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大人の漫画読み

漫画/「バジリスク ~甲賀忍法帖~」原作山田風太郎 漫画せがわまさき 作中最強は誰だ!?

「バジリスク~甲賀忍法帖~」は2003年から2004年に連載された漫画

原作は1958年に発表された山田風太郎の小説「甲賀忍法帖」

(せがわまさき「バジリスク甲賀忍法帖」全5巻)

山田風太郎は戦後日本を代表する流行作家ですが、思うにこの方の小説は、漫画やアニメにうってつけなんですよね。

奇想天外な忍術とか、くノ一のあり得ないようなエロい術とか(エロははずせない!)、壮絶な忍術勝負とか、すげえ面白くて、「甲賀忍法帖」では甲賀と伊賀の忍者が10VS10で戦うわけですが、なんかバトル漫画のようでもあります。

ってか忍術つっても、他人の顔を自分の顔に写し取ってなりすますとか(ルパンかよ!)、壁や地面に溶け込むとか、ナメクジのように体が塩に溶けて小さくなれるとか、ゴム人間とか、蜘蛛人間とか、不死とか( ´艸`)もう化け物ぞろいでして、岸本斉史の「NARUTO」のキャラ造形なんかも影響受けてるんじゃないかしらん。

原作も面白いんですが、このせがわまさき氏の漫画版があたし大好きなんです。

山田風太郎の原作ストーリーはそのまま、壮絶な忍者の戦いも忠実に描いてるんですが、独自のエピソードを書き加える事で忍者の悲哀を浮き彫りにしています。

原作を読んでる人は「えっ、そんなに切ない話だったっけ?」って思うんじゃないかな。

 

 

さて、時代は慶長19年。

駿府の大御所徳川家康から甲賀と伊賀の二つの一族の代表に恐るべき命が下ります。

秀忠の長男竹千代と次男国千代による德川三代将軍を巡る跡目争いを、甲賀と伊賀が戦って決着をつけよというのです。

すなわち忍術勝負をして甲賀が勝てば国千代が、伊賀が勝てば竹千代が将軍になれるというね。いわば代理戦争。でもこの時点でどっちが勝つかわかってるわよね

しかしこの時、甲賀と伊賀には先代服部半蔵とかわした「不戦の約定」があり、甲賀と伊賀は休戦状態にあるんです。

それを解いてまで両者を戦わせようとするんですが、そもそも三代将軍を巡る争いに者関係ないのになんで駆り出されるんと、お思いでしょうがそれは彼らにはどうでもいい事でして、忍者は戦う事しか考えてませんわ。

やっぱ自分の持ってる技や実力を試したい気持ちが強いんだと思う。

あと甲賀と伊賀が心底憎みあってるんで、「不戦の約定」が解かれたと知るや、もう嬉々として戦いへ身を投じていくんですわ。

そしてこの戦いは10VS10のチームバトルで、相手チームのメンバーを亡き者にすると、人別帖という巻物に書かれた名を血で消していくのがカッコよいです。

また、武士とは違うから正々堂々と戦うより何でもありで、騙し騙されの頭脳戦も面白いです。

 

ざっとまあこんな幕開けですが、本編の主人公である甲賀卍谷衆頭領の孫・甲賀弦之介と伊賀鍔隠れ衆頭領の孫娘・朧は恋人同士でありまして、二人はそれぞれの一族をしょって立つように育てられ、甲賀と伊賀が互いに手を取り合う未来を夢見ていました。

しかし弦之介も朧も人別帖に名が乗ってますから、二人は敵同士となり戦わねばなりません。ロミオとジュリエットなんです。悲恋なんです。

 

作中最強は、甲賀最強の「瞳術」(どうじゅつ)使い、甲賀弦之介。

彼を殺そうと視線が合うと、強力な催眠効果で自死や同士討ちをしてしまい自滅してしまうんです。

絶対目を見ないようにしても見ちゃうんだってばー

目が合った人は死ぬ(もしくは石化する)という伝説の毒蛇「バジリスク」。

カッコいいタイトルは弦之介の瞳術から来ています。

 

作中最強の問題児は、純真で弦之介にホの字っつーばかりで戦闘力ゼロで役にも立たない朧ですが、事ここに至っても甲賀と戦いたがらない姿勢を苦々しく思っている伊賀衆も多く、あたしもイラつきましたが、実は見るだけであらゆる忍法を強制的に破る「破幻の瞳」を生まれつき持ってるんです。

(つー事は作中最強は朧なのか?)

ただこれは自分では制御できないんで、やっぱなんかどんくさいよね。

それで朧は「七夜盲(ななよめくら)の秘薬」で自分の目を塞ぎ、弦之介と戦うことを拒否し続け、ひたすら弦之介に殺されたいとそればかり願います。なんか歪んでるんです。

 

しかしもうね、くノ一がすごいんですよ。

皮膚から血を吹き出して血の霧を生み出したり、相手の血を吸い取りミイラにしちゃったり、男に抱かれて感じると息から猛毒が出ちゃうとか、女の武器を自在に操り狙った相手を仕留めるんです。

すごいよ忍者。

ただ彼らも人ですから、忍者としての務めを果たしながらも心の中では、好きな相手の無事を一途に祈ってたり、兄を無邪気に慕う妹がいたりして、けっこうジーンとするんです。

大いに楽しめる戦闘シーンの一方で、どこか歪んでいるような悲痛な忍者たちが、それでも一人の人間として懸命に生きる姿が胸を打ちます。面白い!でも悲しい!

「七夜盲の秘薬」は七日七夜目が閉じて開かないんですが、その目が開く時には既に皆死んでますんで、異様な短期間で一人また一人と死んでいき、息つく暇もない感じですが、最後に残った弦之介と朧は・・・結末は非常に悲しいのですが、クオリティが高いと褒める人が多いですから、興味がある人は是非読んでください。感動的なうえに読みやすいですから。

 

ところでこの漫画の教訓は、次期将軍なんかそんなもん自分らで決めんかい!と断ろう。これな

結局はいいように利用されて終わる忍者の悲しさ(;´д`)トホホ

 

 

 

「甲賀忍法帖」は忍法帖シリーズの第一作です

原作も良いですぞ