いやもう愛とか不倫とか共感できるのは加齢しかないけど面白い
かつて90年代を席巻した伝説の漫画「ハッピーマニア」の続編。
15年後のシゲタカヨコは45才でフクちゃんは51才である。
いやいや誰でも年は取りますよ。
問題は「結婚=ハッピーじゃなかった」ってことでして、第④巻のネタバレかつ感想をそこはかとなく書いとく事にする。
まずはザックリあらすじをば。
自分にぞっこんだったはずのタカハシから、よもやまさかの離婚を突きつけられ別れることになってしまったカヨコ。
➂巻の感想はコチラ↓
結婚というのは向いてる人と向いてない人がいることが顕著になり、今はしたくない人はしなくてもいい時代だ。
カヨコは本当に結婚に向いてなくて、15年もの日々をほぼ専業主婦で無為に過ごしてきたわけだが、ここに来て意外な尾行の才能があることがわかった。っていうミラクルな展開。
なんのスキルもないのに探偵事務所に仮採用されたんだから「あたしもこれからは一生懸命働いて生きるわさ」とか思えば良いのだが、カヨコの場合働くことに価値を見い出したりはしないと思う。
相変わらずの恋愛脳だから、浮気調査の対象だった三島から連絡を受け、イソイソと駅まで迎えに行く。
そもそもカヨコの若い時のセフレだった田嶋が妻の浮気を疑い、その浮気相手が三島だったのだが、三島もカヨコが新婚時代にやりかけた男である。
「チョット何言ってるかわからない」って人は、要するに若い時やりまんだと頓痴気な人間関係を招くって事ナリよー。
行き場のなくなった三島がカヨコの家に転がり込もうとしているのは明白。
困ると思う一方で何か期待してしまう女心。
だがさすがのカヨコも45才の自分が今でも三島の恋愛対象だとは思ってない。
「これはモテじゃない!三島は宿目的!」って、5分ごとに自分に言いきかせるの笑う。
「なんかばばあには金ださせとくかみたいのだったらやだ」とかハッキリ言うのもおかしい。
田嶋の嫁の他にも数多の女遍歴がある女の扱い上手な三島も、カヨコの性格はいまいちよくわからんのだ。
それでも浮かれてビールを買いに出たカヨコの前に細谷が現れ、三島がカヨコの家に居る事も既に突き止められていて、咄嗟に嘘をついて逃がそうとするものの細谷はエブリシングお見通しなのだった。
でも三島は逃げ慣れてるんだろね。
危険を察知して家はもぬけの殻。
細谷に「あんたみたいな男いないと生きてけない人理解できんわ」などとほざかれても、また1人になってしまった淋しさにしんみりするカヨコ。
ところがところが、出て行ったと思った三島は隠れていただけで細谷が引きあげるのを見てまたぞろ戻って来たのだ。
せめてカヨコに仕事か子どもがいたら・・・と思う読み手は多いだろう。
しかし、その両方を持っているフクちゃんとて、決して幸せではないのだ。
フクちゃんの夫の秀樹は愛人の寿子に無断で自宅に一泊して以来、寿子から冷たく当たられるので自宅に帰ってくるようになった。
だからと言ってフクちゃんが手放しで喜べるはずない。
何もなかったような顔してしれっと元の位置に収まろうとしてる秀樹が腹立たしいから、つい意地悪を言い険悪な雰囲気になると秀樹ったら「お前が言うから、帰って来て欲しいのかと思ったんだよ」だって。フクちゃんならずとも腹立つぞ。
そうだフクちゃん!
今は苛立ちを抑え寿子から取り戻す事が優先だ!
だからフクちゃんは「ごめんね」と素直に謝り優しい妻を演出。
単純な秀樹はイチコロだった。
一方、タカハシと詩織はいい気なもんである。
イチャコラするのは勝手にさらせだが、タカハシは大事なプレゼンをほっぽって詩織に会いに行くという愚行で会社での信用を失くしてしまう。
恋は人を愚かにすると言うけど、自分が深刻な立場になってる事も見過ごし、41才の男が恋に浮かれ突っ走る。
昔のカヨコが乗り移ったようなタカハシが思い切り気持ち悪い。
舞い上がるタカハシと比し、タカハシの猛アタックにほだされてしまった詩織が2人の生活に(タカハシ自身に)なんとなく違和感を感じてるのも不穏だ。
いやもう愛とか結婚とか何なのだろうと思ってしまう。
みんな不倫してるやん。
そこにカオス極まるのは、なぜかカヨコが帰宅すると田嶋嫁がいてマトンカレーを作ってる。(しかもゲロまず)
彼女は自分が三島と浮気してるのを棚に上げて、カヨコに田嶋のセフレじゃないのかと詰問してくる。
田嶋嫁のお門違いかつシュールな物言いに、自分がやってた時にはわからなかったけど、恋愛を基準に動いてる人間てこんなにも迷惑なんだとカヨコは痛感する。
ついに田嶋が乗り込んできて「私にとって、夫があなたで浮気相手が三島くんなのがベスト」と田嶋嫁は暴論を言い放つ。
えー?!
浮気大王・田嶋のかつての持論をカヨコも思い出したわけでして。
なんか昔の自分からしっぺ返しにあってるような田嶋である。
田嶋嫁の不可解さには戸惑うが、彼女も夫の浮気に苦しんだ結果こうなったのだろうか。(ま、不倫の末に結婚したんだけどね)
「ハッピーマニア」は若かったカヨコが本命の彼女になりたくて必死なのにいつも軽く扱われ、畢竟やりまんなのに何が悪いのか自分でわかってない所が面白かった。
カヨコのエネルギッシュで単純でスカッとしてる所も楽しかった。(こうなりたいとは思わなかったが)
今は色々わかってるカヨコに成長したんだと感じる。
ってか、45才にもなって成長もないもんだと思うけど、今はなかなか大人にならない時代だ。
若い人が若いのは当然だけど30代でも小娘みたいな人もいるし、40代でも昔に比べると全然若くて子どもっぽい。
これは寿命が延びたおかげで、精神年齢が子どものまま大人になってるんだそうだ。
しかるに心は幼くても体の老いはやって来るわけでして。
もう若くないと自覚しながら、いまだ恋愛脳で男を見てしまう自分に入れるカヨコのツッコミが笑いどころだ。
こんなに面白いのに、若さを失ってなおガチで何もないカヨコに笑えないという人もいるんだけど、あたしはそうは思わない。
もう誰も結婚=ハッピーだなんて思ってないし、若さと引き換えに何か得ていなければと思いすぎるのではないだろうか。
カヨコのように自然体でいいんだって。