akのもろもろの話

大人の漫画読み

義満と世阿弥/BL日記③

京都駅からバスで10分弱の「今熊野」バス停で下車したら、南の方角に森のように見える一画が平安時代末期に後白河法皇によって創建された新熊野神社です。 永和元年(1375)この場所で劇的な出来事がありました。 時の将軍足利義満と観阿弥・世阿弥父子の出…

映画/「ベニスに死す」懐かし映画感想

(「ベニスに死す」1971年/ルキノ・ヴィスコンティ監督/130分) 仄暗い夜明け前の海を蒸気船は黒い煙を吐きながら静かに進んでいきます。 マーラーの交響曲第5番第4楽章Adagiettoが厳かに流れる1911年のベニスです。 映画の代名詞のようになったこの名曲は、…

漫画/「これ描いて死ね」③(ネタバレ)感想

「マンガ大賞2023」受賞ということで4月発売の3巻の感想をなんとなく書いときます。 (とよ田みのる「これ描いて死ね」3巻) ゆうてこの絵柄を見ただけで普段なら絶対買わんと思ふね。 舞台は伊豆王島という東京の離島でしてね、主人公の安海相(やすみあ…

漫画/「昭和天皇物語」⑫ 能條純一 感想

1936年(昭和11年)2月26日、日本を揺るがす未曽有のクーデター未遂事件「二・二六事件」が勃発しました。 陸軍の「皇道派」に属する青年将校22人が約1500人の部隊を率いて武力蜂起したのです。 (能條純一「昭和天皇物語」12巻) 二・二六事件の背景にあっ…

漫画/「恋じゃねえから」渡辺ペコ 感想

ある日土屋茜(40才・主婦)は、中学時代の学習塾の講師だった今井先生が彫刻家になっていることを知ります。 彼が発表した「少女像」という作品は、茜の中学時代の親友・川瀬紫(ゆかり)の姿にそっくりに見えました。 26年も前の、紫の姿と苦い記憶が、茜…

オスカー・ワイルド/BL日記②

ご存知のようにイングランドで同性愛が合法化されたのは1967年と割と最近です。 映画「モーリス」では、主人公モーリス(ジェームズ・ウィルビー)と愛し合うクライヴ(ヒュー・グラント)が、学生時代の友人が同性愛者として逮捕されたのを知り愕然とするシ…

漫画/「ダーウィン事変」➄(ネタバレ)感想

好むと好まざるとに関わらず、半分ヒトで半分チンパンジーの「ヒューマンジー」チャーリーは動物の権利を求めるヴィーガンテロリスト集団「動物解放同盟(ALA)」との戦いに巻き込まれてゆくわけです。 アニマルライツ(動物の権利)とは、動物には人間から…

漫画/「ばるぼら」手塚治虫 もう一度読みたい名作漫画

手塚治虫が70年代に描いた「ばるぼら」はインモラルな匂いのする大人の漫画です。 主人公の美倉洋介がバルボラと出会う書き出しからして良いのだ。 都会が何千万という人間を飲み込んで消化し、 垂れ流した排泄物のような女 それがバルボラ 私が彼女に遭った…

ランボーとヴェルレーヌ/BL日記①

日本でも馴染みの深いフランスの象徴派詩人ポール・ヴェルレーヌは、1844年ドイツに隣接したメスの裕福な家庭に生まれ、21才で処女詩集「サテュルニアン詩集」を刊行します。 25才で結婚し長男も生まれますが、ヴェルレーヌは少年時代から自分がホモセクシュ…

漫画/「消えたママ友」野原広子 感想

仲良しのママ友の有紀ちゃんがある日突然いなくなってしまったのです。 子供を同じ保育園に通わせるママ友の4人。 春ちゃん、ヨリちゃん、友ちゃん、有紀ちゃんと呼び合う仲良しグループに思いもかけない事件が勃発。 失踪か?家出か?有紀ちゃんに何があっ…

