巨大企業に、次々とテロを仕掛ける謎の組織「ダーウィンクラブ」をめぐるクライムサスペンス。
クラブに潜入した石井大良(たいら)は、復讐を果たせるのか!?
「ダーウィンクラブ」6巻読みました。
いよいよ、とうとう、ついに完結!!
どうもこの頃「ダーウィンクラブ」とか「ダーウィン事変」とか「ダーウィンなんちゃら」とか紛らわしくって、世はまさにダーウィンブームですかね?ちょっとダーウィン食傷気味じゃないかしら?
あ~、いよいよ最終巻~
新刊が出る度に読むのが楽しかったし、作者の人が一生懸命に描いてる熱量みたいのが伝わって来たし、地味だけど良質な作品でして。
魅力的な主人公に心惹かれたので寂しい限りですが、無駄に連載を引き延ばすよりもこの位の分量がまとまりが良いのかもしれません。
前巻の感想はこちら↓
「ダーウィンクラブ」の異常さが、どんどん加速度的に明らかになった前巻。
とは言え、一枚岩ってわけでもなく、過激なテロを行っていた「アングリービーグル」はクラブの中の一群れでした。
さすがにお前らやり過ぎじゃね!とクラブ内でも白眼視され始めた「アングリービーグル」は、クラブの後ろ盾を失い非合法団体へと転落。
どうする佐藤!?
ま、佐藤は強気なのか気にしてないみたいだけど・・・
大良がかわいい小川は心配するよね。
そんな小川の反対を押し切って、大良は「アングリービーグル」に志願しまして。
しかも佐藤のマンションで大良が見たのは、死んだはずの佐藤の他に、自分の父親を殺したもう1人の佐藤(?)と、佐藤と同じ顔の少年(??)と、同じ顔の女性(???)までいて、ウーム、どういうこっちゃねん?!
これが竜崎教授による「愛し合い助け合う家族・蜂のプロジェクト」ですた
なんか気色悪かったけど、「忘却刑」もやだなーもー。
大良は何食わぬ顔でビーグル犬のターターの散歩に行ったり、憎めないキャラを生かして佐藤の信頼を得ようとします。
するとそこへ武闘派の小宮山が現れ、大良はめっちゃ疑われちゃう。
妙なことしたらムッコロスなどと脅かされる
こいつ脅しじゃなく本気でやるよね
小宮山は表の顔は整形医院をやっていて妻子もおり、家庭では良き夫、良き父なのです。
しかしながらクラブでは専らダークサイドな仕事専門で、何の目的を持っているのか腹が読めません。
「蜂のプロジェクト」と関係あるようには見えないし、なぜに佐藤の側近になってるのか?
単にテロリズムの信奉者なんだろうか?
なんだか底知れぬ薄気味悪さを感じさせます。
「ダーウィンクラブ」の刑務委員会「忘却刑」の使い手・千々木が大良に接近して来ます。
千々木は小宮山と同様な危険人物で、クラブを守るためなら汚れ仕事も厭わず、クラブに不適性な人物と見れば秘かに排除してきました。
小宮山よりも大物感があるけど、拷問とか好きそう。
大良を警察のネズミだと疑う千々木は(もうバレてる)、小川を人質にとり痛めつけて大良の口を割らせようとします。
追い詰められた大良は、必死で抗弁。
まあ!これ本気で言ってるのかしらね
その場しのぎで千々木を騙そうとしてるのか、ちょっと考えちゃうわね
大良の父は佐藤に殺され、それを依頼したのが隣の中華屋の親父で、自分が交換殺人を実行する番になった時に拒否して親父は千々木に「忘却刑」を食らいました。
ぐぬう~ 因縁を感じる展開に千々木もキョトン顔だぜ。
佐藤に父親を殺された。
俺とアンタの目的は同じだ。
アングリービーグルを、佐藤をつぶすことだ。
俺はアンタの役にたてる。
と、こういう時の大良は非常に大胆かつ真剣味を帯びるのですが、千々木は疑り深いからなかなか話に乗りません。
けれど千々木は大良には話していいと思ったのか「蜂のプロジェクト」の詳細を明らかにし始めます。
