「ここは今から倫理です。」は2016年より「グランドジャンプPREMIUM」→「グランドジャンプむちゃ」で連載中。
高校で倫理を教える高柳先生が、今時の高校生たちのお悩みに独特のスタンスで向かい合う教師物語。
倫理とは何か?
倫理とは「あるべき姿」。
だもんで、人によって沢山の答えが出るのよ。
高柳先生、新しい学校へ転任す!
酷暑でございます。
自分がどんどんアホになってく気がする。
頭が働かんのよー!
まあ十万年も前になるが、学校嫌いだった俺は夏休みが終わりに近づくと「あー学校行きたくねえな~」と憂うつだったのを思い出すよ。
学校は出会いと別れの場だが、④巻でそれまでの生徒が卒業し新たな生徒に入れ替わった。
もうこの方式で行けば、作者がネタ切れさえしなければ長期連載になりそうな予感である。
今月発売の➇巻では、高柳先生は新しい学校へ転任となったのだが、どんな出会いが待っているのか?期待値大ですな。
#37 いつも近くに友達が
最初に登場するのは明るくお喋りな女子生徒でして。
初対面の高柳にも気軽に話しかけ、高柳も何やら微笑して答えればそれだけでもう「先生に気に入られようとしてる」だの「うぜえ」だの思う輩がいるわけだ。
皆が下向いてスマホ見てるご時世だから、彼女を中心とした女子の仲良し4人が大声でお喋りに興じ、時折「ギャハハ」と爆笑が沸き起これば、クラスメイトは白い目で眺める。
おおかた彼女が一番声がでかいのだろう。
リーダー格に見られてるから、違うクラスの子から「あんたら声がうるせーって隣のクラスでも噂になってるよ」「気をつけたら」などというお節介なLINEが送られて来たり、「おまえらうるせーんだよ」と待ち伏せされイチャモンをつけられる始末でして。ひーん。
そもそも、そこまで皆に迷惑をかけてるー?
これはなんか同調圧力が強くて息苦しいぞ。
これでは追いこまれてしまうんでは?と案じるが、「いじめられてもいつも友達がいてくれたから大丈夫」とか言う彼女は、けっこう屈しない。
高柳は「友は第二の自己である」というアリストテレスの言葉を教える。
その意味は、友人とは自分を映し出す鏡である。
空気なんか読まんでいいから友を大切に・・・って事だよね。多分。
#38 完璧ないい生徒
小さい頃から大人の顔色を窺い、いい子ぶってたニキビ眼鏡(男子)は高柳の前でも完璧ないい生徒を演じ、ほめられたくて必死。
同年齢は馬鹿に見えて仕方なく、わざわざ遊びに声をかけてくれた子に「きみぃ、高柳先生のプリント出してないだろ。遊んでばっかいないでやる事やれよ」などと言うやなヤツだったため遠足の班決めでハブられましてね、(まあこの班決めという風習も気に入らんのですが)1人売れ残ってしまい高柳が「誰か入れてあげて」と斡旋するという屈辱で、喋った事もないメンツの班に不本意に入れてもらう結果に。(これは同情するが)
1人行動の方が気が楽だと自分を慰め、その後も高柳に気に入られようと手伝いを買ってでたりなどしてたが、ふと「コイツちっともほめん」と気づくんですわ。
高柳はねー、あんたの魂胆なんてエブリシングお見通しよ。
かくしてニキビ眼鏡の出した結論が「ああいう寂しい大人にはなりたくないな」だった。
何もわかってない。
#39 信じること
「絶対に誰も俺の話なんて聞かない」と思ってる男子生徒。
だから自分は思ってる事は何も話さないと決めてる。
なのに彼女がメンヘラ。
リスカしたり泣いたり「ホントウにあたしのことが好きなの!!?」と逆上したり責めたりカミソリ出したり怒って帰ったりしやがるから翻弄されっ放しだ。
号泣する彼女が寝落ちするまでスマホで話を聞いてやる。めんどくさいなもー
実は彼は宗教二世だった。
「お前の魂は清いのだからお祈りを忘れぬように」と幼い頃から母親に言われ続け、信仰を強制されてるわけではなさそうだが逆らった事もないのだろう。
こういう家庭の常で、貧しいし家が汚い。
だけど彼が「人を救えば自分が救われる」という教えを信じ、ムカついても我慢して耐えて救おうと頑張っていたのを知って、なんだか悲しかったな。
頑張っても嫌われてしまう虚しさに、信仰を思い悩む彼に「疲れたのなら休みましょう」「宗教は本来、人を苦しめるものではない」と高柳は語る。
ところで老婆心ながら、メンヘラ女は救えないから自分が病んでしまう前に早く別れるがよろし。
#40 先生達の事情
煙草は吸うが酒は飲めない高柳が、珍しく先生たちの飲み会に参加。
陰キャの高柳はこういう場は嫌なのだが、時にはつき合いも大事だから。
夜の繁華街で偶然倫理教室の女子生徒と会い家まで送ろうとするが、飲めない酒のせいで体調不良に。
酒が飲めない高柳がかわいい。
#41 滅びるように生きる
その女子生徒は援交していた。
やめようと思う事もあるが、SNSを開くと皆がしているように思える。
行けば1時間でウン万円になる。
だが決して彼女の家庭は貧しくないし母親もちゃんとしている。
ああ学校つまらないと、本当の愛を知る前に自分の体が金になる事を知ってしまった彼女は、高柳を見つめる。
倫理の授業はアウグスティヌスの梨盗みの話だ。
皆がやってるから自分もと流されてると、滅びるように生きてしまうという言葉が刺さる。
#42 魂の平穏
ラストはルッキズムに囚われる女子生徒。
高柳が生徒に出した課題は「あなたの魂の平穏はどんな時ですか?」
自分はブスだと悲観する女子。
鏡を見る度に死にたくなる。
ブスに魂の平穏など訪れないと叫ぶ。
「実は私も知りたいのです。幸せとは何か、魂の平穏とは何か」
「あなたの倍近くも生きてるのに情けないですね」
と平常運転の高柳に
「いいじゃないですか、イケメンなら」と返す。
「なんなのでしょうか、それは」と、まったく会話が噛み合ってなかった笑
せくしー陰キャ高柳先生に大いに魅かれます。
馬鹿で無知で浅はかで何もわかってないのに、自分は一人前だと思い込んでる餓鬼どもを、高栁先生は説教や理詰めでやりこめるのではなく、どう生きたらよいか自分で考えるよう仕向けていく。
まずもう人に教えてやるという上から目線じゃなく、生徒の心に寄り添い一緒に悩み考えようとするスタンス。
人は他者に弱みを見せたがらないものだが、自分が完璧ではない事を素直にさらけ出す。
生きるってほんに難しいよって、何が正しいのかその答えを先生自身も探しているのである。
肝心な所に言及しないのも、あまり踏み込まないのも独特の流れだ。
この作品にはとても説得力のある人生の真実があるような気がしてくる。
先が読めない不確実な時代に生きる生徒たちは、自分の心のありようとか、どう生きるべきかという事をなかなか見つけられずにいる。
読者もまた同じように、生き方を探してるからこそ読まれてるんだと思うな。