「ドリフターズ」は少年画報社「ヤングキングアワーズ」にて2009年から連載中の漫画
歴史上の人物がファンタジー世界に転移して戦う異世界トリップもの
ちなみに「ドリフターズ」とは全員集合ではなく、英語で「漂流者、放浪者」などの意味よ(一応)
ああなんかねやっと新刊出たんですよね
5年振りじゃないかしらん。
お久しぶり過ぎて内容を忘れたので、まずは1巻から読み直しましたわ。
作者さま大病なさったようですがお大事になさってくださいませ。
もともと新刊なかなか出ない人だから気にしてません。
というわけで、マモン間原サルサデカダンで行われた「漂流者」と「廃棄物」の決戦。
黒王軍に追い詰められて信長を廃城に退かせ、しんがりで再び捨てがまる豊久はもう瀕死でしてね。(アレはそう何度もやるものではない)
切腹しようと「脇差を貸しちくれ」と土方歳三に言ってみたら「このクソやろう」と土方は急に感情爆発。
そこへ戦闘301空「新選組」隊長菅野直が見参しまして、「新選組っつーのはな、近藤勇が率いる幕末の京を守ってたなんかすごい強くてカッコいい無敵剣士」などとご本人を前に言うわけだよ。
(う、うん。間違いではないけどなんか盛ってる?)もうキョトン顔の土方&新選組隊士の亡霊たち。
菅野のさっぱりわからぬ大暴れで、土方は騒乱と喧騒のかつての新選組を思い出すというね。
「廃棄物(エンズ)」は歴史上の非業の死を遂げた人物というのがテンプレだが、土方が「廃棄物」チームから登場した時は「え?なんで?」って思ったんだよね。
箱館で戦死したけど、この世への憎しみを持って死んだようなイメージなかったから。
「なぜ呼んでも沖田も近藤も来てくれないのか?」と悲嘆に暮れてる歳さんはあまり見たくないが「もっと戦いたかった」という未練ならば納得。
土方の廃棄物としての軌跡には葛藤があったご様子だが、豊久という好敵手との出会いで土方らしい道を踏み出しそうだよね。
黒王軍とは道を違えるということですよね。
これぞ土方歳三!って感じ。
でも土方は豊久と戦いたいから、漂流者軍には合流しなそう。
とはいえ、破天荒男・菅野の豪胆だがボキャブラリーのなさと言ったら、「バカヤロウ」「コノヤロウ」ばかりでタケシさんのヤクザ映画を観てるみたいだ。もしくはずっと滑ってる芸人。
もっとも豊久が「やっと捨てがまって胸を張って死ねる」などと言うと、「こちとら死にたくなくて死んだ奴さんざん見てきたんだぞ」と、命を大事にしない奴はムッコロスって怒るシーンは好き。
戦国時代のシーマンズと昭和の撃墜王では死生観がまた違う。
この2人にとどまらず、生きた時代が違えば人の価値観も違ってくるから、それぞれの価値観がぶつかりながら物語が進んで行くのが妙味だ。
一方、廃城には信長からの「漂流者軍敗退!」の伝書が届く。
どうしよどうしよと慌てるエルフたちに童貞メガネが「まままずね伝書を最後まで読もう!ええとみんなあ、この文からわかる事どんどん言ってみてください、どんどん」
自分だって何もわからないのだからと、謙虚な態度で皆の意見をよく聞き状況を想像して分析し、信長はサルサデカダンから廃城に立てこもるつもりでこっちに向かっていると見当をつける。
そうなると必要なものは何だ?食い物、武器、火薬・・・と意見を出し合ったうえ、廃城と工房都市と各村落をすべて使い優先順位を決めて人員と馬匹を割り振る。
戦争で最も重要なのは兵站だって言うよね。
後方で地味だけど有能な人が、戦局を変える鍵を握ってるのかもしれん。
その頑張りで見直されたのか、エルフの女の人たちから許されるのもご愛敬だ。
弱り目に祟り目と申しますが、廃城へと敗走する信長たちに無情の雨が降り注ぐ。
ようやく今回の目玉キャラ、現れ出でたる義経公。
ここまで義経は廃棄物側にいたが大きな出番はなかった。
黒王にも手を貸さず始終傍観を決め込み「面白い方につく」などと気まぐれ発言の美少年でして、時に与一をからかいに出てきたり腹が読めぬ。
与一と義経は源平の戦いの上司と部下なわけだが、与一は義経を非常に恐れていた。
義経が壇ノ浦で無防備な水手、梶取りを弓矢で射殺し平家の舟を行動不能にしたのは有名な話だが、この時代では非戦闘員扱いの船の操縦者を狙うって当時の人は誰も考えつかなかったのよね。
発想の転換と言うか、奇略とも言われるが、タチ悪いのも事実だ。
本作では与一が殺しまくったみたいに義経は言ってる(お前がやらせたんだろー)
その与一は土下座をして義経に見逃して欲しいと頼む。
天才で人の心を知らず、蹂躙を楽しむ悪魔のような(信長にはきっとわかるはず)義経に描かれているが、こういうタイプことのほか子供っぽかったりして。
「この世界でも同じ事をやるつもりなのか」
「変わったほうが面白い」などと信長と与一に言われ、先様は何を思ったかアッサリ黒王に反旗を翻すことに。
気まぐれだにゃ~
そうして、これまで「木いちごじいちゃん」などと呼ばれ「あのハンニバル将軍だよねー?」と、哀愁のおじいだったハンニバルが切れ味鋭くなってきた。
義経をお気に召し、一緒に行くと言い出すのだ。
凄味~
たとえ廃城まで逃げてそこに籠城しても、ただ籠ってるだけじゃ勝ち目はない。
日ならず水も食料も武器も尽きちゃうのだから。
籠城を戦うには城外に、城を助けるための野戦軍がいてゲリラ戦をやるのだ。
ハンニバルは義経と組んで黒王の背後を目茶苦茶にしてやろうと目論んでる。
この2人はおじいと孫みたいなコンビネーションで面白くなるナリ。
敗走しつつも籠城に向けて多くの動きがあり、不穏な中にも物語に立体感が生まれて来たぞ。
次は廃城の攻防戦が見れるんだろな。
楽しみー
実にこの作品には読む愉しみがある。
その基盤となってるのは作者が歴史にとても詳しいってことなんだね。
歴史ものの場合、話を面白くするためにはオリジナルな脚色をするが、真に面白いと思えるのはこの基盤がちゃんとしてる人だけだ。
キャラクター化した歴史上の人物の、生き生きとした語り口や、心情の掘り下げとか、まことによく考えられてる。
いつも「やられたー」という感じになるのである。