4月発売のコミックス⑩巻の今さら感想。購入したまま感想書くのを失念しておりました。
2014年に連載が始まった「波よ聞いてくれ」えーもう⑩巻なのですねー
今回は酔いどれ女が2人して雪の北海道で朋輩を救出しに行く話。
クマも冬眠中の極寒の2月、のはずが、冬眠しないヒグマ現る!
そして鳴り物入りで始まった「バレンタイン・ラジオ」とかいうイベントはどうした?
前巻の➈巻発売から1年3か月ほど経過してますな。
➈巻の感想コチラ↓
今日も今日とて藻岩山ラジオ。
「バレンタイン・ラジオ」とかいうビックイベントらしきものの開催前夜に、ADの瑞穂が宗教団体「波の智慧派」の残党により札幌郊外の山小屋に拉致されたことがわかりまして、ミナレと茅代まどかは救出に向かう。
瑞穂を自分の「嫁」と公言してはばからないミナレが急行するのは当然としても、茅代も「私も一緒に行くわ」と言い出すんでちょっと驚いたミナレ。
深夜でありミナレと茅代は2人で結構な量の缶ビールをきこしめしてるうえに、酔った勢いなのか茅代は狩猟用エアライフルを持ち出してくる物々しさ。
実はコレ人間用かと思ったら、ガチの野生動物から身を守るためだと言うのである。
表紙は夏ですが作中は厳寒の2月でしてね、雪が降ってます。
クマも冬眠中なのにそんな危険な動物いるのかとのミナレの問いに「冬眠しないヒグマもいるのよ」と言い放つ茅代。
ほっかいどーでっかいどーこえええ
ここからはもうヒグマ編だよね。
クマは寝床が見つからなかったり餌の食いだめが十分に出来ないと冬眠しないことがあるそうだ。
そう言えば温暖化のせいで冬眠しないというクマの話も聞いたことがある。
冬場に餌を求め彷徨うクマはデンジャラスである。
茅代は大学時代「ヒグマ研究グループ」に所属。
大型野生動物LOVEな茅代によるマニアックなヒグマの話が続く。
冬の山で無駄に銃を撃つと冬眠中のヒグマを起こしてしまう可能性があるから危険とか、ヒグマは眠りが浅くてすぐ目を覚ますとか・・・なんかちょっと勉強になりますね。
そんな茅代の懸念は「瑞穂が助けを呼ぶために大きな音を出してないか?」だったのですが、よもや行動派の瑞穂は「雪山では助けが来るのを待って動かない」というセオリーを無視して単身山小屋を脱出しまして、雪の山中を移動していたのである。
動かない方がいいとわかっていながらも「バレンタイン・ラジオ」の期間中に誘拐されるなんて、迷惑かけたくないから早く戻らねばという一心だ。
しかも茅代のご懸念のとおり山中でヒグマと遭遇していた。
瑞穂も冬なのにヒグマがいることに驚いちゃう。
さて、山の中でクマを避けるにはどうすべきか。
フツーは「クマ避けの鈴」が有名だが、これはラジオの漫画でごぜえます!ラジオを点ければええねん!
ってなわけで、複数の人間の声がすれば威嚇になると踏んだ瑞穂は持ってたラジオを点けてヒグマと対峙するのだが、たまたまやってた番組が「どうやってクマを倒すか」の話題で盛り上がってまして「クマの肛門に長ネギを刺す」とか、もう延々とラジオがクマの肛門を責める話題で喋り続ける。
常なら笑える内容も瑞穂の目にはヒグマが怒ってるように見えてきて( ̄▽ ̄;)汗。
クマは利口だからわかってるかもしれんよ。
必死でチャンネルを変えるとスピリチュアルな番組になり「自然や動物と共存しよう」などと話すのを聞き「よっしゃ」と頷いてヒグマは立ち去るのだった。
まあ・・・漫画ですから。
一方、瑞穂を誘拐した「波の智慧派」は、と言っても教団はもうないも同然で実行犯は2人しかいないのだが、「バレンタインラジオ」の期間中の藻岩山ラジオの話し手が出演する枠をひとつ譲れと要求してくる。
いわゆる電波ジャックですな。
放送枠を奪い巫女ロティオンが喋る予定、でも記憶を取り戻していたら使えないから、その場合はミナレに台本を渡して強制的に代行させる。という思惑だが。
うまくいきそうに見えない┐(´д`)┌ヤレヤレ
麻藤は大胆にも要求を飲むわけですが、この辺り「バレンタイン・ラジオ」がマニュアル通りでなく無茶苦茶になった方がリスナーからウケるだろうとの読みも入ってますな。
あたしもヒグマの話ばかりしたくないのだが、今回の茅代まどかは良かった。
まどかってば、エレガントなベテランパーソナリティーなのに、実は酒が入ると別人になったりヒグマ研究サークル所属とか素敵だし。
密漁者撲滅を掲げる海外のNPOに年間20万寄付してるとか設定が細かい。
大きく見せるというのは名案ざんす。
人馬一体(ミナレが馬ね)の境地になった、なんと勇敢な女子2人。
そしてライフルを向ける茅代のあまりの怖さは藤田和日郞の「邪眼は月輪に飛ぶ」のごとくでして、ヒグマは恐れを抱いて逃げて行くというね。
この作品は女性キャラがとても生き生きと描かれているのだが、それに比べると男性キャラは精彩に欠けますなー。
麻籐兼嗣でさえミナレを世に出すための明日のジョーにおける丹下段平だし、構成作家の久連木克三なんて影薄いし、甲本みたいに女は守るものだと考えてる男とかウンザリ。
そう考えるとカレーショップ「VOYAGER」の店長・宝田嘉樹はいい味出してると思うな。
宝田店長はミナレをめっちゃ嫌ってて常に容赦ないツッコミを入れてくるのだが、実はなんやかんやで理解のあるいい人かも、と思ったらそうでもなかったのだが、これはこれで素晴らしい存在感なのである。
この作品には男に頼るか弱い女は出てこない。
女たちは皆自由で美しく好きなことを喋り(ミナレは喋りすぎだが)時に強くしたたかで自分の人生を生きる。
まったく男は彼女たちの添え物のようにしか見えないのだけど、案外今の時代を反映してるのかもしれない。
ラジオを題材とした漫画なのにラジオの話から脱線するのもお約束になってきた。
実際ラジオパーソナリティーを目指す話よりミナレの荒唐無稽なエピソードの方が面白い。
テーマから迷走していても、作者が描きたい物を描いてる感じがするのはよいのだが、「波の智慧派」の登場には正直またかよと思った。うーむ
もう死に体の教団推して来るのはなぜ?不思議でしょうがない。
この巻で解決するかと思ったら解決せずに持ち越しとは、少々グダグダし過ぎじゃないかしらね。
「バレンタイン・ラジオ」も何が何やら・・・