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大人の漫画読み

だんドーン 久坂玄瑞が水も滴る美少年なので思わず吹いた第5巻 感想 泰三子

漫画に限らず小説でもドラマでも、歴史物は話を面白くする為に史実にオリジナルの創作を足すわけです。

しかるにやり過ぎれば歴史を知らないと侮られる事もありますので、これはさじ加減が難しい所です。

面白い資料だけ股に掛けるのも浅薄に見えてよくありません。

歴史を知らない人も興味をそそられるように「今で言えば○○!」みたいな現代風なたとえで笑わせたりギャグや下ネタを取っ掛かりにしたりBLっぽさを匂わせてみたり、創意工夫を感じるものの、ちょっと上滑りな気がしましてね、俺いつまでついて行けるかな?と危惧しています。

しかしまあ、歴史へのリスペクトもありつつ既存のイメージに縛られないオリジナリティーに溢れたキャラ設定が魅力なのも確かでして。

下ネタやおふざけがお嫌でなければかなり面白いと思います。

久坂玄瑞が水も滴る美少年なので思わず吹いた「だんドーン」5巻の感想でございます。

 

さて、5巻のカバーイラストになってる中村半次郎。

なんかカッコいいぞ!

今回は川路と半次郎がバディを組んで九州縦断の旅をする話です。

互いの第一印象が、半次郎は川路を「わー根暗そう」(笑)。川路は半次郎を「うわ馬鹿そう」(笑笑)というんですから合うわけありません。

川路は下っ端から出世したイメージですな

中村半次郎って言えば、西郷どんの側で殺気を放ってる印象ですが、この半次郎ちっともギラギラしてないんですけど。むしろ明るくて単純で馬鹿でついでにピュアにも見えちゃって、そりの合わない2人が金塊を詰めた「田の神さぁ」なる石仏(巨大な男根型)を背負うて人吉・熊本・阿蘇を通り下関を目指します。

作者様が西南戦争ゆかりの地を舞台にしたそうです。

 

それにしても昔の人の旅ってすごいよねえ~

移動手段が徒歩だもの。

しかも靴って草鞋だよ!

ワラで編んだ草鞋だよ!

クッション性ないよ!

どうでもよいですね。

 

この金塊は何に使うかと言うと、島津久光が兵を率いて上京する為の薩摩藩士千人分の米代なんです。

なんせ物騒な世相ですから、この金を藩内外の過激派に見つからぬよう下関まで2人で運ぶのがミッションざんす。

半次郎は腕が立つだけでなく、貧乏で学がない自分のハンディを屁とも思わない人間力で、後には明治政府の高官に就くっていうヤンキーのカリスマみたいな人ですから、とても愛嬌があり人を惹きつけます。

「幕末の四大人斬り」に数えられる半次郎ですが、今回登場した肥後の川上彦斎(この方は人斬り抜刀斎のモデルと言われてます)を含め他の3人は非業の死を遂げていますから、なんかこう暗殺者に有りがちな暗さがないですよね。

やがては西南戦争で川路と半次郎は対立するわけですが、今はまだ互いに相容れないと牽制しながらも共に過ごすうちに相手を認めるようになるというね。

ところでなぜかこの旅に同行する羽目になった太郎少年ですが、女の子みたいに描かれてるし?単なるモブではないし?いったいこの子は何なんだろうね?謎。

どうゆう役割?

薩摩の例の美少年好きなのかな・・・

 

そうして今回は「番外長州編・松の下の若人たち」が良かったです。

薩摩藩も個性的ですが長州藩もかなり独特でイケイケで熱いんですが、長州と言ったら吉田松陰先生ですよ。

松陰のどこがすごいかと言えば教育者として傑出してるとこです。

松下村塾からは多くの有為の人材が輩出しましたが、松陰が実際に村塾で教えたのはわずかな期間です。

そのわずかな期間で優れた弟子を育てたことはやっぱ教育ってのは時間をかけりゃいいってもんじゃないんだろね。

 

どうやって吉田松陰という人物が出来上がったんだろうか。

松陰の精神形成で司馬遼太郎の「世に棲む日日」にもありました有名エピソードがここでも取り上げられてました。

幼い松陰が叔父の玉木文之進から学問を教わり、素読中に顔を掻いたと怒られ殴る蹴るの暴行を受けるんです。

文之進が言うには「公」の為の学問をしている時に、顔が痒いから掻くという「私」的な行為をするとは何事か!みたいな言い草だったと思います。

「愚かで悪いのは私です」と語る松陰に危険な心理状態だ!と一刀両断w

言うて「世に棲む日日」を読んだ時は「公」とか「私」とかよくわからんかったけど、確かにこれ危険な心理状態かも。

こんな暴力を受けてもグレずに素直なのが奇跡的。

出来ればもっとイケメンにして欲しかったな。

やがてバチクソ暴走し始めた松陰は野山獄に出たり入ったりするのですが、野山獄を「長州藩が松陰に危険な行動をさせない為のベビーサークルみたいな牢」という表現に笑ふ。

更に「教師の才能がありすぎて牢獄を学びやに変えてしまう」にも笑ふ。

うまいこと言うもんですねー

 

村塾の双璧と謳われたのが高杉晋作と久坂玄瑞ですが、玄瑞が少女マンガみたいな美形で可笑しかったです。

いや実際長身イケメンだったらしいですけど。

松陰が弟子の中で一番期待していたのは久坂玄瑞だったと聞きますが、あまりに若く亡くなったのでどんだけ優秀なのか後世ではわからんのです。

まるで松陰が乗り移ったように「公」と「私」とか言い出して泣きながら松陰に詫びる玄瑞がなんか良かったですね。

ヨカッタ( ´∀` )

松陰が死罪に処せられるまでの数年間、松下村塾で弟子たちを相手に蒔き続けた種は松陰の死後に芽吹き始めます。
松陰の期待と予言通り、彼らは狂い出し師の志を継ぐ純粋な生き様を見せながら死んでいくわけですが、それが「松陰にかけられ続けた呪い」だなんて言い得て妙です。