漫画/「ヘウレーカ」岩明均 感想

今回ご紹介しますのは、岩明均が「ヒストリエ」に先がけて2001年から2002年に描いた歴史漫画「ヘウレーカ」です。 さて「ヘウレーカ」とは、シチリア島シラクサのヒエロン2世から金の王冠の純度を調べるよう命じられたアルキメデスが、風呂に入って湯が溢れ…

漫画/「昭和天皇物語」能條純一 感想

2017年にこの漫画の連載がビックコミックオリジナルで始まった時、正直あまり読む気持ちが起こらなかったものです。 天皇が主人公の漫画って画期的な気もするけど学校の教科書みたいな内容だったり単なる伝記だったらつまらないなと思いました。 しかし能條…

漫画/「ダーウィンクラブ」④ 朱戸アオ (ネタバレ)感想

世界中の超巨大企業にテロを仕掛ける謎の組織「ダーウィンクラブ」。 クラブの人間に取り入り組織への潜入を目指す元警察官・石井大良(たいら)は言われるがまま爆弾を運んでしまう。 クラブに認められた大良の元に1枚のカードが届いた・・・・ (朱戸アオ…

漫画/「シグルイ」原作南條範夫・ 漫画山口貴由 感想

今回取り上げますのはあたしの大好きな漫画「シグルイ」でございます。 「シグルイ」は2003年から2010年に連載されたのですが久し振りに再読したらやっぱ面白いですねえ。 この作品の特徴でもある残酷な描写がかなり好き嫌いが分れるかもしれませんが。 (山…

映画/「仕掛人・藤枝梅安」新作映画感想

もう何度も実写化されておりますが・・・「仕掛人・藤枝梅安」が映画化とな! なぜに今? と思いましたら、なんでも2023年は原作者の池波正太郎生誕百年だそうですよ。 (「仕掛人・藤枝梅安」河毛俊作監督/134分)) 藤枝梅安(豊川悦司)は品川台町に住む…

漫画/「ノイズ」筒井哲也(ネタバレ)感想

のどかな田園が広がる限界集落にてイチジク農園を営む泉圭太のもとに14年前に女子大生ストーカー殺人を犯した元受刑者が現れます。平穏な町に響き始めた不協和音は徐々に拡大していくのです。 (筒井哲也「ノイズ」全3巻) いきなりですが、ぶっちゃけ筒井…

漫画/「黄泉のツガイ」③ (ネタバレ)感想

東の村で生まれた夜と昼を分かつ双子は夜に生まれた兄はユル朝に生まれた妹はアサです。しかしユルがアサだと思っていたのは偽物で私こそ本物とアサを名乗る娘に村を襲われ平穏だった生活は終わりを告げます。左右様を従えツガイ使いとなったユルは下界でデ…

漫画/「10DANCE(テンダンス)」井上佐藤 感想

BL誌から青年誌に移籍した経歴を持つちょっと珍しいタイプの競技ダンス漫画「10DANCE(テンダンス)」です。ほぼ2年振りに新刊の➆巻が発売されたのでなんとなく感想をしたためる次第ですが、考えたらこの作品ももう10年位連載してるはずですが2人が出会って…

漫画/「五色の舟」近藤ようこ 感想

川辺に舫った舟で暮らす見世物一座の5人はお父さんと昭助兄さんと清子さん、そして和郎(かずお)と桜です。お父さんは下駄屋で生まれたという人と牛のあいのこ「くだん」の噂を聞き買い取って仲間に加えようと一座を連れ岩国までやって来ます。 しかし未来…

漫画/「松かげに憩う」③ 天瀬シオリ 感想

松下村塾の当時の松陰は27才くらいの書生であり藩の罪人であり実家の杉家に禁錮中の身で外出の自由もありませんでした。 その松陰がなぜそれほど松下村塾の門下生たちにやがては長州藩にそして社会に影響を与えるようになったのでしょうか?うむむ吉田松陰の…