献身度の高い集団を作るために生み出された彼らは、兄弟姉妹であり、夫婦であり、親子だと言うのです。あかんやつや
そこへ、佐藤たちがマンションを出たが尾行を見失ったと連絡が。
「なんたる失態!」と怒る千々木でしたが、大良のスマホに佐藤から連絡が入ったため、千々木は大良の言うように使ってみることにします。
一方、囚われてた小川は急に解放されて何が何やら。
とにかく大良と熱い抱擁。
ダーウィンクラブは異様な集団に見えるけど、決してそういう人たちばかりじゃないのが悩ましい所です。
たとえば小川は(小川のグループの人も)真に良い人で、大良によくしてくれました。
発達障害っぽい大良の、人として優れた部分を小川は見抜いたし、その後の面倒見も良く、これまで生きづらさを誰とも共有することのなかった大良は胸アツでした。
大良を運転手として雇ってくれた高木もそうだよね。
この人たちは事あるごとに、「お礼なんかいらないから、自分には返さなくていいから、誰か他に困っている人がいたらその人に自分がしてもらったことをしてあげて」と言いましたが、クラブも元々は皆こういう相互扶助の精神で出来ていたんでしょうね。
さて、「アングリービーグル」の次なる標的は阿路輪島(架空)で行われるチューリッヒ会議です。
大良は佐藤の指示で、会議が行われるホテルの従業員として潜入しました。
同時に千々木のクラブ内警察のスパイになったのです。
ハラハラする。
高津は危険すぎるからもう潜入はやめようと言いましたが、誰が何を言っても大良は止まりませんでした。
大良は一見すると能天気で変わり者な面もありますが、実は強い意志と優しさを内に秘めています。
アホな子に見えるけど、もしかして、本当は出来る子なのにアホの振りをしてるのだろうか?と思わせる場面も何度かあり、設定が独特で魅力的に描かれています。
クラブの存在がテロと結びつけられ公にならないように、テロを阻止し佐藤たちを拘束し、刑務委員会で裁判を行えば有罪にできると言う千々木。
一方の高津は、佐藤を有罪に出来るかは我々が集める証拠次第だと言い、なにがなんでも佐藤を有罪にしたい大良には物足りない返答でした。
まあ始めから、クラブに対して高津・松井らの警察チームは人数的にも脆弱ですよね。
国の裁判より忘却刑だろ
「ダーウィンクラブ」の思想は、ダーウィンの進化論と遺伝学を人間に当てはめています。
たくさんの正しい子どもを残せば、いつしか進化が行われ、自然と自分たちは今の人類を淘汰できるはず。
正しい子どもとは上級会員の子供のことで、いわゆる優生思想です。
そのために「ダーウィンクラブ」では生殖と淘汰をコントロールしようとし、重婚や殺人が合法になっていました。
認知症を引き起こす薬を点滴され知力を失う「忘却刑」は、生ぬるいように思えますが殺人よりも周りの人達に動揺を与えました。
優生思想が先鋭化したのが「蜂のプロジェクト」で、人間は女王蜂のように大量の子どもは産めませんから、女性は全員女王になり不妊カーストの役は男性が務めます。
女王蜂と働き蜂が姉妹で同じ遺伝子を共有するように、彼らは全員が血族なのです。
(佐藤は働き蜂ってそこはかとなく悲し)
でもこんな科学者馬鹿が考えたことがうまくいくはずないですよ。
冒頭での世界的なテロから見ると、最後はややドタバタに終わってしまった感じはありますが、浮世離れしてる佐藤ではあれが限界だろうて。(それも作者の狙い?)
最後にこの悪夢はまだ終わってないことが示唆されています。
2人は親子なんでしょうね
果して現実なのか妄想なのかコワイ発想です。
大良がガラパゴスに渡るラストの余韻も素晴らしいです。