「ファミレス行こ。」は、実写映画化もされた「カラオケ行こ!」の続編。
2020年より「月刊コミックビーム」(KADOKAWA)にて不定期連載中。
「カラオケ行こ!」では中3だった岡聡美が上京して大学生になっている。
ご挨拶
皆さま
旧年中はたいへんお世話になりました
2024年も
どうぞよろしくお願い申し上げます
そして此度の地震で被災された皆様には
心よりお見舞い申し上げます
それでは・・・・
あ、その前に「カラオケ行こ!」の感想はコチラです↓
「カラオケ行こ!」では、歌が上手くなりたいヤクザに歌を教える羽目になった中学生男子のすったもんだでしたが、聡美もすっかり成長し今は東京で大学生になっています。
しかし新歓コンパの帰り道、ノリもよくわからず何も食べられなかった聡美は空腹で金が飛んだだけだと疲れ果てていまして、1人でファミレスに入ります。
その蒲田のサイゼでバイトをする事になるわけですが、雑多でどんな人間でも受け入れてくれる寛容さを持つ深夜のファミレスを中心に繰り広げられる人間模様が秀逸です。
ファミレスの先輩店員森田が大の漫画好きで、やたら聡美に布教してくるのが「オトコノクンショウ」と「ねこねこぱにっく」という漫画でしてね。
常連客の怪しい中年男2人が反社の人かと思いきや実は漫画家の北条麗子とアシスタントで、その面相の悪さからてっきり「オトコノクンショウ」を描いてるのかと思ったらネコ漫画の「ねこねこぱにっく」だったのが可愛い(笑)
北条麗子先生(漫画家)
2人がファミレスで懸命に漫画原稿を描いてる姿はやっぱ怪しいのですが、いつもデカンタで赤ワインを頼むコワモテの北条麗子が担当編集の鈴木から電話が入る度にビビってるのが気の毒なくらい。
なにしろこの担当は顔出しはなく電話の声だけなのですが「北条先生は家にいませんよね?」「ファミレスの匂いがします」「お酒ばかり飲み過ぎないように」などと、お前のしてる事はエブリシングお見通しだとばかりに当てて来る。
鈴木にネームを見せる前に背景だけ描き始めてたら「まさかと思いますが先に原稿に入ってるって事はないですよね~!」と電話して来る。もう飲まなきゃやってらんねえよ。
なんか北条麗子の全てを鈴木に操られてる感じが、めっちゃ悲壮感あるけどめっちゃ可笑しいです。
更に読んで行くと、北条麗子が4代目祭林組組長の家出した息子だという事が判明しまして、我らが成田狂児とは旧知の間柄だったわけですがな。
加えて、単なる漫画オタクかと思ってた森田
実はインディーズバンド(それも結構な人気)のヴォーカルだったりと、人間の意外性というか実はこんな人だったという衝撃で笑いを取りに来ます。
普段からテンションが低く感情を表に出さない聡美の驚愕した顔も笑える。
しかし何てったって、この作品の人気キャラはヤクザの成田狂児であり、気になるのは大学生になった聡美との関係性です。
「カラオケ行こ!」はあり得ないシチュエーションで中学生とヤクザに友情が育まれる話で、これはギャップ萌えなだけでBLではないのですが、これから2人に何かが始まるかのようなラストでした。
でも今は時々LINEでやり取りしたり一緒にご飯を食べたりする関係で、そのLINEも狂児は数か月も送って来なかったりする。
何ですかね?聡美くん
まるで愛され慣れた者の奢りを感じさせる態度(横柄とも言う)
あたしは聡美は本当に狂児が好きなんだろうなと思いました。巧いですねー。
狂児は確か「カラオケ行こ!」の時点で39才でしたので、もう四十路ですから聡美の世代ほどはSNSに依存してないでしょうし、(もしかして懲役に行ってたかもしれないし)四代目祭林組若頭補佐だったけど出世したかもしれません。
狂児の描き方が(ファッションや行動様式が)暴対法施行以前のステレオタイプのヤクザみたいでしたが、今作では少し薄まってる気がしました。
狂児は相変わらず大人の男性で、気弱なのにあつかましい所のある聡美を寛大に受け止めてる感じが良いです。
なんでも食べさせてくれるとことか。
スマホのバッテリー切れで時間がわからない聡美に、自分がしてる高級腕時計をポンとくれるとことか。
カッコよくて女なら好きになっちゃう。
しかしながら彼はヤクザですんで。
作者は今回は主に聡美の幸せを考えて描いてゆくとの由。
聡美が一人暮らすアパートでファミレスで稼いだバイト代から五百円貯金をしている理由は、刺青を除去する費用を貯めていたのです。
それは前回でカラオケバトルに負け歌ヘタ王になった狂児が組長から腕に掘られた「聡美」の刺青を消すための金?
それを狂児に贈り受け取ったらもう会わない方がいい。
将来は公務員になりたいから、普通の大人になる準備をしなければならないから。
焼肉屋でもっともらしく聡美からそんな話をされても、笑って「もっとお食べ」と言う狂児。
淡々としてるけど切なくて、なのに聡美の飯が葬儀で用意するみたいなてんこ盛り過ぎて笑ふ。