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大人の漫画読み

漫画/「菌と鉄」5巻 片山あやか(ネタバレ)

「菌と鉄」は別冊少年マガジン(講談社)にて、2021年から連載中。

人類の脳がキノコに寄生されたディストピアを舞台にした作品。

 

(片山あやか「菌と鉄」5巻 講談社コミックス)

表紙はラミ・バルガ。

(バルガ一族は殺人を好み殺人技術の高い遺伝子を持って生まれて来るため、「アミガサ」ではハンターとして飼われ研究対象にもなっていた)

 

「菌と鉄」第5巻が発売しましたのでそこはかとなく感想をしたためる次第です。

この漫画は世界を支配する政府「アミガサ」に反逆組織「エーテル」が闘いを挑む物語ですが、もうね、キノコめっちゃ強い。世界の食物連鎖の頂点に立ってるのはキノコなんで、キノコめっちゃ強いんです。ひん;;

「アミガサ」本部の「博士」と呼ばれる人物に寄生しているアミガサタケは地球全土に菌糸を伸ばしていまして、居住区の外側は腐海の森的なキノコが繁茂する世界です。

「アミガサ」は絶対的な管理社会で、主人公のダンテが度々はみだし行動で暴力的な罰を受けるのは、文字が読めないために洗脳を免れていたからなんです。

なぜ文字が読めないのか?過去に「アミガサ」に潜入し人口授精で生まれる前の遺伝子を操作したのが成果となって、突出した能力を持つ者が現れ始めたのですが、優秀だけど一部分で劣った面が現出するという事らしい。

さて「菌と鉄」の菌の意味はおわかりでしょうが、鉄の意味は肉体が鉄化するとかいうチョットどうなんだろうという展開でして、設定が面白いSF漫画だと期待したらどうも異能バトルになってしまって残念です。

しかもそういった優秀な力を持つ者には動物のアザがあるっていう、もうなんだかなあ┐(´д`)┌ヤレヤレでして、突然俺は研究所に潜入してアザ持ちを仲間にして戻るから!ワニとシャチを仲間にするからお前はクマね。ってなノリでダンテとラミ・バルガがアミガサ研究所に潜入したのは前巻の話。

いやいきなりどう説得するのだろうか?仲間になるとは限らないのに・・・というあたしの心配も杞憂に終わりタカのアザを持つ新しい仲間が加わりましたが、今回の舞台は旧アフリカ大陸です。

ここにクマのアザを持つ女がいるみたい。

タカのアザを持つクヴァルは、研究対象として極限の環境下で生かされてる「野良」の長でしたが、人間扱いされていないけど厳しい管理も受けてないようで、食い物として出されたカロリーメイトみたいなの量が少なくてビックリというね。



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恐ろしいですなあ管理社会。

アミガサ社会では男性区と女性区に隔絶されていて、女性を見た事も触った事もなかったダンテが初めて女の子と触れ合った1巻の名シーンだった気がしますが。

人間は体外授精で生まれて来ますんで、定期的に精子と卵子を採取されてるんだと、何事もなく話すダンテにクヴァルは「どこかに自分の子どもがいるかもしれないんだぞ」(それな!)と驚き、母や姉がいて男女が共に暮らしてた自分たちとの違いに大いにビビるのでした。

 

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アミガサ第四支部(旧時代のアフリカ大陸)

旧時代の動物たちは姿を消しましたが、生態系は多種多様になっています。

ジャングルの中をどんな環境でも潜伏できるクヴァルを先頭にダンテとラミが続きます。

クヴァルとラミが喧嘩を始めるけど、ダンテが2人を取りなす。

バカだなんだと言われていたダンテは、まそこが魅力でしたが、負荷がかかり過ぎて記憶障害になってしまった「エーテル」のリーダー・グラントのいつの間にやら次期リーダーとして別人のように成長しています。

肩書きが人を成長させると言いますもんね。

そういう意味ではダンテ氏の成長物語でもあるわけですな。

さて、目標のエリア女性区。


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朝5時起床でカロリーメイトみたいな(それしかないんかい?)をモソモソ食って、その後はここでも「怒りの時間」です。

コワイワー

美味しいとか楽しいとかの感情はナッシングです。

そして女性区に共通する重要な仕事は育児でございます。

 

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頭にキノコ植え付けられています。

赤子の脳は菌床で簡単にコントロールされ、みなとてもおとなしい。

1日3回適性検査(兵士や研究者など)が行われ、3才過ぎると各エリアに移送され生涯決められた日々を過ごすのです。

それと引き換えに毎年大人が一定数消えて行きます。

45才過ぎると劣化し生産性よりもコストがかかると廃棄されているのです。アミガサ万歳。

そんな事はダンテたちは知る由もありませぬが、彼らがいる地点から10キロ離れた密林の中から、気をつけろ!何らかのスタンド攻撃を受けているっ!!

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ではなく、カエンタケ。

体内に複数の菌床を宿し菌糸を融合させ環境や状況にあった毒キノコを生やす事ができるアズセナの攻撃です。

この時発生させたカエンタケは食べれば即死(食うヤツいないと思うけど)触れれば皮膚から浸透し体が痙攣3分で死に至るように改良されています。

瀕死のダンテを背負って逃走しながら「鉄を食え!」と再生を促しキノコごと焼こうと火をつけるクヴァル。頼りになりますねー

この戦いも結構面白かったんですが。

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次は粘菌使いですがな。

粘菌はアメーバのように動いたりキノコのような形になって胞子を飛ばしたりする不思議な生き物。

女性区をマジで嫌がるラミが女性区に侵入しクマのアザ持ちの女と接触し、心に閉じ込めていた過去をえぐられたり、今回の戦いも壮絶なんです。
なかなか面白い世界観なのですが、敵がキノコ。脳にキノコを乗っけたり笑ってしまいますが「なぜ人類はそんなに戦おうとするのか?」と問われたり、旧人類のツケとして高い放射能を放ち続ける放射性廃棄物を何万トンも埋めてあるから分解できる菌類を開発してる話や、ダンテやグラントが延命プロジェクトで長生きした旧時代の老人たちに会い、彼らが死を悲しみ悼む姿に人間の尊さを見たりと、考えさせられます。

そしてキノコの陰に何かもっと異様な大きな存在があると期待したい。