漫画/「列士満(レジマン)」松本次郎 感想

よくぞここまで戦ったものです。 幕末の動乱期に生まれた幕府歩兵隊はまさに最新の銃で武装した洋式軍隊でしたが、水戸の天狗党やら長州の奇兵隊やらと戦うもまあろくな戦果も挙げぬうちに幕府が瓦解してしまいます。 もはや総大将の徳川慶喜公も上野のお山…

映画/「カストラート」

古い話で恐縮ですが、ポスト24年組のひとりたらさわみちには「バイエルンの天使」という代表シリーズがありますが、竹宮恵子がウイーン少年合唱団の大ファンだったのは有名な話ですから彼女のアシスタントをしていたたらさわが少年合唱団の漫画を描いたの…

漫画/「花伝ツァ」木原敏江 もう一度読みたい名作漫画

1980年に発売された木原敏江の漫画 木原敏江といえば少女漫画誌「LaLa」の黄金期を支えた「摩利と新吾」、これはもう間違いなく不朽の名作ですが、和洋問わずの世界観で他にも素晴らしい作品が数多あるのです。 幻想ロマンといったスタイルの本格時代ものも…

漫画/「イノサン」「イノサンRouge(ルージュ)」坂本眞一 感想

イノサンは井野さんではなく英語のイノセント(無垢)の事で、主人公のシャルル=アンリ・サンソン(実在)はムッシュー・ド・パリ(フランスの死刑執行人の頭領を表す称号)を務めた4代目サンソン家当主です。 「イノサン」が全9巻「イノサンRouge」が全12巻…

漫画/「劇光仮面」山口貴由 感想

大学時代「特美研」という特撮愛好サークルに所属していた男。 かつての仲間の訃報を受け、自分が死んだら自分のスーツを皆の手で裁断してほしいという遺言にメンバーは再会する。 特撮にのめり込むあまり危険で実用性の高いヒーロースーツ「劇光服」を制作…

映画/「ブータン山の教室」チョット前の映画感想

ご挨拶 昨年度はお付き合い賜り 誠にありがとうございました。 遅ればせながら 本年もよろしくお願い申し上げます。 映画/「ブータン山の教室」 パオ・チョニン・ドルジ監督 2021年公開/110分 これは新年にふさわしい心が洗われるようなブータン映画でしてね…

2022年、生きるって大変ね~と思った話

年末ですね。 今年も残すところわずかになりましたね。 自分という人間の2022年を振り返ってみますと、4月から職場が異動になりコミュ障には難度の高い仕事を仰せつかりましてね、合わせて引っ越しもしましたんで、慣れない環境のせいかストレスなのかわか…

漫画/「末期ガンでも元気です 38歳エロ漫画家、大腸ガンになる」ひるなま 感想

2021年に単行本化された「末期ガンでも元気です 38才エロ漫画家、大腸ガンになる」は、末期の大腸ガンを宣告されてからのエピソードを綴った超ポジティブな闘病記。 作者はBLを執筆していた漫画家です。 つい最近YouTubeのおすすめにこの漫画が急に出て来た…

漫画/「ヴラド・ドラクラ」6巻 大窪晶与 (ネタバレ)感想

「吸血鬼ドラキュラ」のモデルで「串刺し公」と恐れられた暴君・ヴラド3世の真実に迫る歴史漫画。 第6巻読みました! (大窪晶与「ヴラド・ドラクラ」6巻) 舞台は15世紀中期のヨーロッパなのです。 ヴラド3世のワラキア公国(現・南ルーマニア)は、南にオ…

漫画/「へうげもの」山田芳裕 感想

「へうげもの」は2005年から2017年まで「モーニング」で連載されました。 主人公の古田織部は戦国から江戸時代にかけて生きた武将でして、千利休の弟子でもあった茶人です。 茶人て言うからシブいお人を想像してると全然違くて、もーねー腹がチギレるほど面…